今回は、手術中の痛みと手術後の痛みの関係や、麻酔の際の痛みと手術後の痛みについて患者さんのアンケートを基に検討しました。
[4]術中の痛みと術後の痛みの関係
術中の痛みが楽な人ほど術後の痛みが少ない印象があったので、実際にアンケートではどうかをみてみました。自分が思っていた痛みを100%ととして、実際感じた痛みを表した結果は次のようです。
術中の痛み 術後の痛み 麻酔の痛み
10%以下(106例)27.3% 33.9%
11〜20%(40例) 38.8% 34.3%
21〜30%(62例) 46.1% 47.5%
31〜40%(9例) 32.8% 52.2%
41〜50%(45例) 54.1% 57.0%
51〜60%(9例) 61.1% 66.7%
61〜70%(8例) 62.5% 63.8%
71〜80%(9例) 52.9% 78.7%
81〜90%(5例) 88.0% 92.0%
91〜100%(6例) 61.7% 76.7%
100%以上(1例) 120% 60%
術中の痛みが強くなるにしたがって術後の痛みは強い傾向にあります。また、麻酔の痛みも同様にだんだん痛くなるようです。ただ術中の痛みも自分の思っていた痛みと比較して、50%以下だと答えた人が全体の87%を占めていますし、術中の痛みが50%以下の人の術後の痛みは、平均39.8%でした。
術中の痛みを50%以下の人に限定して、麻酔の痛みと術後の痛みについてさらにみてみるとつぎのようになります。
術中の痛み 麻酔の痛み 術後の痛み
50%以下 10〜19%(31例) 22.9%
50%以下 20〜29%(36例) 27.2%
50%以下 30〜39%(60例) 37.2%
50%以下 40〜49%(10例) 41.0%
50%以下 50〜59%(51例) 43.5%
50%以下 60〜69%(16例) 55.6%
50%以下 70〜79% (20例) 52.3%
50%以下 80〜89% (7例) 50.0%
50%以下 90以上 (22例) 51.8%
麻酔の痛みが自分の思っていた50%以下の人では、痛みが軽い人の方が、術後の痛みがも軽度ですが、麻酔の痛みが50%以上になると、麻酔の痛みにかかわらず術後の痛みはほぼ一定になっています。したがって、麻酔の痛みが強くても術後の痛みとすぐに結びつくものではないと考えていいのではないかと思います。
以上のことから、術中の痛みと術後の痛みは関連があり、麻酔の痛みと術後の痛みとはすぐに結びつかないことを考えると、麻酔の時の痛みに弱いから、痛がりだからといってそれが術後の痛みに関係してくるのではなく、術中の操作など余計な痛み感じさせずに手術をすることが術後の疼痛を和らげる一つの方法と考えます。また麻酔の痛みに関しては、術後出血をきたして、再度麻酔をして止血する際、最初の痔核根治術を施行したときより同じことをしているのですが麻酔の痛みが強く感じることがあります。これは最初の手術はある程度覚悟をして麻酔・手術を受けているのに対して、止血術は突然で、予期していなかったことです。これだけのことでも痛みの感じ方がちがってくるものだと思っています。このことからも、手術をうける患者さんに十分説明し、納得してもらえれば手術に対する不安が取り除け、術前からある程度、術後の疼痛をとってあげれるといっても言い過ぎではないと思います。