9月になって、少し涼しくなって過ごしやすくなったなあと思っていたら、昨日今日と暑さがぶり返してきましたね。また日曜日には台風が来るかもしれません。被害が出ないことを祈ります。
こんな気候も影響してかここ最近、肛門周囲膿瘍で受診される患者さんが多いです。肛門周囲膿瘍は急に肛門が痛くなって、腫れあがる病気です。膿がたまるので場合によっては38℃以上の熱が出ることもあります。特に表面に膿瘍が広がるのではなく、奥深い部分に広がっていく肛門周囲膿瘍では熱が出ることがあります。
診断が難しい肛門周囲膿瘍
肛門周囲膿瘍の診断は比較的容易だと思います。まずは、症状として急な激しい痛みが必ず出現します。また肛門の腫れを訴えられます。視診でも、肛門の腫脹を診ることが出来ますし、発赤を伴います。またその部分を触ると圧痛を認めます。
ただ、肛門周囲膿瘍の初期であったり、奥深い部分に膿瘍が広がっていくタイプの肛門周囲膿瘍だと、一見しても肛門周囲膿瘍だと診断することが出来ない場合も多くありません。
極初期の肛門周囲膿瘍
極初期の場合は、肛門指診で診察すると、肛門腺に一致して圧痛を認めます。っでも膿瘍を形成しているときよりも痛みは軽度です。膿瘍の形成がまだないと判断した場合は、消炎鎮痛剤と抗生剤の投与で経過を診ることがあります。
ただ、この経過を診るということは、放置するということではありません。抗生剤や消炎鎮痛剤で炎症を抑えきれない場合は、薬を内服していても、痛みが段々強くなり、膿瘍を形成して腫脹を認めるようになります。そういった場合は内服薬が残っていたとしても直ぐに受診してもらい、切開排膿術を行わなければなりません。
このことをしっかり患者さんにお話して、痛きが強くなるなど症状が悪化した場合は迷わずに直ぐに受診してもらうようにお話して納得していただく必要があります。
また、消炎鎮痛剤と抗生剤を内服している間は症状がとれていても、内服をやめるとまた痛みなどの症状をぶり返してくる場合は、これもやはり切開排膿をする必要があります。いつまでも抗生剤を内服し続ける訳にはいきません。
消炎鎮痛剤と抗生剤で症状がスッキリ取れた場合は治療は終了となります。やはり、症状が出た場合は早く受診することがいいと思います。
深部に広がる肛門周囲膿瘍
さてもう一つの表面的にははっきりと肛門周囲膿瘍と診断できない場合です。この場合は、症状としては激しい痛みを伴います。そして場合によっては高熱も伴うことがあります。しかし、視診でははっきりとした腫脹や発赤がなく、見ただけでは肛門周囲膿瘍と診断できない場合です。
この場合は、膿瘍が肛門の表面に向かってではなく、肛門の深い部分に膿瘍が広がっていく場合です。奥に膿瘍が広がっていく場合は、ほとんどが肛門の6時(後方)の方向が原因となる場合です。
というのも肛門の後方は直腸と仙骨前面に膿瘍が広がっていくことができるスペースがあるからです。こういった奥の方に膿瘍が広がっていくタイプの肛門周囲膿瘍を診断するには症状や痛みのある部位をしっかりきくことも大切ですが、一番は指診だと思います。
大きな病院、特に肛門疾患に力を入れている病院ではCTやMRIをを撮ったり、超音波検査などをして膿瘍を確認したり、膿瘍の広がりを画像診断で診断することがあります。ただそういった医療機器が無い場合はやはり指診が一番大切です。しかもしっかりと指診を行うことで、膿瘍がどの部分にあるか、どのように広がっていっているかを診断することができます。
肛門周囲膿瘍の原因は肛門腺が感染することから始まります。肛門腺は肛門縁から約2~3㎝奥にあります。十分に指診で診察できる部分にあります。指で感染を起こしている部分を触診すると必ず圧痛があります。そしてその周りを丁寧に診察していくと、圧痛を感じる部分に硬結を触れたり、少しブヨブヨしたような、膿が溜まっているのを指で感じることが出来ます。また炎症が強く起きていると、触ると硬い部分を感じることが出来ます。
そういったように肛門指診で十分に奥に広がる肛門周囲膿瘍を診断することが出来ます。診断できれば後はしっかり麻酔をして切開して排膿するだけです。奥の方に膿が広がっている場合は、たいていの場合は多量の膿が出てきます。患者さんはこの瞬間から痛みが軽減されます。
このように肛門周囲膿瘍は症状を聞くこと、そして発赤や腫脹がを視診で確認出来たり、深部の肛門周囲膿瘍でも丁寧に触診する肛門指診で診断することが可能です。