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2020.09.20

妊娠中に血栓性外痔核ができやすくなる理由

 9月も今週になってようやく涼しくなって、秋の気配がしてきました。空に浮かぶ雲も秋の雲。これから過ごしやすいいい気候になります。本来なら、秋の運動会や、行楽のシーズン。残念ながら、今年は新型コロナウイルスの感染拡大で、いつもとは違う秋の夜長の過ごし方を考えて、少しでも楽しく、これまでのストレスを解消できればいいなあと思います。

 ストレスと言えば、ストレスがかかると、血小板がくっ付き易くなって、血栓ができやすくなります。そして肛門科的には、血栓性外痔核や内痔核に血栓が詰まって痛くなる嵌頓痔核など、血栓による痛いお尻の病気があります。

 今週に入って、何人かの妊婦さんがこの血栓性外痔核で受診されました。

 血栓性外痔核は基本的には、何もしなくても腫れが引いて痛みがとれ、血栓は溶けて吸収していきます。したがって、手術をして血栓を取らなくても治っていきます。ですから、血栓性外痔核の治療は血栓が詰まって腫れてしまった、その腫れによる痛みをどうとるかが治療になります。
 通常の場合は、消炎鎮痛剤の座薬を入れると、腫れが引き痛みがとれ、楽になります。そして血栓は自然に溶けていきます。ただ妊婦さんの場合は、この消炎鎮痛剤の座薬がお腹の中の赤ちゃんに悪影響を及ぼすことがあるので使うとしても注意が必要になります。ですから、妊婦さんにも使うことが出来るカロナールという痛み止めを使ったり、後は軟膏を使って治していきます。また入浴もとてもよく、温めてあげることで、腫れが引いて痛みは楽になっていきます。
 でも、痛みが強い場合は局所麻酔をして血栓を取り除く手術も妊娠中でも可能です。痛みが強いのを我慢しているのも、お腹の中の赤ちゃんに悪影響を与えるのではないかと思います。痛みが強い場合は手術をして血栓を取り除くと、スッと痛みは楽になります。また血栓を取るだけでしたら入院にもなりません。

 さて、ではどうして妊娠すると血栓ができやすくなるかを調べてみました。この要因には多くく四つあります。

1.血が止まりやすくなる

 一つ目は出産に備えて血が止まりやすくなることです。

 出産時に約500ml程度の出血があるそうです。この出血からお母さんを守るために、妊娠の好機になると血が止まりやすくなるように、血液の凝固機能が高まっていきます。凝固機能が高まるということは血栓ができやすくなるということです。このように出血からお母さんを守るための体の機能が血栓をできやすくします。

2.静脈の圧迫

 二つ目はお腹が大きくなることでの静脈の圧迫です。

 妊娠してお腹の赤ちゃんが大きくなっていくと、お腹の中の静脈が圧迫され、そのことによって血液の流れが悪くなります。妊娠中、あおむけに寝ると苦しくなって、あおむけに寝れなくなる一つの理由もここにあります。肛門の血液は内痔核や外痔核が出来る静脈叢から下大静脈を通って肝臓に流れ込んでいきます。この静脈が圧迫され、血液の流れが悪くなることで内痔核が腫れてきたり、外痔核が腫れてきます。こういった血流が悪くなることでも血栓ができやすくなります。

3.エストロゲンの増加

三つめはエストロゲンの分泌が増えることです。

妊娠するとエストロゲンというホルモンが増えていきます。エストロゲンには血液凝固作用を高める作用があります。このことで血栓ができやすくなります。このことと同様に、低用量ピルを服用することで、血中のエストロゲンの濃度がふえ、このことによって血液凝固作用が高まり血栓が出来やすくなります。

4.血液量の増加

四つ目は妊娠すると血液量が増えることによります。

 妊娠すると、お母さんの血液量は通常の1.4倍になるそうです。このことで、血液中の血小板や白血球の数が増えていきます。このことで血液が固まりやすくなって、血栓ができやすくなります。

このようなことが妊娠中の血栓ができやすくなる要因になります。

 妊娠していると、何も治療ができないと思っている患者さんがいます。そんなことは有りません。局所麻酔での手術も可能です。何かあれば相談してくださいね。

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