今回は、視診についてお話しします。
肛門の状態を診る時、いろんなことが見えてきます。
まずは、肛門にできる皮膚のシワです。皮垂、スキンタグといいます。
皮垂はいろんな肛門の病気によって二次的にできる皮膚のシワです。内痔核が原因であったり、外痔核や血栓性外痔核の血栓が吸収された後にできたり。また裂肛が原因でもできてきます。
ここで、少し皮垂についてお話しします。皮垂の定義及び原因は、血栓性外痔核や嵌頓痔核が保存的治療によって治癒した後や、痔核手術後の治癒過程で発生した線維組織の増殖であったり、あるいは繰り返しおこる肛門皮膚の炎症などで肛門縁の皮膚に結合織の増殖をともなう繊維性のシワとされています。分類ではGoligherは皮垂を特発性と二次性とにわけ、特発性は明らかな原因のないものであり、二次性は出産、内外痔核・裂肛・などに関連しておこるものとしています。また、病理学的特徴では、肉眼所見では、外痔核領域にみられる肛門皮膚の線維性肥厚であり、組織所見では肛門皮膚の上皮の肥厚および上皮下の間質にみられる強い線維化を特徴とするとしています。
さて皮垂のある部位で、その奥に隠されている肛門の病気を推測することが出来ます。
例えば、皮垂が、内痔核ができやすい肛門の右前、右後ろ、左にあれば、今現在、皮垂の奥に内痔核があったり、以前、内痔核があったことをあらわします。また皮垂が裂肛のできやすい、肛門の前後にあれば、今現在裂肛があるか、以前裂肛になったことがあることを意味します。このように皮垂の部位によって、今ある肛門の病気や以前なったことのある病気を推測することが出来ます。
次に、視診で明らかにわかるものに、血栓性外痔核、陥頓痔核、肛門周囲膿瘍、そして肛囲皮膚炎などがあります。また肛門にできた尖圭コンジロームや疣贅、粉瘤なども視診でわかります。
血栓性外痔核は肛門の外側に血栓(血豆)が詰まって腫れて痛い病気です。血栓性外痔核のほとんどは、視診でわかりますが、肛門の少し中の肛門上皮の部分に血栓が詰まるタイプの血栓性外痔核もあり、この場合は視診だけでは解りません。
内痔核だけでは、視診だけでは解りませんが、陥頓痔核は、排便時に脱出してくる内痔核に血栓が詰まって外に出たままになっている状態の内痔核です。これも血栓が詰まって脱出したままになっている状態の内痔核を視診でわかります。また強い痛みも伴います。
肛門周囲膿瘍は、血栓性外痔核と異なり、肛門が腫れあがり発赤や腫脹を認めます。肛門周囲膿瘍も視診でわかります。ただ、肛門周囲膿瘍の中には、肛門の表面に膿瘍が広がるタイプでなく、肛門の奥の方の深い部分に広がるタイプの肛門周囲膿瘍があります。この場合は、痛みは強いのですが、視診では明らかな腫脹は認めません。この場合は指診が重要な診断方法になります。
この様に、問診と視診でずいぶん患者さんの持っている肛門の病気を絞り込んでいくことが出来ます。次回は、指診についてお話ししたいと思います。