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2020.12.19

排便時以外に肛門がズキンと痛む!

 最近、「排便時ではない時にも肛門がズキンと痛くなる。」という症状で受診された患者さんがいました。

 肛門の痛みはとても難しいです。肛門の病気以外でも肛門が痛くなることがあります。
 例えば、腰の具合が悪い方は、特に座っているときに肛門が痛くなります。これは肛門の神経は腰からくるからです。腰の具合が悪いと足が痛くなるのと同じで、腰の具合が悪いことで肛門が痛くなることがあります。特に座っているときに痛みが出るのは、立っている時よりも、座っているときの方が腰に負担が来るからです。こういった場合は、腰の具合を良くすることも大切です。また、神経による痛みなどもあります。
 このように肛門の病気以外で肛門に痛みの出る場合は、整形外科の医師に診てもらったり、場合によってはペインクリニックといって、痛みをとる診療科を受診する必要があることもあります。でも、まずは肛門の病気が無いかを診察して、肛門の病気があればまずそれを治していく必要があります。
 肛門の病気をしっかり治しても、痛みが持続する場合など、腰の具合はどうか、神経の痛みではないかと考えていかなければなりません。
 また、肛門の痛みに関して調べている先生によれば、精神的なストレスなどでも肛門の痛みが出ることもあるそうです
 肛門の病気が無く、肛門の痛みを訴える人の中には、ストレスチェックをするとストレスを多く抱えている患者さんがいるそうです。こういったストレスを持ったうえで、さらに肛門が痛いと、やはり悪循環に陥ってしまいます。
 その先生によると、いろんな悩みや、不満を聞いてあげることでも肛門の痛みが軽減するとのことです。じっくり患者さんの話を聞いてあげることはとても大切なことなんだと思いますが、なかなか日常の診療の中、なかなか十分な時間をとって患者さんの話を聞くことは少し難しいです。でもできるだけ聞いてあげるように努力する必要はあります。

 さて話を最初に戻しますね。

 「排便時ではない時にも肛門がズキンと痛くなる。」と訴える患者さんに、それまでの肛門の具合を聞いてみました。これまで排便時の痛みはなかったか?排便時に出血したことはなかったか?を聞いてみました。そうすると、患者さんは、これまで出血することがあったこと。そして出血した時は痛みが伴っていたことを話してくれました。

 おそらく裂肛(切れ痔)だったと思います。便の状態で排便時に痛みがあって、出血するのはやはり裂肛が一番考えられます。そして裂肛は、痛みによって内肛門括約筋の緊張が強くなっていきます。すなわち肛門の締まりが強くなっていくということです。肛門の緊張が強くなると、肛門に傷がついていなくても、肛門が締まるということそのものが痛みの原因になります。

 肛門の手術をする際に、渡邉医院では局所麻酔で手術をします。局所麻酔なので、約1時間すると麻酔は切れてきます。この時に傷の痛みだけでなく、麻酔が切れて肛門が締まってくることも痛みの原因になります。ですから肛門の手術の場合、局所麻酔が完全に切れたほうが痛みは楽になります。これも肛門痛みが、肛門の締まり、緊張に関係することを意味します。

 もう一つ、今この寒い時期に洗浄便座で洗浄する際に、温水で洗うと肛門は痛くなりません。でも水で洗うと肛門は凄く痛くなります。これは、冷たい水が肛門に当たることで、肛門が締まる、括約筋の緊張が強くなり、そしてそのことでさらに肛門の血流が悪くなることで痛みが出ます。

 このように肛門の痛みは肛門に何の病気が無くてもしまりが強い、強く締まることでも出ることがあります。

 さて、今回の患者さんを診察してみると、やはり肛門の締まり、緊張が強かったです。これまで繰り返していた裂肛によって肛門の緊張が強くなったのだと考えます。また話を聞くと、「長時間、車を運転していた時にも痛みが出た」ということでした。長時間の運転によって鬱血した肛門を解消しようと肛門が締まり、括約筋の緊張が強いため、強く肛門が締まること、」そしてそのことで血流が悪くなることで痛みが出たのだと考えます。

 では治療ですが、患者さんに痛みの出る理由をお話します。肛門が痛くなる原因がわかることで、患者さんはとても安心されます。肛門がとても痛かったのに医療機関を受診して、「肛門に以上は無い。」と言われると、「どうして!」と思いが強くなります。原因がわかることだけでも良くなっていくと思います。
 患者さんに肛門が痛くなる理由をお話した後、治療法です。要は肛門の緊張をとればいいということです。まずは軟膏を肛門の表面い塗ってもらいます。
 表面を塗ると、軟膏なので滑りが良くなります。そうしたうえで、少し指を肛門雄中に入れてもらいます。人差し指の第一関節ぐらいでいいです。そうすると、肛門の緊張が取れます。言ってみれば柔軟体操に似ています。潤滑油を付けて緊張をとるといった感じです。これを12回、朝晩してもらいます。
 また温めてあげると、肛門の緊張も取れ、血流もよくなります。ゆっくり入浴して肛門を温めてあげるのも有効です。また寒い時期、腰にホカロンのような携帯カイロなどを当てて温めてあげるのもいいと思います。くれぐれも直接当てないで下さいね。火傷してしまいます。

 このようにしまりが強くなった肛門の緊張をとってあげると、痛みは良くなっていきます。

 肛門の痛みが出るときは、試してみて下さい。

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