渡邉医院

第73回日本大腸肛門病学会総会を終えて。

 第73回日本大腸肛門病学会総会が先週の金曜日、土曜日の二日間にわたって東京の新宿で開催されました。

今回も発表してきましたが、その内容はすでに紹介しましたのでご覧ください。発表以外にも様々な講演や発表を聞いてきました。そこで今後さらに検討しなければならないなと感じたことをいくつか紹介したいと思います。
 まずは、痔瘻に関してです。今回も多くの先生が痔瘻に対しての手術方法などのビデオなどを通じて、手術の際の工夫などを報告されていました。その中で手術方法ではないのですが、痔瘻について興味をひかれたのが、痔瘻の発生部位と最大肛門静止圧の関係でした。
 最大肛門静止圧は内肛門括約筋の緊張の度合いを知るのに役に立つもので、最大肛門静止圧が高いと、内肛門括約筋の緊張が強く、反対に最大肛門静止圧が低いと、内肛門括約筋の緊張が弱いことを意味します。発表された内容では、後方の痔瘻の場合は最大肛門静止圧が高い、すなわち内肛門括約筋の緊張が強く、反対に、前方、側方の痔瘻では、後方と比較して最大肛門静止圧が低い、すなわち内肛門括約筋の緊張が後方より弱いというものでした。
 渡邉医院で痔瘻の手術前の最大肛門静止圧を測定した内容を学会で発表しましたが、基本的に、痔瘻の患者さんの最大肛門静止圧は内痔核術前の患者さんの最大肛門静止圧より高く、内肛門括約筋の緊張が強い傾向にありました。若い男性に多かったり、女性と比較して男性に痔瘻の発生が多いのも、この最大肛門静止圧が若い男性で高い傾向があることが原因と考えています。ただ、中には最大肛門静止圧が高くなく痔瘻を発生している患者さんもいました。ただ、そういった場合も肛門の広がりが悪い、緊張は強くないが狭い印象がある。そんな患者さんも痔瘻の患者さんの中にはおられます。痔瘻の慢性炎症で、括約筋の緊張が強くなくても狭くなるのか、それとも括約筋の緊張が強くなくても肛門が狭い印象にある患者さんに痔瘻も発生するのか。検討する必要があります。
 まずはこれまで痔瘻の手術前に最大肛門静止圧を測定した患者さんのデータを後方、前方、側方で最大肛門静止圧に関して差があるのかどうかを検討してみたいと思います。最大肛門静止圧が高かったり、肛門が狭いことが痔瘻の原因であるならば、痔瘻の手術をする際に、内肛門括約筋の緊張をとり、正常にしたり、肛門が狭いのであれば、適切な広がりを持つように手術の際にすることが必要になると思います。
 また、痔瘻に関しては、術後に創傷治癒が遷延する、治り難くなることがあります。すんなり治ることが多いのですが、場合によっては、不良肉芽ができ、傷の治りが遅れることがあります。今はそうなってしまった患者さん対しては治り難くなった傷に硝酸銀の水溶液を塗布して治癒を促しています。今回の特別企画の中で、「創傷治癒学からのメッセージ」という講演の中で、傷の治りが遅れる原因の中に傷の感染を指摘されていました。どうしても傷に感染を起こすと、治りが遅れてしまいます。痔瘻の手術など、肛門の手術は、どうしても便が通るところです。感染がおこらないように十分なドレナージを作ったりして、傷の治りをよくしようとするのですが、感染を起こすこともあるのかなと思います。痔瘻の手術後感染を起こすことも治癒の遷延を招くとするならば、感染を起こした場合の対処方法は?です。この講演では、感染を疑った場合にはヨウ素含有の軟膏の塗布が有効だというお話でした。痔瘻の術後遷延している場合には、このヨウ素含有の軟膏を使ってみることも有効なのかなと考えます。ただ、ヨウ素含有の軟膏の欠点は少し刺激があり、しみるという点だそうで、この点が痔瘻根治術後に使ってどうか?このことも検討して今なければならないなと思います。