今回は、肛囲皮膚炎に関してお話します。
最近、外来を受診する患者さんの中に「肛門が痒くて辛いです。」という主訴の方が何人か来られました。
痛いのも辛いですが、「痒い」もとても辛い症状です。その痒みも一日中痒いわけではありません。お風呂に入ったり、夜お布団に入って寝良いとするときに痒くなります。本当はとてもリラックスして気持ちよくなる時に痒みが出て辛かったり、またぐっすり眠れないということになってしまいます。これは皮膚炎があると、体が温まり、血管が拡張するときに痒みが出てきます。
痒いのを掻かないでは無理
「痒いけど、掻いてはいけない。」と皆さんは思います。そして思わず掻いてしまうと、「掻いてしまった。」と何か罪悪感を感じてしまうこともあります。そして一端痒くなって掻いてしまうとますます痒くなる。とっても辛い病気だと思います。「痒い時、掻いてはいけません。」と言われますが、私としてはこれは無理なことだと思います。痛いのはなんとか我慢できても、痒いのを掻くなはなかなか難しいです。寝ている間に無意識で掻いてしまうこともあります。ですから、早く「痒い」という症状をとってあげなければなりません。
皮膚炎は軟膏をつけると症状はとれ治っていきます。軟膏をつけると意外と早く痒みという症状は取れていきます。でも皮膚炎を悪くしてしまうことがあります。どうしても清潔にしなければという思いがありますが、その思いが強いほど皮膚炎になってしまいます。
肛囲皮膚炎の原因
一つ目は、お風呂に入った時に、石鹸でタオルでゴシゴシ洗うことです。しっかり洗って清潔にしようという思いがあると思います。また、皮膚炎で痒みがあるときはタオルでゴシゴシ洗うと気持ちはいいです。でもこれはかえって皮膚炎を悪くしてしまいます。気にはなると思いますが、お湯でサッと洗うぐらいにして下さい。
二つ目は、排便の後トイレットペーパーでゴシゴシ拭くことです。やはりきれいにしなければという思いで、トイレットペーパーでゴシゴシ拭くと、肛門に細かな傷がついて、そこに擦り込むことになってしまいます。あまり強くゴシゴシ拭かない方がいいです。
洗浄便座の洗浄で洗うのはいいと思います。ただあまり強い水圧で一生懸命に洗ってしまうと、かえって水圧で肛門に傷がついてしまったりします。また、洗浄の水が肛門に当たるとその水が直腸に入っていってしまいます。入った水はどうなるかというと、あとから出てきて、かえって汚れたり、そのことで皮膚がただれて痒くなってしまいます。洗浄してもいいのですが、水圧は緩く、サッと洗ってトイレットペーパーで軽く拭く様にして下さい。
三つめは、きれいにしなければ、清潔にしなければといって、消毒液で拭いたりアルコール綿で拭くなど、お薬を使って拭くことです。消毒液で拭くとかえって皮膚の具合は悪くなり、皮膚炎はこじれてしまいます。
四つ目は、排便の状態です。やはり肛門は便が出るところです。便の具合でも痒くなってしまうことがあります。下痢が続くと皮膚炎になることがあります。また便秘でスッキリ出ず、直腸に残ったままになっているときなども、肛門が汚れたりただれたりして痒くなってしまいます。スッキリ便を出すことも大事です。
こういったことが皮膚炎の原因にもなります。「これかなあ。」という原因があれば、まずはこの原因を取り除かなければ皮膚炎は治っていきません。自分の原因は何だろうと考えてその原因を取り除いて皮膚炎を治す軟膏を使ってみて下さい。
症状がなくなっても軟膏は塗り続けて。
次に軟膏をつけて皮膚炎を治して欲しいのですが、痒みなどの症状がとれた時点では軟膏をつけるのを止めないでください。どうしても痒いなどの症状がなくなると、「治った。」と思ってしまいます。でも症状がとれただけでは皮膚炎が治ったとは限りません。
というのは、皮膚炎は直ぐに症状が出ません。正常だった皮膚が何らかの原因で皮膚炎になっていきます。でもすぐには痒みなどの症状は出てきません。ある程度皮膚炎が悪くなって初めて痒いなどの症状が出ます。ですから、原因を気を付けて軟膏をつけていくと皮膚炎は治っていきますが、治りきる前に症状がとれてしまいます。
悪くなる時はある程度皮膚炎が悪くなってから症状がでますが、良くなる時は皮膚炎が治りきる前に、痒いなどの症状がとれてしまいます。
痒みなどの症状がとれた時が一番大事な時期です。痒みがとれ、症状がなくなり治ったかなあと思っても軟膏をつけ続けて、本当に皮膚炎が治りきるまで軟膏は付けて下さい。皮膚科の先生に聞くと、症状がなくなって、見た目に皮膚炎もなくなり、治ったと思ってからもしばらく軟膏を続けたほうがいいとアドバイスをいただいています。
「痒い!」という症状はとても辛い症状です。皮膚炎の原因はなにかを見つけて、それを止め、軟膏をしっかり治りきるまで塗り続けて下さいね。軟膏をつけると3~4日すると痒みは取れます。それからも面倒ですがつけ続けましょうね。