今回は肛門周囲膿瘍に似た症状が出る病気についてお話したいと思います。
肛門周囲膿瘍は肛門と直腸との境目にある肛門腺に細菌感染を起こして炎症を起こし膿瘍を形成して膿が広がっていく病気です。炎症を起こし、膿が溜まっていくので、とても痛い病気です。痛みはどんどん強くなっていき、場合によっては38℃以上の熱が出ることもあります。肛門周囲膿瘍は直ぐに切開して膿を出す必要があり、膿が出ることで痛みはスッと楽になります。ただ、その後約30%の人が痔瘻になっていきます。
今回はこの肛門周囲膿瘍に似たような症状が出る病気についてお話します。
肛門部の粉瘤
一つ目は、肛門部の粉瘤です。
肛門部にできた粉瘤に細菌感染を起こすと赤く腫れてきて、場合によっては化膿することがあります。この場合も肛門周囲膿瘍と同じように切開して膿を出すことがあります。
粉瘤の原因はなかなか難しいですが、毛の生え際の部分が狭くなったり詰まってしまうことで、皮膚の下に袋状のものが出来て、その袋の中に皮膚から剥がれ落ちる垢や皮脂が溜まることでできてきます。粉瘤は肛門部だけでなく、背中や頬、また耳たぶなどにできることがあります。感じとしてはニキビの大きなものと言った具合です。
粉瘤は特に悪性の病気ではないので、そのまま放置していてもかまいません。ただ、段々大きくなって気になるようでしたら手術をしてとることもできます。また細菌感染が起こして炎症を起こしたときは、早期のうちですと抗生剤の内服で治っていきますが、先ほどお話したように化膿してきた場合は切開して膿を出す必要があります。手術で取り除く場合は、袋を残さないように粉瘤を摘出します。局所麻酔での手術で入院の必要はありません。
肛門部の毛嚢炎
二つ目は肛門周囲の毛嚢炎です。
肛門の周囲にも毛穴があります。この皮膚の毛根を包んでいる毛嚢に細菌感染を起こして炎症を起こしたり化膿する病気です。これもニキビに似ています。毛嚢炎は抗生剤の内服で治っていきます。痔瘻の二次口(出口)と似ています。
膿皮症
三つめは膿皮症です。
膿皮症は、アポクリン汗腺という汗が出る腺や毛包の機能の具合が悪くなって細菌感染を起こし炎症を起こす病気です。細菌感染を繰り返すことによって、毛包と毛包との間に痔瘻のような瘻管を作ったり、皮膚の下に膿瘍腔を形成することがあります。症状としては痔瘻と似た症状ですが、痔瘻の二次口のような瘻孔があちこちに多数できることがあります。また慢性の炎症を起こすので、肛門の皮膚全体が硬くなってしまうこともあります。治療としては膿瘍腔を形成した場合には切開排膿を行う必要があります。痔瘻と同じようにスッキリ治すには手術をして瘻管や膿瘍腔を切除することが必要になります。渡邉医院では局所麻酔で手術をしますが、1泊は入院したほうがいいと思います。
毛巣洞
四つ目は毛巣洞です。
毛巣洞は、体毛が皮膚の外に生えてこず、皮膚の下に潜り込んだように生えてしまい、その体毛に細菌感染を起こし炎症を起こし場合によっては膿が溜まる病気です。できる場所は肛門から少し離れた背中側、尾てい骨や仙骨のちょうど真ん中に起きやすいです。
化膿した場合は肛門周囲膿瘍と同様に切開して膿を出すのですが、その膿瘍腔の中に体毛がたくさん埋まりこんでいることがあります。症状は痔瘻と同じで、瘻孔から膿が出たり治まったりします。また炎症が強いと化膿して肛門周囲膿瘍と同じような症状が出ます。毛巣洞もスッキリ治すには手術が必要になります。
局所麻酔の手術ですが、毛巣洞の場合も1泊は入院したほうがいいと思います。
このように肛門周囲膿瘍や痔瘻に似たような病気が色々あります。肛門周囲が腫れてきて痛みが出る場合は、早く肛門科を受診して治療をしてもらって下さいね。