2021年、仕事はじめから1週間が経とうとしています。
年明けから新型コロナウイルスの感染拡大が進み、東京都を始め、1都3県に対して緊急事態宣言が出ました。京都も大阪、兵庫と一緒に緊急事態宣言発出の要請を国に対して出しました。連休明けにも宣言が出るのではないかと思います。
これまでの経験を生かして、各医療機関も感染対策にはしっかりと力を入れて取り組んでいます。体調が悪い時や、持病を持っている患者さんは、緊急事態宣言下でもしっかり医療機関を受診して下さいね。しっかり病気を治したり、定期の受診で健康を維持することも、新型コロナウイルス感染に対しての大事な対策の一つだと思います。
さて、2020年、1年が終わりました。去年1年間の手術統計と手術の傾向をお話したいと思います。
手術総件数
去年は、内痔核など基本的な肛門疾患に対しての手術件数は748件でした。男性は389件(52.0%)、女性は359件(48.0%)と男女比はあまりありませんでした。この傾向は例年通りです。
疾患別手術件数と男女差
疾患別の手術件数を男女でみてみると、
男性では、内痔核174件(44.7%)、痔瘻74件(19.0%)、裂肛24件(6.2%)、血栓性外痔核7件(1.8%)、肛門周囲膿瘍96件(24.7%)、皮垂(スキンタグ)13件(3.3%)、直腸脱1件(0.3%)でした。
女性は、内痔核149件(41.5%)、痔瘻11件(3.1%)、裂肛39件(10.9%)、血栓性外痔核15件(4.1%)、肛門周囲膿瘍19件(5.3%)、皮垂(スキンタグ)110件(30.6%)、直腸脱16件(4.5%)でした。
内痔核は男女ともほぼ同じ割合でした。痔瘻と肛門周囲膿瘍はやはり男性に多く、男性が痔瘻74件(19.0%)に対して女性は11件(3.1% )肛門周囲膿瘍も男性96件(24.7%)に対して女性19件(5.3%)でした。
裂肛に関しては、男性24件(6.2%)、女性39件(10.9%)で女性にやや多い傾向がありました。
男女差に大きな違いが出たのが皮垂(スキンタグ)です。男性が13件(10.6%)に対して女性が110件(30.6%)と女性に多い傾向があります。
また直腸脱の手術そのものが少ないのですが、男性では1件(0.3%)に対して女性は16件(4.5%)でした。やはり直腸脱は高齢者の女性に多くみられます。
血栓性外痔核に対しては、基本的にほとんどが保存的に治療しています。手術になった患者さんは血栓が大きかったり、痛みが強い患者さんに対して血栓摘出術を行っています。男性は7件(1.8%)、女性が15件(4.1%)でやや女性に多くみられました。妊娠中に血栓ができて痛みが強い患者さんに対して血栓摘出術を行うことも数件ありました。
次に、疾患別にみてみたいと思います。
内痔核
内痔核に対しての手術は痔核根治術、ジオンによる四段階注射法による痔核硬化療法(ALTA療法)、輪ゴム結紮法があります。
男性では、総数174件中、痔核根治術49件(28.1%)、ALTA療法111件(63.8%)、輪ゴム結紮法(14件(8.1%)であるのに対して女性では、総数149件中、痔核根治術100件(67.1%)、ALTA療法27件(18.1%)輪ゴム結紮法22件(14.8%)という結果でした。
この傾向も例年通りで、痔核根治術は女性に多く、ALTA療法は男性に多い傾向にあります。また輪ゴム結紮法も女性に多い傾向にあります。これはやはり男性と女性の内痔核の性状の違いにあります。男性では静脈瘤型の内痔核が多く、ALTA療法の適応になる内痔核が多く、女性の場合は皮垂(スキンタグ)を伴った内痔核や肛門上皮部分の主張が多い内痔核、そして輪ゴム結紮が多いのは粘膜脱型の内痔核が多い傾向があるためだと思います。
痔瘻
痔瘻に関しては、男性75件(87.1%)、女性11件(12.9%)と男性に多く認めました。
裂肛・皮垂(スキンタグ)・直腸脱
裂肛は男性が24件(38.1%)に対して女性39件(61.9%)、皮垂(スキンタグ)は男性13件(10.6%)に対して女性110件(89.4%)と圧倒的に女性に多かったです。また直腸脱は手術件数そのものが少ないですが、男性1件(5.9%)に対して、女性16件(94.1%)と女性に多く、高齢者の女性に多かったです。このように裂肛、皮垂、直腸脱は女性に多かったです。
2020年も手術の傾向は例年通りでしたが、皮垂の切除件数が増えてきている傾向があります。やはり、肛門に何かできていることが、痛みや出血が無くても気になるのでしょう。
2020年の手術統計と傾向についてお話しました。何かお役にたてばと思います。