渡邉医院

肛門の診察Part3  視診・触診

 さて、今回は指診、触診についてお話します。
 指で触って診察する。直接患者さんの身体を触っての診察になります。いきなり指を肛門に入れると、患者さんは、びっくりされますし、痛みを伴うことがあります。
 潤滑油となる軟膏をつけながら、そして肛門の緊張をとりながらゆっくりと指を肛門に挿入していくことが大事です。
 ただ肛門の診察をする際に、いきなり肛門に指を入れるわけではありません。肛門の周囲の状態はどうか、硬い部分や触ると痛い部分がないか。そういったことをまず確認します。
 肛門周囲膿瘍の場合ですが、肛門の表面に発赤や腫脹があると、視診でも診断できます。でも、膿瘍が肛門の奥の方の深い部分に広がっていく場合は、患者さんは肛門の痛みを訴えられますが、表面的には発赤や腫脹なの何の変化が無いことがあります。このような場合、肛門の周囲を押さえるように診察していくと、硬く触れる部分があったり、押さえることで患者さんが痛みを訴えられることがあります。また、ゆっくり指を肛門に挿入していくと、表面的にはわからなかった膿瘍を触ることができます。その時は膿瘍を硬く触れたり、硬いがブヨブヨした腫脹として触ることができ、その部分を押さえると患者さんは痛みを感じます。こういったことで、肛門周囲膿瘍の広がりを判断することができます。
 痔瘻の場合でも、肛門の周囲を注意深く触ると、瘻管の走行がわかります。膿のでる部分を痔瘻の二次口と言いますが、二次口から肛門の中に続く瘻管を触ることができます。まっすぐな瘻管なのか、曲がっているのかなどを確認することができます。
 さらに、肛門の周囲を触ることで、括約筋の硬さや厚さなどもある程度わかります。慢性の便秘で、いつも頑張っている患者さんの場合は、この括約筋が厚く硬い印象があります。
 このように、肛門の周囲を触診するだけでもいろいろなことがわかります。
 さて、表面の触診が終わったら、今度はゆっくり指を肛門に挿入していきます。勢いよくぐっと挿入すると痛みを伴います。ゆっくりと患者さんの痛みが出ないように挿入していきます。ただ、裂肛の場合は、排便時の痛みが原因で、肛門の内肛門括約筋の緊張が強くなっています。裂肛の場合は痛みをどうしても伴います。ただ、肛門に指を挿入することで、ある程度、内肛門括約筋の緊張がとれるので、痛みがありますが、ゆっくりゆっくり指を挿入することで、裂肛による痛みを緩和することができます。言ってみれば柔軟体操のような感じです。このように裂肛の患者さんは、内肛門括約筋の緊張が強いため、肛門のしまりが強く感じます。またある程度慢性の裂肛になると、裂肛を硬く指で感じることもできます。
 痔瘻の場合は、痔瘻の原因となる原発口を、硬さや、へこみで指で感じることができます。
 ところで、肛門の病気で一番多い内痔核ですが、初期の内痔核はなかなか触診だけではわからないことが多いです。第Ⅱ度、第Ⅲ度の内痔核になりますと、内痔核を指で隆起した塊として感じることができることがあります。ただ内痔核は触診だけでは十分に診察することができません。肛門鏡での観察や、怒責診といって、排便するときのように、グッと頑張ってもらった後の肛門の状態などを見ていく必要があります。
 後は、私の指では、肛門の出口から約10cm奥までとどくようで、届く範囲に、直腸癌やポリープがないかなどもわかります。直腸癌の約70%大抵が私の指が届く範囲の直腸にできます。また指を肛門から抜いた時に、指に血が付着していないか?付着していたらどんな性状の血がついているかなども診断の助けになります。
 また、直腸は通常便が残っていてはいけない場所です。直腸に便が残っているということは、排便の状態が悪いということです。直腸に指を入れたとき、硬い便が残っている場合は、慢性の便秘があるのではないかと推測できます。また直腸に便が詰まっているだけでも肛門に強い痛みが出ることもあります。直腸に硬い便が」詰まっている状態では、摘便といって、指で便を出すこともあります。
 このように、触診ではいろんな病気やその状態を知ることができます。
 次回はなかなか触診では診断がしにくい内痔核の診断をどうするのか?肛門の診察に使う肛門鏡での診察についてお話します。