渡邉医院

今、新型コロナウイルス禍に社会保障を想う。

 新型コロナウイルス感染拡大に対して、緊急事態宣言を出したことで、一端は感染者が減少したが、宣言解除後、再び新型コロナウイルスの感染が急速に拡大しつつあります。これに対して、国はなすすべを持たないのか、何の術を施すことなく、ただただ経済活動へと舵を切ってしまっています。

 新型コロナウイルスの感染拡大は「自粛」では収束させることが出来ないことが今回の緊急事態宣言解除後の状況を見ると明らかです。収束させる唯一の方法は、やはり安心して使うことが出来る治療薬と予防や症状軽減に対してのワクチンの開発しかありません。それまでは、いかに感染拡大のスピードを抑え込むか、そして新型コロナウイルス感染から重傷者や死亡者をなくすことを目指すことにかかっています。そのことに対して、私たちはしっかり取り組んでいかなければなりません。
 そして私たち医師をはじめ、医療にかかわるものはそのことに責任をもって行動することが求められています。ただ、これには私たち医師をはじめ、医療にかかわるすべての人たちへの正しい認識、評価を国民の全ての人たちに持ってもらわなければなりません。医療従事者やその家族の人たちへの差別、誹謗中傷が残念ながら起きていることも事実です。
 今私たちが立ち向かわなければならないのは新型コロナウイルスの感染拡大です。このことをしっかり認識して、間違った方向へ自分自身の不安や恐怖をぶつけないよう心掛けなければなりません。

 さて、今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、これまで国が推し進めてきた医療や介護などの社会保障改革が破綻したことは明らかです。したがって、感染が収束したとしてもこれまで通りの政策を再起動させてはなりません。新型コロナウイルス感染拡大前までに進められていた改革が正しかったのかをしっかりと検証する責任が国にはあるはずです。
 しかし、これまでの国の姿勢はこういった危機を利用してさらなる新自由主義改革を推し進めてきました。今回の新型コロナウイルス感染拡大をも利用して、さらなる改革を推し進め、貫徹させようとすることは間違いありません。私たちはこのことに対してしっかりと対抗していかなければならなりません。それには公的な社会保障で日本で暮らす全ての人たちの命や健康そして暮らしを守る新しい福祉国家を求め、つくることが必要であり、そのことが私たちに求められています。

 また、新型コロナウイルス感染拡大以上に危惧することに、私たちの「心を蝕むウイルス」の感染拡大です。人への思いやり、優しさが新型コロナウイルスの感染拡大によってどんどん蝕まれているように感じます。
 また、密を避けるために、どんどん人とのつながりが壊されてしまっています。また見えないものに対しての不安や恐怖を見えるものにぶつけてしまう。こうした「心を蝕むウイルス」に対しても私たちは対抗していかなければなりません。今、この時期だからこそ私たちの持っている「優しさ」、「相手への思いやり」を最大限に発揮しなければなりません。
 新型コロナウイルスの感染拡大の収束が見えない今の状況のなか、社会保障充実の運動のみならず、反核平和の運動、憲法問題などの市民運動が制限されてしまっています。しかし、今この時期だからこそ、こういった市民運動を強めていかなければなりません。新しい運動の仕方、あり方など模索しながら、確実に、社会保障の充実そして憲法を守り生かす平和な国造りに向けて私たちは進んでいかなければなりません。