時々、患者さんから「お酒を飲んだら痔になりますか?とか、「辛いものや刺激物は食べてはだめですか?」と聞かれることがあります。
結論は「そんなことは有りません。」です。美味しく楽しくお酒を飲むことはいいともいます。また、押しく食事をすることもとても大切なことだと思います。
アルコール類も、飲みすぎずに楽しく美味しく飲むことで、血流が良くなります。またストレスを発散することもできます。こういう意味からすると、アルコールは血流を良くしてくれるので、内痔核や裂肛などの肛門の病気には良いということになります。ですからアルコール類が直接痔の原因になるわけではありません。ではなぜよくアルコールは良くないと言われるかです。
これには二つあります。
アルコールの飲みすぎで下痢
一つ目は、アルコールを沢山摂ると、下痢が多くなるということです。
良くお酒を飲みすぎた後に下痢をすると言う方が多くいます。その理由は、アルコールを沢山摂ると、水分やミネラルの吸収が悪くなります。そうすると腸の中に行く水分の量が増えていきます。水分の量が多くなると下痢をします。便に行く水分が70%でコロコロの便になり、90%で水様の下痢です。便意いく水分量、腸の中の水分量が多いと下痢になります。
また、アルコールの摂取が多いと、糖分や脂肪分の分解や吸収も弱くなってしまいます。このことも下痢になる原因となります。飲み会の時など、お酒のつまみに、唐揚げ類などの脂っこいものが多くなってしまうことも有ります。アルコールを飲むときのつまみ類も少し工夫するといいのかもしれません。
このようにアルコールを沢山摂取すると下痢になり、そのことが肛門に傷がつく裂肛の原因になったり、もともとある内痔核の状態が悪くなる原因になります。
二つ目は、アルコールを摂取することで、動脈の血流は良くなりますが、反対に静脈の流れは悪くなってしまいます。
内痔核の鬱血が強くなる
アルコールを沢山摂ると血管が広がっていきます。そして血液の量が増えます。内痔核は静脈の流れが悪くなった静脈瘤です。静脈瘤としての内痔核に流れ込む血液の量は増えるのに対して、静脈瘤としての内痔核から心臓の方に帰っていく血液の量は変わりません。そうすると内痔核に行く血液の量が増え鬱血が強くなってしまいます。そのことでもともとあった内痔核の状態が悪くなってしまいます。
このようにもともとあった内痔核が、アルコールを沢山摂りすぎることで悪化してしまうことは有ります。
ただいずれの場合も直接アルコールが内痔核を発症させるわけではありません。もともとある内痔核を悪化させる可能性があるということで。
時々飲みすぎてしまうことも有ると思います。今日は飲みたいといった気分になることも有ると思います。それはそれで仕方がないと思います。できれば楽しく美味しくアルコールを飲むようにするのがいいなあと思います。また肝臓のことも考え休肝日を作るといいと思います。決してお酒を飲んではダメというわけではありません。
刺激物はどうなの?
さて辛いものなどの刺激物はどうかです。
時々患者さんが「お刺身にワサビを付けて食べたいんだけど、お尻に悪いと思って付けていません。」とか、「おそばに七味をかけて食べたいんだけどやめている。」と言う方がいます。このこともあまり気にしなくていいです。刺激物を摂りすぎるといけないというだけで、美味しく楽しく、食べたいものを食べたいように食べて下さい。そのことが大切だと思います。
さて最初のワサビですが、ワサビは100%消化され、便と一緒に排出されることは有りません。ですからワサビは特に肛門を刺激したりすることは有りません。
唐辛子や胡椒などの香辛料は消化されずに便となって出てきます。そのため、肛門を通過するときに「辛い」といった刺激になることがあります。辛いものを食べるときに唇がピリピリするのと似ています。その刺激が頻回になると肛門に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、刺激物をとると下痢などの便の具合が悪くなることがあります。例えば辛いものを食べたら下痢するなど。この便の具合が悪くなることが内痔核や裂肛などを悪化させます。
また、肛門に裂肛などの病気があると、刺激によって痛みがいつもより強くなる可能性はあります。でも、元々ある病気の症状が強くなったり、状態を悪化させることは有っても、直接刺激物が内痔核や裂肛の原因になるわけではありません。
このように沢山アルコールや刺激物を摂取することは、元々ある内痔核や裂肛などの肛門の病気を悪化させる可能性はありますが、直接原因にはなりません。
楽しく美味しくお酒を飲んで、ワサビや香辛料を適度に使い、美味しく楽しく食事をする。そのことは、日々のストレスをとってくれるとともにお尻の具合も良くなると思います。
食べたいもの、飲みたいものを押しく楽しく摂って下さいね!