渡邉医院

内痔核の手術は必要最小限の傷と十分なドレナージが重要!

 今回は内痔核の手術に関してお話します。
 内痔核の手術は、「必要最小限の傷と十分なドレナージが重要!」です。
 内痔核があるからと言って大きな傷で内痔核を切除すると、術後の肛門の機能が悪くなります。例えば、肛門上皮と言って肛門の外側から内側に約3㎝程度皮膚の部分があります。この肛門上皮を大きくとってしまうと、特に3ヶ所の内痔核で肛門上皮を大きくとると、術後肛門が狭くなってしまいます。やはり必要で最小限の傷で内痔核を切除する必要があります。このために麻酔をかけた後にどのように手術をするかのデザインをしっかり頭に描くことが大切です。

 手術は肛門から少し離れた部分の皮膚から剥がしていきます。約2㎝ほど離れた部分から皮膚だけを剥がしていきます。肛門の中の肛門上皮も皮膚一枚剥がしていくと、内痔核の根部、根元まできれいに剥がしていくことが出来ます。決してジョキジョキ切っていくわけではありません。皮膚一枚を剥がしていくので、肛門の括約筋も傷つけることはありません。
 皮膚をコッヘルという器械で挟んで、引っ張りながら手術をしていくときれいに内痔核が剥がれてきます。ところどころ突っ張る靭帯を剥がすと、スッと内痔核は剥がれてきます。内痔核の根部まで剥がれたら、内痔核に流れ込む動脈を糸で結紮して出血しないようにします。この内痔核の根部を結紮するときは、なるべく余分な組織がなく、粘膜と血管だけを縛るようにすると、術後の痛みが楽になります。多くの組織を残したまま、大きく結紮すると、術後の痛みが強かったり、術後の晩期出血の原因にもなります。
 また、内痔核を剥離していく際に、肛門の外側につくるドレナージも傷の治りに重要なポイントになります。
 どうしても肛門は便が通るところです。便が通っても具合よく治る傷にしていかなければなりません。この時に重要なのが肛門の外側につくるドレナージです。排便時に肛門内の傷に便が引っかかります。その便が傷に引っかかったままにならないように、具合よく便が出るようにしてくれるのがドレナージです。
 肛門の外側の傷を小さくして、ドレナージが小さすぎると外側の傷が治っても、肛門の中の傷が治らなく、一見傷はふさがって治った様に見えますが、肛門の中の肛門上皮の部分の傷が治らず、痛みが長引き、場合によってはその傷が裂肛のようになり、痛みがだんだん強くなっていくこともあります。しっかりと十分なドレナージを作ることで、肛門の中の肛門上皮の部分の傷が先に治り、肛門上皮の部分の傷が先に治ることで、排便時の痛みが早くとれます。そして、あとから外側のドレナージの傷が治る。この順番で治ることがベストです。
 肛門内の肛門上皮の傷の治りは、このドレナージの良しあしに影響します。極端なことを言うと、ドレナージは小さいよりも大きいほうが具合よく治ります。ドレナージは便が通るところには傷はありません。どんなことがあっても治ります。でも肛門内の肛門上皮の傷はドレナージが適切でなければ治っていきません。
 こういったことからも、前回お話したように、内痔核の手術にはデザインが重要です。