今回は、「外来での説明「痔核硬化療法・パオスクレー」編」として、実際外来で説明している時を再現して紹介したいと思います。少し字が汚いのと、図が解り難いようでしたらすみません。
内痔核とは
肛門の出口から約2~3㎝奥まで皮膚のところがあります。ここまでを肛門と言います。その奥が直腸で、直腸に入ったところに静脈が網の目のようになっている部分があります。この静脈の流れが悪くなって静脈の瘤、静脈瘤を内痔核と言います。いぼ痔とか痔と呼ばれますが、本当の病名は内痔核です。
内痔核はどうしてできるのか
内痔核が出来る部分の静脈はもともと細かな静脈が集まっているので、流れが悪いところです。しかも、人間は寝ているとき以外は肛門は心臓よりも下にあります。重力もあり、鬱血して流れが悪いところです。ですから、四つ足の動物は内痔核にはなりません。ゴリラ、オラウータン、チンパンジーは人間に近いですが、内痔核にはなりません。人間立って歩くので、内痔核は人間にしかなりません。ですから、だれでもなりやすいということです。そういったもともとなりやすいところに、便が硬くて頑張ったり、逆に下痢でも悪くなります。また柔らかくても出しにくくてグッと頑張る時間が長いと内痔核は悪くなります。また排便の時肛門はどんなふうに動くかというと、肛門の中の皮膚の部分、肛門が外に出ながら便が出ます。本来はこのことを脱肛と言います。人間は具合よく脱肛することで、気持ちよく便を出すことが出来ます。便が硬くて出にくくて頑張ったり、下痢でも肛門は脱肛した状態になります。また、内痔核があると、排便後も何か便が残ったような感じがして、さらに頑張りたくなる人もいます。便が出なくても、グッと頑張っているときは肛門は脱肛した状態になっているので、さらに血液の流れが悪くなって、さらに便が残った感じが強くなって、さらに頑張りたくなる。と言った具合に悪循環になってしまいます。また冷えてしまった寝不足だったり忙しかったり、ストレスがかかると、さらに血液の流れが悪くなって、内痔核のできる原因にはなりませんが症状が強くなって、出血が多かったり、腫れが強くなったりします。場合によっては血栓が詰まって強い痛みが出ることがあります。
内痔核が出来る場所
内痔核のできる場所は決まっていて、次から次へと内痔核はできません。静脈は肛門ぐるり一周ありますが、動脈が肛門の左、右後ろ、右前の3か所、時計の針でいうと、3時、7時、11時の方向にきます。ですから、この3か所に内痔核が出来ます。逆に言うと、この3か所以外はできないということです。悪くなる時は、同じところが悪くなります。
内痔核の程度 第1度
内痔核は悪い病気ではありません。出血したからと言って、また内痔核があるからと言って、手術をしなければならないわけではありません。内痔核はその病気の程度で治療が決まります。
まずは最初が第1度の内痔核です。排便時に出血したり、違和感があったり、何か挟まったような感じがするという症状が出ます。でも排便時に内痔核が外に出てくること(「脱出」と言います)はありません。
第2度の内痔核
次の段階が第2度の内痔核です。排便時に出血したり、違和感があります。さらに排便時に内痔核が脱出してきますが、それでも自然に直ぐに肛門内に戻り、押し込むことが無い。この段階が第2度です。
第3度の内痔核
さらに悪くなると、排便時に内痔核が脱出して、自然に戻ることはなく、指で押し込まなければ肛門内に入っていかない状態になったものを第3度の内痔核と言います。よく「脱肛」と言いますが、この3度の内痔核の状態を「脱肛」と言っているようです。排便をするときに肛門が脱肛して、その時に内痔核が脱出してくる。そして内痔核が脱出したままになっているので、肛門は脱肛したままになっている。このことを「脱肛」と言っていることがあります。でも正しくは第3度の内痔核です。
第4度の内痔核
一番具合が悪いのが、第4度の内痔核です。第4度の内痔核になると、内痔核は常に脱出したままの状態になり、押し込もうとしても押し込めない状態になります。これを第4度の内痔核と言います。
ただ、内痔核だけですと、第1度から第4度まで痛みはありません。
内痔核の程度で治療が決まる
内痔核の治療は、内痔核の程度で決まります。
第3度以上の内痔核になりますと、手術やジオンによる痔核硬化療法が必要になってきます。手術やジオンによる痔核硬化療法は、脱出してくる内痔核の性状で決まります。ジオンによる痔核硬化療法は万能な治療方法ではありません。適応を見極めることが大切です。これに対して痔核根治術はどんな内痔核に対しても対応できるオールマイティな治療方法です。
第1度、第2度の治療方法
第1度や第2度の内痔核は外用薬やパオスクレーによる痔核硬化療法で治療していきます。第2度の内痔核になりますと、どうしても脱出するという症状があるため、軟膏や座薬ではどうしてもよくなってきません。また第1度の内痔核でも出血が多かったり、軟膏や座薬でも症状が良くならない場合があります。こういった場合は、渡邉医院では、パオスクレーによる痔核硬化療法をしています。
パオスクレーによる痔核硬化療法
パオスクレーは、アーモンドのオイルの中に5%の割合でフェノールが入っている痔核硬化剤です。内痔核に直接注射します。内痔核は痛みを感じないところなので、注射をしても痛くありません。
パオスクレーを内痔核に注射すると、アーモンドオイルが直接内痔核を作っている静脈を圧迫していきます。そしてフェノールが軽く炎症を起こすことで、内痔核を硬化させ小さくしていきます。アーモンドオイルが直接血管を圧迫することで、出血などの症状は割と早く取れてきますが、フェノールの効果が1週間目から効いてきて、2週、4週、6週と聞いて効いてきます。
痔核硬化療法は2回します
痔核硬化療法を行う際に、パオスクレーの量が大事になります。量が少ないと効果がでません。1か所の内痔核に対して5mlを局注します。5ml未満ですと、どうしても注射の効果が半減してしまいます。ですから、1か所の内痔核に対して5ml以上注射が必要です。1回目の注射が1週間たつと効果が出てくるので、1回目の注射後、その効果が出てこないうちに十分な量が打ちたいので、1回目が終わったら、そこから1週間の間にもう1回痔核硬化療法をします。
痔核硬化療法後2週間たって効果を判定
2回注射が終わった後は、1週目から本格的に聞き始め、2週、4週、6週と効いてくるので、2回目終了後約2週間たってから痔核硬化療法の効果を判定します。出血や自覚症状が軽快していれば、治療は終了です。
こんな感じに、外来では診察後病気の程度や治療方法を説明しています。
次回は手術の説明を紹介したいと思います。