渡邉医院

痔核根治術後を行って2日目以降の出血・痛みの管理について。

 今回は、内痔核に対して痔核根治術を行ったあと、術後2日目以降に患者さんにお話ししていることを紹介します。

出血について

まずは、出血についてです。

手術当日から次の日にかけては、手術をしたばかりなので、傷に充てている綿花につく出血は多いです。でも手術をした次の日からは、同じ傷があっても出血の量はグッと減ってきます。手術したばかりは、綿花には赤く血そのもののが付きますが、傷が落ち着いてくると段々綿花につく汚れ、出血も薄くなってきます。段々綿花につく出血が少なく、そして薄くなってくると、今度は黄色い「膿?」のようなものが綿花につくようになってきます。患者さんはこれを見て、「出血が減ってきたのに、今度は膿が増えてきた。化膿してしまったのかな?」と心配されるようになります。この黄色い膿のような汚れは、化膿したわけではありません。怪我をした時にバンドエイドを貼ると、出血が治まってくると黄色汁のようなものが付くようになりますよね。傷口からの浸出液です。肛門の手術も一緒で、手術をした傷口から浸出液が同じように出てきます。また、内痔核の手術ですので、粘液も少し増えてきます。そしてもう一つは、内痔核の根元を糸で縛って内痔核を切除するのですが、動脈を縛った糸がすぐに取れてしまうと困るので、内痔核の根元の動脈を縛った部分から少し距離をおいて内痔核を切除します。残った部分は根元を縛っているので、段々腐って脱落していきます。この壊死脱落していくものと浸出液、そして粘液が混ざって黄色い「膿?」のような汚れになります。内痔核の根部を縛った残りが脱落して、傷が小さく治っていくにつれて、この汚れは少なくなっていきます。

もう一つ汚れについて患者さんが心配されることがあります。それは排便後、軽く洗浄してトイレットペーパーで軽く拭いて、軟膏を付けた綿花を傷に充てておくと、その綿花に便などの汚れが付くことです。「手術をして肛門が緩んでしまったのかな?」と心配されることもあります。これは肛門が緩んだわけではありません。内痔核の手術ではどうしても肛門の中の皮膚の部分、肛門上皮に傷が出来ます。排便の時にこの肛門上皮の部分にどうしても便が引っかかります。肛門上皮の傷の部分に便が引っかかったままにならないように、肛門の外側にドレナージという傷を作ります。ですから、排便時に肛門の中の肛門上皮に引っかかった便がそのままにならないように、引っかかった便が外に出てくるように、ドレナージがしてくれます。そして外に出てきた汚れを軟膏を塗った綿花が取り除いてくれるといった具合です。ですから軟膏を付ける目的は、傷を治すだけでなく、そういった汚れを取り除くという目的もあります。そういった意味で、12回は軟膏を付けてもらっていますが、それ以外に排便があった場合も軟膏を付けてもらっています。

痛みについて

次に痛みについてです。

手術後、傷や肛門の腫れが出なければ、傷があっても普段は痛くありません。どうしても排便の時は痛みがあります。そして排便後肛門が締まってくる間に痛みがあります。ですから、排便時と排便後しばらく痛みがあります。消炎鎮痛剤は手術後3日間は毎日、毎食後に内服してもらっています。消炎鎮痛剤は文字通り、痛みをとる鎮痛だけでなく、腫れや炎症を取り除く消炎作用もあります。ですから痛みだけでなく、術後の腫れや炎症を抑えるために、痛みがあっても無くても3日間は毎食後内服してもらっています。それ以降は、消炎鎮痛剤の鎮痛だけの目的で、痛みがあるときに我慢せず内服してもらっています。

術後の傷や腫れに関しては、一番有効なのが入浴です。入浴することで術後腫れた場合も、この腫れが弾いてきます。また温まることで肛門の血液の流れもよくなって傷の治りをよくしてくれます。さらに入浴することで、肛門の括約筋の緊張がとれ痛みがある人も「治ったかな。」と思うほど楽になります。痔核根治術後の痛みの原因の一つに、内肛門括約筋が締まることがあります。この内肛門括約筋の緊張をとることでも、痛みは軽減されます。入浴することで傷口から細菌が入って化膿するといったことはありません。反対に血液の流れが良くなり、内肛門括約筋の緊張もとれ、傷の治りをよくするだけでなく、痛みも取り除いてくれます。

こういったこともあって、入浴を始めた後は、消炎鎮痛剤は「痛いときにしっかり飲む。」ようにしてもらっています。

痛みのでる時期は?

