渡邉医院

私が継承するもの。

 最近、こんな質問を受けました。「先生で渡邉医院は3代目ですが、先代、初代から受け継いだものはなんですか?」と。

 渡邉医院では、今でも、初代の祖父の時代から使っていたものが現役で働いています。以前もお話したことがある、カルテ台や器械棚です。また母方の祖父が長年使っていた机も今でも診察室で使っています。

そして渡邉医院で最も古いものが、「肛門科」の看板です。

祖父は京都で開業する前に、大阪で肛門科で修行をしていました。そしていよいよ京都で開業する際に、修行をしていた診療所の先生に、のれん分けのような感じで頂いたのが今も渡邉医院の玄関前に掲げてある看板です。渡邉医院のこれまでの90年の歴史を見守り続けてきた看板です。こういった看板を背負い、家具に囲まれていることで、渡邉医院の歴史を感じることが出来ます。そして、私自身の気持ちを引き締めることが出来ます。そういった現在まで引き継いできた歴史はこれからも守っていきたいと思います。

ただ、祖父や父から引き継いだものはこういった目に見えるものだけではありません。そして、これからも受け継いでいかなければならないと思うのは、祖父、父が築いてきた医療、そして渡邉医院がこれまで築いてきた患者の信頼感です。そして私が引き継ぐまでに積み上げられてきた医療の技術をさらに発展進歩させること、そしてさらに患者さんが安心して診療を受けることが出来る医療を提供していくことです。祖父、そして父が築いてきた医療のレベル、そこから始める私は、今以上のレベルにしていかなければ、さぼっている、勉強していないということになります。さらなる進化をしていかなければと思っています。また、父が私に伝えた言葉も引き継いでいきたいと思います。その言葉にはこのようなものがあります。「目の前にいる一人一人の患者さんをしっかり治していくことが大切だ。そのことの積み重ねで多くの患者さんを治し、救うことが出来る。」、「専門に特化し、追及していくということは、幅広い知識が必要だ。深く掘るには、幅広い入り口が必要だ。」など父が私に伝えた言葉。形あるものではありませんが、こういったこれまで培われてきた渡邉医院の理念、信念をしっかり受け継いでいかなければならないと思います。形あるものを守り伝える、そして形ないものを守り伝える。いずれも大切なことだと思います。