6月も終わり、明日から7月になります。新型コロナウイルスの感染拡大で、私たちは今までの経験したことのない生活を送ってきました。社会の在り方がガラッと変わってしまうような状況の中、早くも半年が過ぎました。
今年残された6か月、まだまだ私たちにとって予測がつかない日々が続くと思いますが、毎日の生活をしっかりと過ごしていきたいと思います。
今回は、診断しにくい外痔核に関してお話したいと思います。
外痔核と聞くと、直ぐに頭に浮かぶのは血栓性外痔核です。肛門の外側の静脈叢に血栓が詰まり、急に腫れて痛みが出る病気です。
血栓性外痔核の場合は、肛門の外側に血栓ができて、腫れて痛い状態で医療機関を受診されるので、一見しただけで直ぐに血栓性外痔核とわかります。また、肛門上皮に血栓が詰まって痛みが出ることもあります。この場合はパッと見ただけでは血栓性外痔核とはわかりません。でも肛門指診をすると、肛門内の肛門上皮に硬く血栓が詰まっているのを触知することが出来ます。また肛門鏡で観察することで、肛門の外側に血栓が詰まって居間くても診断は容易にできます。
血栓性外痔核の場合は血栓が詰まって腫れて痛いので、消炎鎮痛剤の座薬を使い腫れを取ると痛みは軽減されてきます。そして、詰まった血栓は時間がかかっても自然に溶けて体に吸収されて治っていきます。詰まった血栓が大きかったり、痛みが強い場合は、血栓を摘出することで痛みはスッと楽になります。でも血栓性外痔核は基本的には手術をしなくても痛みをとることで自然に治っていきます。
ただ、外痔核にはこのように血栓が詰まって腫れて痛い外痔核だけではありません。
肛門の外側の静脈叢が、排便の時などにグッと力を入れて力んだ時に、静脈瘤の様に腫れてくることがあります。この場合は血栓性外痔核と違って血栓が詰まっていないので、視診や肛門鏡での観察、そして触診では外痔核がわからないことが多いです。
患者さんの訴えとしては、「排便時に何か出てきて押し込んでいます。腫れていると痛みがあります。」という症状です。そして出血はなく、腫れて出てくるという症状です。
これだけを聞くと一見、内痔核があって排便時に内痔核が脱出してきて、その内痔核を押し込んでいるんだろうと考えます。でも肛門鏡で肛門内を観察しても明らかな内痔核の腫脹は認めません。
渡邉医院では、初診の患者さんは微温湯による浣腸をしてトイレでその入れた微温を出してきてもらい、グッと頑張った後の肛門の腫れ具合、内痔核の腫れ具合などを診るようにしています。
でも微温湯の浣腸でも内痔核の腫脹はなく、出ても来ないことがあります。こういった場合は、まず軟膏を使って様子を診てもらいます。それでも患者さんの症状が改善されないときは、もう一度浣腸をして頑張った後の肛門の具合を見せてもらいます。そうすると、1回では診断できなかった肛門の外側の静脈叢が腫れてくる静脈瘤性の外痔核を認め、診断がつくことがあります。
血栓が詰まったわけではないので、ただただ視診、触診、肛門鏡での観察では診断がつきません。また外痔核ですが、指で押し込むと鬱血して腫れた外痔核がへこんで治まります。患者さんの訴える症状だけでは内痔核の症状ですが、本当の病名は静脈瘤としての外痔核です。なかなか診断が難しいです。
こういった排便時などに頑張った時に、静脈瘤としての外痔核が出来る場合は、スッキリ治すには腫れてくる外痔核部分を切除する必要があります。内痔核の手術と違って、外側の静脈瘤の切除ですので、術後の痛みは内痔核の手術より楽です。また内痔核の様に根部の動脈を結紮することはないので、入院ではなく、外来での手術が可能です。
一端、静脈瘤としての外痔核だと診断がつくと、後の治療は決まりスッキリ治すことが出来ます。
このように内痔核と違って、外痔核は血栓性外痔核以外に静脈瘤としての外痔核があり、この場合診断が難しいことがあります。患者さんが「排便時に出てきて押し込んでいる。」という症状を訴えていても、明らかな内痔核の腫脹がない場合、患者さんの訴えと自分が診察した際の内痔核の状態とが一致しない場合は、静脈瘤としての外痔核がないかどうかをもう一度診察する必要があると思います。