渡邉医院

ワクチン供給が不透明に。なぜ?

 今日で6月が終わります。1年の半分が終わります。とても早く感じます。
 でも新型コロナウイルスの感染が拡大して約1年半、まだまだ収束は見えてきません。

 ワクチン接種に関しても、混乱をきたしています。ワクチンの供給が不透明になっています。

 64 歳以下の人たちを対象とした新型コロナワクチン接種が本格的に始まろうとしています。でもこの時期に、7月以降のワクチン供給が追いつかず、不足するという報道がなされています。 これまで、京都府や京都市をはじめ各市町村では、当初はワクチンの供給量が少ない中、京都府医師会や各地区医師会の先生方を中心に、供給量の少ないワクチンを無駄にせず、有効に接種して、人々の命や健康、そして暮らしを守ろうとワクチン接種体制を作り上げ、難局を乗り越えてきました。なかなか通常の診療の枠ではワクチン接種ができないため、診療が始まる前の早朝や午前の診療が終わった、本来なら休憩時間を使い、また休日を返上して、本当に地域の先生方は生命をかけてたたかってこられています。また、国からの職域接種の要請に応え、企業、大学なども職員やその家族、あるいは学生を守りたいという思いでワクチン接種に向け、模索しながらそして悩みながら、接種体制を計画し、体制を整えつつありました。

 6月 30日時点で京都府内においても供給量減の影響が出始めています。京都市では、64 歳以下の「かかりつけ医」がいない方を対象に地域の医療機関で接種が受けやすい ようにと、京都府医師会が 28 日から運用を開始した LINE 活用の予約新システムが、 開始後数時間で受付を停止しました。国からのワクチン供給量が見通せず、京都市が 医療機関への配布ワクチンを制限したためです。個別接種を行っている医療機関では、 2回目接種が本当に行えるのかという不安が広がっています。そのため、新規のワクチン接種の予約受付を躊躇しなければならない状況になっています。

 地域の住民に向けての集団接種は8月以降も引き続き開催される予定ですが、これもワクチンの供給量によっては規模の縮小や時間の短縮を考えなければならい状況です。そのような流動的ななか、集団接種に出務して下さる医師や看護師さんを募集してシフトを組んでいかなければなりません。

 職域接種の関連では、ある大学で予定されていた職域接種 について、すでに申請したものの厚生労働省より職域接種の一時保留の通知があったこと。また別の大学では、7月1日から接種開始で準備を進めていたものの、厚生労働省から7月上旬のワクチン供給が難しいと連絡があったことなどが両大学のホームページで報告されています。また、別の大学関係者からは、「そもそも職域接種は 政府からの要請であったはずで、授業や試験などの本来業務と調整しながら準備を進 めてきた。開始予定日を示しているということは人員確保など手配がすんでいるとい うこと。そのタイミングでワクチンが供給されないというのはどういうことか」という憤りの声もでています。

 なぜこのような状況になってしまったのか?国はワクチンを「打って、打って、打ちまくれ」と旗をふり、行き当たりばったりのワクチン政策をしていたようにしか見えません。ファイザーのワクチンもモデルナのワクチンも2回接種が必要です。このことはわかっているはずです。2回目分のワクチンも滞りなく供給できる体制を取りながら、計画をもってワクチン接種は進めなければなりません。ただただ「打ちまくれ」ばいいのではありません。

 このことは、オリンピックのボランティアの方たちのワクチン接種に関しても同様です。

 オリンピックが開催される時期は以前から決まっていたはずです。開催されるか中止かのどちらか。それでも開催日や開催期間は以前からわかっていました。開催されなかったとしても、開催することを想定して、ボランティアやオリンピックに関係する人たちへのワクチン接種は前もって、すでに今の時期には完了していなければ、オリンピック期間前に抗体はできません。ボランティアの方々は、何備えもなく、無防備に新型コロナウイルス感染の可能性のある中に送り込まれてしまいます。オリンピック担当大臣の言っていることは理解不能です。本当に新型コロナウイルスのこと、ワクチンのことがわかって国民に向けて喋っているのか不安です。「安心、安全なオリンピック」を謳っていたのなら、なぜ、このような基本的な、しかも一番大切なことを置き去りにしてしまったのでしょうか?

 新型コロナウイルス感染拡大が始まり、約1年半が過ぎます。今からでもいいです。これまでの経験を生かして、後手後手の対策にならないように、国には頑張ってもらわなければなりません。