ここ数日、朝夕は本当に涼しく、少し寒さを感じるようになりました。日中もそんなに熱くなくなりました。
さて、皮垂(スキンタッグ)が気になって手術をされる患者さんがいます。皮垂は内痔核や裂肛、また血栓性外痔核など肛門の病気で肛門にできたシワのことです。基本的には悪い病気ではないので、必ず手術をして切除をしなければならないというわけではありません。
でも何かいつも気になってしまう。ないほうがいいなあと思う。こういう思いをずっと抱いていることは、精神衛生上良くないのではないかと思います。
特に皮垂を切除することで、肛門の機能が悪くなるわけではありません。括約筋をいじるわけではないので、しまりが悪くなったりしません。また肛門が狭くなったりするわけでもありません。
いつも気になっていた「嫌なもの」、「気になっていたもの」がなくなるというだけです。手術して切除しようと思った時、その時に手術をしたらいいと思います
皮垂に関しては以前にもブログに書いたので詳しく知りたい方はご覧いただければと思います。
今日は、どうしても皮垂をとらなければならないことがあることをお話したいと思います。
必ず取らなければならない皮垂の一つ目のケースは、肛門上皮に傷があり、その傷が原因でできた皮垂です。
例えば、内痔核の手術をする際にどうしても肛門上皮に傷が出来ます。その傷を治すために肛門の外側にドレナージという傷を作ります。肛門上皮にできた傷を具合よく早く治すための傷です。ただ、このドレナージの形が悪かったり、大きさが小さかったりした場合にできる皮垂です。
肛門上皮の部分はどうしても便が通るところです。使いながら傷を治していかなければなりません。ですから形のいい、そして適切な大きさのドレナージが無ければ、肛門上皮にある傷は治っていきません。
それに対して肛門の外側に作った傷、ドレナージは便が通りませんから、時間が経てば必ず治っていきます。
手術をした後、そのドレナージの傷が肛門上皮にできた傷よりも早く治ってしまうと、肛門上皮にある傷が予定通り治っていきません。肛門上皮にできた傷だけになってしまうと、その傷に排便の時に便が引っかかったりするために炎症を起こして、これが原因で肛門上皮の傷の外側に皮垂が出来てきます。
この時にできる皮垂は炎症を起こしているため、少し硬さがあって、痛みを伴うこともあります。また皮垂が出来るとより排便の際に便が引っかかりやすくなって、さらに皮垂が大きくなっていきます。
また、肛門上皮の傷が治らないばかりか、排便時の痛みで肛門の括約筋の緊張が強くなって痛みが段々強くなっていってしまいます。裂肛と同じような状態になってしまいます。このように皮垂がだんだん大きくなって、しかも括約筋の緊張が強くなって、痛みが強くなった場合は、裂肛の手術に準じた手術が必要になってきます。
このようにドレナージの傷がふさがってしまって、肛門上皮にある傷が治り難くなり、皮垂が出来てきたような場合は、早めにその皮垂を切除して、もう一度ドレナージを作る必要があります。そして早めに皮垂を切除してドレナージをつくり治すことで、肛門上皮の傷もその後は順調に治っていきます。これが必ず皮垂の切除が必要な場合の一つです。
もう一つのケースは、ドレナージの傷そのものの形が悪く、ドレナージの傷の周りが硬く皮垂ができてきた場合です。この場合もそのドレナージの傷に便が引っかかりやすくなって、傷の治りが悪くなり、また痛みが出てくることがあります。この場合も硬くなった皮垂を切除して治りやす傷にする必要があります。
もう一つのケースは、皮垂が原因で肛門の皮膚炎が治らない場合です。たいていの場合は、肛門の皮膚炎は軟膏をつけることで良くなっていきますが、皮垂が皮膚炎の治りを悪くしてしまうことがあります。軟膏を使っていてもなかなか症状が良くならない。場合によっては皮膚炎が治っては悪くなってを繰り返す場合は、皮垂が原因のこともあり、切除することがあります。
このように、皮垂は放っておいてもなんの影響もないと言われることがありますが、そうでない場合もあります。皮垂などで気になる症状がある場合は診察を受けて、最善の方法を一緒に考えることが大切だと思います。