今日は、昼頃から雨が降り出しました。来週からいよいよ梅雨入りかなあという天気予報です。医療従事者のワクチン接種、そして高齢者のワクチン接種。なかなか進まない状況にあります。ワクチン接種を希望する人たちに早く接種できるようにしたいものですが、ワクチンの供給量がまだまだ安定していないという状況。また医療が逼迫している中の接種する医師の数の問題。今後様々な問題が待ち受けていると思いますが、みんなでこの困難を乗り切っていかなければならないと思います。
さて、今日は言葉の定義の難しさを少しお話したいと思います。
医療に関しても言葉の定義は大切です。
「肛門」とは、肛門は正確にはどこまでを際しているのかと調べても、「肛門は消化管の最後に位置する開口部」とか「消化管の出口のこと」、「消化管の下端で皮膚に移行するところ」とか、「消化器の外口」などと説明しています。でも、専門書をみても特に厳格な定義、範疇はなく、正確に決めている言葉はないようです。なかなか難しいです。「肛門」一つでもわかっているようでわかっていないようなところがあります。
時々患者さんから「私は脱肛ですか?」と聞かれることがあります。医師の中にも「あなたは脱肛ですね。」ということがあります。この「脱肛」も難しいです。
排便時にどのようにして便が出るかですが、肛門上皮は外に出るように便が出ます。ただ肛門が開いて広がって便が出るわけではなく、肛門の内側の肛門上皮が外に出るように便は出ます。この排便時に肛門上皮が外に出るようになることを「脱肛」といいます。
ですから人間は具合よく脱肛することで具合よく便が出ます。ただただ肛門が広がるだけでは具合よくスッキリ便が出ません。ですから内痔核の手術をした後に、少し便が出にくくなったり、便が細くなるのはこのためです。
どうしても内痔核を手術した後は肛門上皮に傷ができます。この傷が治ってくるまでやはり肛門の動きに関しては正常ではありません。排便時にもやはり具合よく脱肛することなく便が出ます。言ってみればただただ肛門が広がってだけの排便のようになります。肛門上皮の部分の傷が治り、肛門上皮が排便時に肛門の外に出るように、具合よく「脱肛」するようになると気持ちよくスッキリ便が出るようになります。
では何をもって患者さんは「脱肛」といっているのかです。
おそらく内痔核が排便時に肛門の外に出てしまった状態を「脱肛」と言っていると思います。
内痔核の具合が悪くなると、排便時に内痔核が肛門の外に出てくるようになります。そして外に出た内痔核は自然に肛門内に戻ることなく出たままになり、指で押し込まなければ戻らない状態になります。このような内痔核を第Ⅲ度の内痔核といいます。そして排便時に内痔核が肛門の外に出ることを「脱出」と言います。
そうすると患者さんが「脱肛」と言っているのはこうだと思います。
「排便時に肛門は脱肛しながら便が出ます。その時に第Ⅲ度の内痔核の場合、排便時に内痔核が脱出します。内痔核が脱出したままになっているので、肛門は脱肛したままになる。」
この状態を「脱肛」と言っているのだと思います。
やはり言葉の定義は難しいです。でもしっかり定義しなければそれぞれのことをちゃんと比較することができません。科学的に比較検討する場合は、しっかりとした定義の下で、行わなければ何の意味もなくなってしまいます。
「定義」。とても大事ですね。