渡邉医院

肛門の診察Part4 肛門鏡での診察

 今回は、肛門鏡での診察についてお話したいと思います。
 肛門鏡と言ってもいろんなタイプの肛門鏡があります。大きく二つに分けることができます。一つは、ストランゲ型、または二枚貝型とも言いますが。肛門を閉じたり広げたりして肛門を観察する肛門鏡と、もう一つは、筒形の肛門鏡といって、閉じたり広げたりせずに、肛門を観察する肛門鏡です。渡邉医院ではこのいずれの肛門鏡も使って肛門を観察しています。
 肛門鏡によって、肛門の中の見え方が違ってきます。肛門の病気によって、また、何をしたいかでも肛門鏡を使い分けています。
 例えばストランゲ型肛門鏡は、肛門鏡を肛門内に挿入して広げることによって肛門の中を観察します。したがって、肛門全体は観察できませんが、ある一方向に関して、直腸粘膜から歯状線、そして肛門上皮、肛門縁と縦方向でどのようになっているかを観察することができます。例えば、裂肛の場合、裂肛だけなのか、裂肛が原因での肛門ポリープの有無、皮垂の有無など、縦方向で裂肛全体を観察することができます。また痔瘻の場合は、原発口の確認ができます。内痔核の場合は、粘膜部分の腫脹が強いのか、また肛門上皮の部分の外痔核部分の腫脹はどうかなど、内痔核の場合も縦方向の内痔核の状態を観察できます。しかし、内痔核が大きい場合や、外痔核部分の腫脹が大きい場合は、ストランゲ型肛門鏡を広げた際にそこに入り込んでしまって、全体像が見えなくなってしまうことがあります。また内痔核が大きいと、同様に内痔核全体を観察することができないこともあります。こういった場合は筒形の肛門鏡で観察します。
 このように、ストランゲ型肛門鏡は、肛門の縦方向の状態を観察するのに有効です。でも内痔核が大きかったり、肛門上皮の外痔核部分の腫脹が強い場合は十分に観察できないことがあります。
 さて次に筒形の肛門鏡ですが、肛門の縦方向の観察するというよりは、肛門全周を横方向にみるのに有効です。でも、筒形の肛門鏡でも肛門鏡の先を手首を使って上下左右に動かすことで見たい方向の肛門を観察することができます。例えば内痔核の場合は筒形の肛門鏡をまっすぐに挿入すると、内痔核のできやすい右前、右後ろ、左の三か所の内痔核をすべて観察できます。また手首を効かせて肛門鏡の先を動かすことで、それぞれの内痔核を一か所づつ観察することも可能です。また外痔核部分の腫脹が強くても筒形ではその腫脹を押さえて、内痔核部分をしっかり観察することもできます。ただ、筒形の肛門鏡の見える範囲は肛門鏡の口径によって決まります。口径の小さい肛門鏡ですと、やはり観察できる範囲が限定されます。できれば太い筒形肛門鏡を痛みが出ないようにゆっくり挿入して観察することが大事だと思います。
 筒形の肛門鏡での診察のコツですが、まずはゆっくり肛門鏡を挿入して、奥の方からゆっくり肛門鏡を抜きながら、内痔核の状態や肛門上皮の状態を観察していきます。ただ、内痔核の観察は、肛門鏡を挿入するだけでは十分に内痔核の状態を観察することはできません。挿入した後、ゆっくりと抜いていく際にしっかり観察することが大事です。また、ただ挿入して抜いてくるだけでなく、肛門鏡を抜いて観察する際に、便をする時のように、お腹に力を入れて、怒責しながら肛門鏡を抜きながら観察すると、内痔核の腫れ具合や、内痔核が脱出してくる内痔核か、そうでない内痔核かを診断することができます。
このように肛門鏡での観察は、1回だけではなく、もう一度挿入して患者さんに怒責してもらいながら抜きながら観察するなど、何回か観察していくことが大事だと思います。
 もう一つ肛門の診察で大事なことは、患者さんに便をする時のように尾の加に力を入れて、怒責してもらったあとの肛門の状態を診ることが大事です。渡邉医院では、初診の患者さんには、肛門の状態をしっかり診るために、問診、視診、触診の後に、約40ml程度の微温湯を浣腸して、トイレで入れた微温湯を力んで出してもらってから、もう一度診察します。このことで、怒責する前と後での肛門の状態をしっかり診ることができます。浣腸前は脱出していなかった内痔核が、浣腸後に診ると脱出していたり、怒責することで、外痔核部分の腫脹を確認できたりします。このようにさまざまな方法で肛門を観察することで、患者さんの持つ、肛門の病気の診断や病気の程度を十分に把握でき、次の治療へと進んでいくことができます。