渡邉医院

「ALTA単独療法を施行後10年経過した264例の検討「」の発表内容を紹介します。

前回前書きが長かったので、今回は「ALTA単独療法を施行後10年経過した246例の検討」の発表内容を紹介します。

ALTA単独療法を施行後10年経過した264例の検討

渡邉医院では平成18年の6月からALTA療法を導入しました。
今回、内痔核に対して、ALTA単独療法施行して、10年以上経過した症例に関して、その長期成績などを検討しました。
対象は平成186月から平成203月までにALTA単独療法を施行した263例、男性198例、女性65例としました。

 さて、初めに渡邉医院でのALTA療法の位置づけですが、
ALTA療法の最も売りとする点は、肛門に傷を付けることなく内痔核を治療することができるという点で、この一番の売りを大切にしなければならないと考えています。
そこで、渡邉医院における内痔核の治療は、ALTA単独療法もしくはLEなどの外科的治療をするかのいずれかを選択します。したがって、併用療法においては、複数内痔核がある場合、1痔核に対してALTA単独療法をするか、もしくはLE等の外科的治療を行うかを選択します。例えば、外痔核に対しては外科的切除を行い、内痔核に対してはALTA療法を行うといった、併用療法は行っていません。外痔核部分の切除が必要な場合は、LEを行っています。

さて、今回の検討項目ですが、①性差、②再発の際に、再度ALTA単独療法又は外科的治療を施行するまでの期間、③複数回再発した際の再発期間、その際の治療方法について検討しました。

 まずは、2006年のALTA療法導入から2017年までのALTA単独療法とそれ以外の症例数の推移を示します。
全体としては、多少波はありますが、徐々に増加傾向にあります。
ALTA単独療法は、2011年までは徐々に増加傾向にありましたが、2012年以降は減少傾向にあります。これに対してALTA療法以外は2010年までは減少し、2010年では2006年と比べると37%にまで激減しました。しかし、それ以降2011年から増加に転じ、2017年には、2006年の96%まで増加し、最も少なかった2010年の約2.6倍になりました。

次に、ALTA単独療法とそれ以外の占める割合です。
2010年ピークにALTA単独療法は減少、ALTA療法以外は増加に転じ、2015年からはALTA単独療法よりもそれ以外の方が多くなってきました。
この原因としては、ALTA療法導入初期の再発に対しての外科的治療やALTA単独療法の適応がより厳格になってきたからだと考えています。

ALTA単独療法の男女差ですが、ALTA単独療法は男性に多く女性は少ない傾向があります。

ALTA療法以外では、反対に女性が多い傾向にあります。
男性の推移を見てみると、2010年から男性のALTA療法以外が増えてきています。この男性のALTA療法以外が増えてきたことが、ALTA単独療法が減少してきている要因と考えます。

 LEALTAの男女別の比較ですが、男性では各年齢でALTALEを上回り、すべての年代で60%を超え一定であったのに対して、女性では60歳台まではLEALTAを上回っていました。さらに、すべての年齢層で40%以下で、40歳台以下では、ALTA20%台でした。

ALTA単独療法は1%塩酸プロカインによる局所麻酔下に行っています。体位は左側臥位で、四段階注射法を遵守して行っています。

て、初回再発ですが、男性は51例、25.8%。女性では913.8%と、女性で再発率が低い傾向にありました。再発時のALTA単独療法は男性は3874.5%、女性は444.4%と男性で多く、外科的治療では、女性555.6%、男性1325.5%と女性に多い傾向にありました。

初回再発に対して再度治療を行うまでの期間は、ALTA単独療法は6.1年に対して外科的治療では4.3年とALTA単独療法を施行するまでの期間が長い傾向にありました。外科的手術を選択する場合は外痔核成分が多いなどですが、外科的治療に移行する症例では、最初の治療法の選択が正しかったかが問題だと思います。

最終的に外科的治療を行った場合の治療方法ですが、LE68%と最も多いですが、輪ゴム結紮法が24%あります。初回のALTA単独療法で、再発時の内痔核が小さくなっていたり、輪ゴム結紮が可能な内痔核に変化したということで、初回のALTA単独療法が無駄ではなかったことを示していると思います。

再発までの期間は、初回再発時までの期間は5.6年ですが、2回目が1.9年、3回目が1.8年と2回目以降は再発までの期間が初回と比較してグッと短くなっています。
初回再発時に行う治療法に関しては、ALTA単独療法が有効なのか、それ以外の外科的治療が有効なのかをしっかり判断するとともに、患者さんにも再発時の治療法を選択する際にこの傾向をしっかり伝える必要があると思います。

再発までの期間ですが、それぞれの症例数が少ないので、わかりませんが、2年未満と6年以上の二つの山に分けられるのかなと思います。6年以上は、再発なのか、排便習慣などが原因で新たに内痔核が発生したのかは不明です。ただ2年未満再発症例は、その患者さんがALTA単独療法の適応だったのかが重要なポイントになると考えます。

まとめです。
今後も今まで通り、ALTA療法の一番の売りである肛門に傷を付けずに内痔核の治療ができる。この利点を最大限に生かし、ALTA単独療法の方針を続けるとともに、ALTA療法の適応をさらに明確化していくことが必要です。また、適応と判断した症例が再発する原因は何かを今後検討していく必要があると考えます。