時々、初めて渡邉医院を受診される患者さんの中に、「私はずっと以前から痔を持っています。ですから相当痔の具合が悪いと思います。」とおっしゃる患者さんがいます。また。経過が長いので絶対に手術をしなければならないと思って覚悟をして受診される患者さんもいらっしゃいます。
本当にそうなのかな?
でもこの「ずっと前から痔の具合が悪い。」や「経過が長いので絶対に手術。」となるかというと、そうではない可能性があります。どちらかと言えばそういって来られる患者さんの中には、気にされている時間は長かったかもしれませんが、病状が悪くて手術になる患者さんは少ないのではないかと感じます。自分は痔が悪いんだということで、便の調整にとても気を付けられていたり、市販の外用薬で具合の悪いときは手当されていたり。肛門科に受診されていなくても、それなりに自分でケアをされてきた患者さんが多いと思います。そういった患者さんを診察すると、手術ではなく、内痔核の場合は痔核硬化療法で良くなったり、輪ゴム結紮法や場合によっては外用薬だけでも十分に症状をとることができる場合があります。
たまたま同じ条件がそろったらできる血栓性外痔核
患者さんに「症状はどんな症状が何時から続いていますか?」と聞くと、「数年前に一度急に肛門が腫れていぼが出てきたことがあります。その時は我慢していたら自然に治っていきました。今回も同じような症状が出たので受診しました。」と。
診察してみると、血栓性外痔核でした。血栓性外痔核は以前にもお話しましたが、肛門の外側の静脈にストレスなどの要因が重なって、排便時にグッと力みが強かったり、重たいものを持った時に急に血栓が詰まって痛くなる病気です。でもこれは、以前に悪かったのが再発したり、もともと持っていたものが悪くなったものではありません。いろんな条件が重なってた、たまたま血栓が詰まっただけです。ですからこの患者さんはずっと肛門が悪かったわけではありません。たまたま同じ条件がそろって、血栓性外痔核が出来てしまっただけです。でも患者さんにとってみれば、一回痛いという経験をすると、その後症状がなかっただけで、ずっと持っていた痔がまた悪くなった、再発したと思ってしまったということです。
症状がなく、まったくお尻が気にならないときは治っている
また内痔核の場合も「以前に排便時に出血したことがあったのですが、また昨日排便時に出血しました。手術が必要でしょうか?」と心配される患者さんがいます。これも違います。以前に出血した時は、排便の状態が悪いなど内痔核の原因が何かあって、内痔核の初期の症状である出血をした。その後、便の状態が良いなど、内痔核の原因となるものがなく、内痔核が治っていたので症状が取れた。また最近便の調子が悪いなど、何か内痔核の原因となることが続いたので、出血した。ということです。
肛門の病気は必ず症状が出る
肛門の病気は必ず症状が出ます。内痔核であれば排便時に出血をした。腫れてきた。排便時に内痔核が脱出してくる。違和感がある。場合によっては痛みがある。などの症状が出ます。そして内痔核が悪化してくるのであれば、その症状が段々強くなってきます。例えば出血であれば、排便時に出血した。その出血が頻回になってきた。出血の量が増えてきた。また違和感がある。その違和感が段々強くなってくるなど、必ず内痔核が悪くなる時は症状も強くなってきます。ですから何も自分が不快に思う症状が無い場合は、内痔核は治っていたということです。
いったん出血などの症状があって、その後症状が無くても診察を受けていないので、症状はないが段々内痔核が悪くなってきているんだと思ってしまうのだと思います。
「痔」のトラウマからの脱出
そんなことはありません。肛門の病気は必ず症状が出ます。自分が悪くなっているのだろう、もう手術かな?と思ってもそうではないことも多いです。「肛門科を受診するとすぐ手術かな。」と心配される方も多いと思いますが、まずは肛門科を受診して、診察を受けてみて、今の自分の痔の状態がどうなのかをきき、心配事を解消することが大切だと思います。いつまでも自分は肛門が悪いんだ、痔を持ち続けているんだというトラウマから解放されましょう。そして、治さなければならないものは、しっかりと治してしまいましょう。