院長に聞く患者様への思い
90年以上、肛門科一筋
渡邉医院は私で3代目になります
どうして医師になろうと思われたのですか?
祖父も父も肛門科の医師で、渡邊医院は私で3代目になります。1931年(昭和6年4月)に創業。今年で92年になります。この間、肛門科一筋で診療し続けてきています。
そんな環境でしたので、子供の頃から自然に「医師になる」という使命感のようなものを持っていて(笑)、他の仕事は考えず、“当然の成り行き”で医師を目指していました。
最初は整形外科医を目指していたと聞きましたが?
そうなのですが…実は私は関節が反対に向いているのを見るのがダメで、フラミンゴの脚なんかも生理的に苦手なのです(笑)。さらには脱臼を整復する時のあの感じもダメで、とても整形外科医としてやっていけないと思い、消化器外科の医局(日本大学医学部の第三外科)に入局しました。
そこから肛門科に進んだのは、指導を受けていた教授の影響で、その方は肛門を熱心に研究されていました。さらに父が病気で倒れたため、京都へ戻り、渡邉医院で肛門科の診療を行うようになった次第です。
そして渡邉医院を継承されたのですね。その当時で覚えていることは?
父が倒れているのに手術の予定は、しっかり入っていました。父の代わりに私が手術しなければならなくて、とにかく目の前のことで必死でした。
でも、父が「患者様お一人おひとりを丁寧に診て、お一人おひとりしっかり治していきなさい。そうすることで初めて、たくさんの患者様を治すことができる」と言ってくれました。その言葉が私のささえになり、頑張ることができました。その父の言葉は、今も私の胸に息づいています。
HP・ブログ・SNSを積極的に活用
患者様が“本当に知りたいこと”をお伝えしています
渡邉医院の診療理念は?
今、お話しした父の言葉がそのまま、当院の診療理念となります。「患者様お一人おひとりを丁寧に診て、しっかり治していく」「それを積み重ねていくことで、初めて、多くの患者様を治すことができるようになる」その“積み重ね”こそが、90年以上におよぶ渡邉医院の歴史となっているのです。
そうした“歴史”も大切ですが、新しいことにも目を向けなければいけないと思っています。ホームページだけでなく、ブログ、Twitter、LINE、Facebook、YouTubeなどの新しいツールを活用して、皆様に様々な情報が提供したり、ご相談を承ったりする環境を整えています。
クリニック・病院のホームページを見ると、病気に関することは詳しく書かれていますが、「こんな時はどうすればいい?」という、患者様が不安に思うことへ答えはあまり書かれていません。なので、SNS等を活用して、患者様が本当に知りたいと思っていることを、わかりやすくお伝えするようにしています。
以前からSNS等での情報発信を積極的に行っていたのですか?
今から5年ほど前に“肛門科不況”のような状況がありまして、「うちだけなのかな?」と思って他院の先生に聞いたところ、みんな同じような状況で、全国的に肛門科へ患者様が来られないという時期があったのです。
その時に、渡邉医院の現状を色々と見直して、「そういえば、ホームページを作ったけど、全然更新していないな」「様々な形で情報発信しないといけないな」と思い、そこからSNS等の活用を始めました。
患者様が肛門科と繋がるためには、積極的な情報発信が必要と思われたのですね?
他科と比べて肛門科は受診しにくい科で、「敷居が高い」とお感じの方もまだまだ多いです。ですが、例えばTwitterやLINEなら匿名で相談できるので患者様も安心です。
Twitter・LINEでの相談を始めた時、最初は冷やかしの相談が多いのかなと思っていたのですが、実際に始めてみると、本当にお悩みの方からの相談ばかりでした。その時にあらためて痛感しました、「やっぱり、皆様、お尻のお悩みを相談するところがないのだな」と。
誰かに相談したいけど、誰に相談したらいいかわからない。部位が部位なので、家族にも相談しにくいという方もいらっしゃいます。お一人で悩み続けて、インターネットで調べても正確な情報が得られない。こうした状況では、なかなか肛門科への受診に繋がりません。だからこそ、匿名でご相談いただけるTwitterなどで情報を発信し、ご相談を承って、皆様がもっと気軽に肛門科と繋がれる状況を作りたいと思っています。
患者様お一人おひとりをしっかり治していく
これからも地域の皆様から愛される肛門科を目指します
そうしたSNS等の活用により、どのような変化がありましたか?
患者様の気軽な受診に繋がっているように感じています。ご来院になった患者様の中には、「ホームページを見て来ました」「YouTubeを見て来ました」「Twitterで相談していた者です」という方もいて、多少なりとも受診のきっかけになっているのではないでしょうか。
また、TwitterやLINEでご相談いただく方の中には、他府県にお住まいの方もいて、当院への相談をきっかけに「近くの肛門科に行ってみます」となることもあります。
そうして目の前の患者様だけでなく、離れた患者様の受診のきっかけにもなっていることを嬉しく思います。
SNSへはどんな相談が寄せられていますか?
「肛門が腫れて痛い」「便秘が原因で切れ痔(裂肛)になった」「痔の手術後、出血が続いているけど大丈夫でしょうか?」などのご相談が多いです。男性の方から肛門周囲膿瘍やあな痔(痔瘻)についてご相談いただくことも多いです。
あと、YouTubeにアップしている動画のコメント欄に質問が来ることもあります。けっこう皆様、同じようなことを不安に思ったり、知りたいと思っていて、その相談・質問にお答えしたら、それに関連する内容をブログに書き、それをまたTwitterに投稿するなどして、SNS間でもリンクさせて、できるだけ多くの方が情報にアクセスできるように工夫しています。
最後に、渡邉医院の今後の展望を教えてください
“目の前の患者様お一人おひとりを、しっかり治していく”という、今までやってきたことをこれからも続けていくとともに、お尻の病気や痔の手術、病気予防のための食事のことなど、様々な情報が得られる場所にしていきたいです。渡邉医院にアクセスすれば、自分の知りたいことがわかる、そんな場所にしたいですね。
あと、今後はもっと京都の肛門科の先生方との連携を深めていきたいと思っています。当院の手術を手伝ってもらったり、反対に私が他院で出向いたりして、これまでの経験で培った知識・技術を伝えることもしていきたいです。
そして、様々な事情で通院できない方もいらっしゃいますので、そうした方へ在宅医療が行える体制も整えたいと思っています。肛門科の診療は、そこまで大掛かりな機器を必要とせず、局所麻酔なので在宅でも手術は可能です。
今後はこうしたことを目標に、今以上に地域の皆様から愛される肛門科を目指して参ります。