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2020.04.05

お尻の病気、自宅でできる対処法。出血編

 新型コロナウイルスの感染が拡大している中、患者さんからも「お尻の具合が悪いが、新型コロナウイルスが怖いので受診できない。」とか、便秘の治療で内服薬を処方している患者さんからも「今のところ具合よく便も出ていて調子がいいです。新型コロナウイルスのこともあるので、薬だけ欲しい。」という問い合わせもあります。中には「熱があるが、肛門がすごく痛いので診てもらえないか。」といった電話での問い合わせもありました。
 熱があって肛門が痛かった患者さんはやはり予想通り肛門周囲膿瘍でした。切開して膿を出してあげたことで、痛みは楽になり、肛門周囲膿瘍が原因での熱も下がり、とても楽になったとおっしゃっていました。その患者さんが、「家族には新型コロナウイルスじゃない。」と言われていて心配されていたようです。また「熱が出ていたので、診察してもらえないかと思った。」ともおっしゃっていました。肛門周囲膿瘍でも38度以上の高熱が出ることがあります。心配な時は電話で問合せしてくださいね。
 新型コロナウイルスは皆さんの心も蝕んでしまっていきます。早く収束してほしいものです。そのためには私たちが出来ることをしっかりと、そして冷静に行っていきましょう。そして周りの人への思いやりも忘れないようにしなければならないと思います。

 さて前回は自宅でできる対処法として痛み編をお話しました。今回は出血編です。

出血、心配ですが慌てずに

 出血に対してはそれを自分で治すことはなかなかできません。自宅でできることは、まずは便の調整をして具合よく便が出るようにすること。また、内痔核や裂肛などで出血するときは温めてあげるのもいいと思います。そして軟膏などの外用薬を使うということが中心になると思います。
 ただ、肛門の病気で血が止まらなくなって命に係わると言ったことはまずはありません。ですから出血した時も慌てずに、時期を診て医療機関を受診して下さい。さて出血のパターンである程度肛門の病気が推測できます。それによって自宅での対処法が違ってきます。それぞれの出血のパターンと病気についてお話します。

痛みなく出血する

 まずは痛みを伴わずに出血するパターンです。

 痛みなく出血する場合は内痔核からの出血の可能性が高いです。

 内痔核は痛みの感じない部分にできます。ですから出血するときも痛みがありません。出血の仕方は、排便後に拭いたときにトイレットペーパーに血が付いていたり、便に血がついていたりします。また排便時にポタポタ便器に血が落ちることがあったり、内痔核が大きい場合はシャーと音を立てて出血することがあります。でも痛みはありません。出血すると、しかも便器が真っ赤に染まるとすごく心配になります。
 でも24時間ずっと出血しているわけではありません。排便時に便が内痔核を擦ったり、押しつぶすように出てくるときに出血するだけで、それ以外の時は出血はしていません。また一回の出血では貧血にもなりません。ただ、排便時の出血が多く、しかも出血している期間が長いと徐々に貧血になっていくこともあります。

内痔核からの出血の対処法

 内痔核の出血に対しての対処法としてはまずは便の調子を整えることです。便が出なくて頑張っている時間が長かったり、下痢の時も内痔核が悪くなります。次に血液の流れを良くしてあげると内痔核は良くなります。やはり入浴などで温めてあげることがいいと思います。そしてとりあえず軟膏などの外用薬を使う。まずはこのようなことを自宅で行ってもらって出血が続いたり、量が多かったりする場合は医療機関に受診するといいと思います。

痛みを伴う出血

 次に排便時に痛みを伴って出血する場合です。この痛みが伴う場合は裂肛が原因のことが多いです。
 便が硬かったり、また下痢の時も肛門に傷がついて痛みがありそして出血します。出血の程度はいろいろです。排便後拭いたら血が付いたり、便に血が付いていることもあります。また傷のつき具合では、ポタポタ血が便器に落ちることもあります。ただ裂肛の場合は痛みが伴います。

裂肛からの出血の対処法

 裂肛に対して自宅でできることは、やはり便の状態を良くすることが一番です。硬い便だと傷がつきますし、下痢でも傷つきます。いい便が出るように調整することが一番です。
 また、裂肛の場合も入浴などで温めてあげることで血液の流れが良くなり、傷の治りが良くなったり、温めることで肛門の緊張、括約筋の緊張が取れることで裂肛の治りが良くなっていきます。
 またどんな軟膏でもいいので肛門の表面を塗った後、少し指を肛門の中に入れることで括約筋の緊張がとれ、裂肛の治りが良くなっていきます。

その他の出血のパターン

①血栓性外痔核が破けて出血

 出血という症状にはあと二つほどあります。
 一つは血栓性外痔核が破けて出血するパターンです。
 血栓性外痔核は急に肛門に血栓、血豆が出来て腫れて痛い病気です。基本は腫れが引いて痛みが段々楽になり、血栓は徐々に溶けて吸収して治っていきます。ただ、場合によってはその血栓、血豆が破けて血が出ることがあります。この場合、急に痛くなって腫れてきて、そしていきなりの出血。びっくりしますし、悪くなったのではないかと心配される患者さんが多いです。
 でも血栓性外痔核の場合、破けて中に詰まっていた血豆が出てくることで、血は出ますが痛みはスッと楽になります。血栓性外痔核の場合は血豆が詰まってキンキンに腫れる。これが痛みの原因です。破けて血が出ると一瞬「あっ!」と思いますが、キンキンさがなくなるので出血しても痛みは楽になります。
 また自然に溶けて治るよりは破けたほうが血は付きますが早く治ってくれます。ですから出血しても悪くなったわけではなく、早く治るんだと思って安心してくださいね。

②肛門周囲膿瘍が自壊して出血

 もう一つが肛門周囲膿瘍が、これも自然に破けて出血と膿が出ることがあります。
 肛門周囲膿瘍も急に肛門が腫れてきて痛みが出て、しかもその痛みがどんどん強くなってくる病気です。肛門周囲膿瘍の場合は切開して膿を出す必要があります。でも自壊と言って自然に破けて、溜まっていた膿が出ることがあります。
 この時も急に出血と膿が出てくるので先ほどと同じように「あっ!」と思いますがキンキンに溜まっていた膿が出るので痛みはスッと楽になります。
 膿が出てくれると痛みだけでなく炎症も治まってきます。言ってみれば切開して膿を出した状態と同じです。痛みは楽になり炎症も治まってくるので心配しないでください。
 でも肛門周囲膿瘍の場合はその後痔瘻になる可能性もあるので、痛みが楽になっても時期をみて医療機関を受診して下さいね。

 できれば出血や痛みなど、肛門の具合が悪いときは肛門科を受診することをお勧めします。ただなかなか新型コロナウイルスの感染が拡大しているなか、医療機関を受診することもためらうことがあると思います。そのことはよくわかります。まずは自宅でできることで対処していただいて、時期を診て肛門科を受診して下さい。また自宅で対処していても症状が強くなってくるとか、やはり心配だと思います。そういった時には肛門科を受診して下さいね。

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