ではいつ痛みが出るかです。

一つは排便の時と排便の後です。どうしても排便時に肛門上皮の部分の傷を擦って便が出てきます。したがって、この排便時にはどうしても痛みがあります。また、排便後に内肛門括約筋が締まってきて、このことで排便後に痛みが残ります。まずはこの時には消炎鎮痛剤を内服してもらっています。「このくらいなら大丈夫。」でしたら飲むことはありませんが、「痛むな~。痛み止め飲んだら楽になるかな~、どうしようかな~。」と思った時は迷わず飲んでもらっています。

もう一つは人間は痛みを感じる時間帯があります。日中はそれほど痛みを感じませんが、夜中とか朝方に人間は痛みを感じる時間帯があります。これは肛門の手術だけに限ったわけではありません。痛みを感じる時間帯は特に朝方です。夜中に痛いな~とか、朝方痛いな~と感じた時も消炎鎮痛剤を飲んでもらっています。

このように術後3日目以降は痛みがあるときには我慢をせずに消炎鎮痛剤を飲んでもらっています。排便時や排便後の痛みも術後710日を過ぎるとスッと楽になります。この間の痛みをしっかり取り除くことが大事だと思います。また痛みを我慢することでそれがストレスになります。ストレスがかかることで、血液の流れが悪くなったりして、痛みを我慢することそのものが傷の治りを悪くしていきます。傷を具合よく治していくためにも痛みをしっかり取り除くことが大切です。

排便について

最後に排便です。

手術後3日間の間に一回はすっきり便が出てほしいです。これは、食べたものが消化され吸収され便になるまで、早くて12時間、ゆっくりでも3日です。ですから3日間の間に1回はすっきり便が出てほしいです。どうしても「便をするときに痛いんだろうな~。」とか「便をすると出血するかな~。」と思うと、どうしても便をするのが怖くなります。とてもよくわかります。でもちょっと考えてみてください。便がしたいと感じたときは直腸に便が来ているということです。行きたいのに我慢してしまうと、どうしても傷の近くに便があるままになってしまいます。このことは傷の治りにも影響します。また便が肛門の近くに残ったままになっているだけでも痛みが出ることがあります。怖いかもしれませんが便がしたくなったら頑張って出しましょう。

どうしても便が出にくいときは、緩下剤を飲んでもらいます。また3日経っても便が出なかったり、そこまで便が来ているのに出せないときなどは、グリセリン浣腸をしてすっきり出してもらうこともあります。一回便が出ると、排便時に痛みがあったり、出血があっても、その後は便はちゃんと出るようになります。また緩下剤を飲んだほうが楽にでるようでしたら、しばらく内服を続けてもらい、排便時の痛みや出血がなく、排便が怖くなくなり、具合よく便が出るようになったらやめたりしてもらっています。

便が出るときに出血や痛みがないと、「治った!」と思います、反対に便が出たときに出血や痛みがあると「悪くなった!」と思ってしまうことがあります。でもそれは違います。どうしても便が出るとき、肛門上皮にある傷を擦って出てきます。排便時に痛みや出血があっても不思議ありません。排便時に痛みや出血があっても「傷があるからそうだろうな~。」と思って下さい。決して傷が悪くなったわけではありません。排便時の痛みは術後7~10日を過ぎてくるとスッと楽になります。また出血も傷が落ち着き、治ってくると段々排便時の出血の量や綿花につく出血も減ってきます。一喜一憂しないでくださいね。

これまで話してきたことを患者さんにお話しして、術後の不安を取り除くために術後3日間は診察をさせてもらっています。術後3日が過ぎたら、次は術後710日目に受診してもらっています。ただ、この間に、出血のことや痛みのこと、それ以外にもなにか気になることがあったら、受診してもらうようにお話しています。心配なことがあって、家で悩んでいてもしかたがありません。そういった時は診察に来てもらうと、不安は解決できます。そういった時は迷わず受診してくださいね。

さて、次回は術後710日目に患者さんにお話ししている内容を紹介します。