渡邉医院

公衆衛生行政の充実を求めて。

 もうすぐ9月になります。まだまだ厳しい残暑が続いています。でももう9月。残すところ今年も4か月。早いものです。
 今年は新型コロナウイルスの感染拡大から始まって、新型コロナウイルスで終わる。まだまだ今年で収束知るかどうかもわからない状況です。

 さて、新型コロナウイルスの感染拡大の中、保健所など公衆衛生行政の不十分さ、脆弱さを露呈しました。また、これまで進められてきた公衆衛生行政の縮小の影響が今の現状を反映していると思います。

 公衆衛生行政の充実を求める京都市実行委員会が発足して、特に京都市の公衆衛生行政の充実を求めるためのシンポジウムの開催や、財源論を含めての提言を出すために委員会を開催しています。今回は第2回で議論された内容を紹介しますね。

「見せかけの人員増では乗り切れない」

 公衆衛生行政の充実を求める京都市実行 委員会第2回を8月 26 日に開催しました。 冒頭、保健所・公衆衛生政策をめぐる京 都市の現状について意見を交換。
 市が7月 29 日に開催した新型コロナウイルス感染症対策本部会議で、8月1日付で保健師の 体制見直しを発表し、翌日には「8人増加 で体制強化」などと京都新聞で報道されました。しかし実態は、20 年3月末まで新型 コロナの対応を行ってきた部署を、4月の 機構改革で別所属に。兼職をかけたうえで 実質的にはコロナ対応を行っていました。 それを8月に再び同じ所属に戻したという もの。
 報告した出席者は「これは増員とは 言わず、体制強化には程遠い」と強く批判 しました。 また別の出席者は、保健師らの時間外労働について、5月以降、職員の大半が月 100 時間を超え、月 200 時間超の職員も複数人いると報告。
 現在、PCR検査を受けてから結果が出 るまでの間、患者さんに重篤な症状があれば医師の判断で入院もあり得えますが、無症状の場合はいったん帰宅し、結果がでるまでは自宅待機。結果が出るのは早くても検査日翌日で、陽性の場合はそこから保健師らが調査に入ります。感染症を広げないという観点から時間外労働になってしまいますが、そうした業務を少ない人員で回すために、これだけの過重労働が強いられて います。いつ誰が倒れてもおかしくない状況の中、出席者から体制崩壊に対する強い危機感が示されました。
 この問題に対しては、人員増を図ることでしか解決しないと 意見が一致。
 毎年見直される定数条例の縛 りや人員増に対する総務省からのプレッシャーをどう跳ね返すかが課題となるとした うえで、実行委員会として人員増の要求を行うことを確認しました。
 一方で、ドライブスルー形式のPCR検 査における車の誘導までも、最近まで保健師が担っていました。ようやくアルバイト が雇い入れられましたが、全体的な仕事の中にまだまだ事務的な作業があります。どこまでを事務職、どこまでを専門職が担当するのか、業務スキームの見直しも過重労働解消に向けた課題です。
 また、実行委員会では「保健所の抜本的な体制強化を要請するにあたり、市民サー ビス、あるいは市民の新型コロナへの不安にどう応えられるようになるのかなどを打ち出さないと市民の協力は得られないのではないか」といった意見も出されました。
 そもそも新型コロナの行政対応においては、市民の殺到やパニックを懸念して帰国者・接触者外来は非公表。感染した場合の治療スキームも不明瞭で、市民に情報が十分に伝わっているとは言えません。これでは市民の不安が解消されるわけがなく、地域住民に対する時時刻刻の情報発信、予防策の啓発等、もしもの時の対応についてア ウトリーチによって理解してもらう取り組 みが必要だと確認しました。
 さらに、京都市衛生環境研究所への問題 にも言及。脆弱な体制などと報道されていますが、保健所と一体となって新興感染症対策が行えるよう、予算措置も含めた要求を行うことを確認しました。
 今後は京都市の保健師らに対する聞き取り調査、並行して市民アンケートを実施し詳細な実態把握に努めるとともに、11 月1 日に開催するシンポジウムで調査結果の発表を行う予定です。

 以上が第2回目の実行委員会の内容です。今後も委員会での議論の内容などを紹介していきたいと思います。
 私たちにとってとても大事な保健所をはじめとした公衆衛生行政。その充実こそが、今の新型コロナウイルス感染拡大に対抗できる手段です。さらに今後も発生するであろう新興感染症に対して、十分な備えを今からでも整えていかなければなりません。