肛門の病気を治す際に一番大切なことは、患者さんの病気を正確に診断する事です。しっかり診断をつけることで、次の治療へと進むことができます。
さて、肛門の病気を診断は、患者さんの訴えを聞く問診、肛門の状態を目でみる視診、そして指で肛門の状態を見る指診の三つが大切です。そして肛門や直腸の一部を観察する際に肛門鏡を使います。いずれも大切な診察です。今回は、その中でまずは初めて患者さんとあって、行う問診についてお話ししたいと思います。
問診では、患者さんが今一番気になる事、心配なことを聞いて、その患者さんの訴える症状から病気を推察していく大切な診察です。肛門の病気での訴えで多いのが、出血や痛みです。
1)出血について
出血では、まずは出血の状態がどのようなものかを聞きます。例えば、排便時に痛みなく出血するのか、痛みが伴っての出血か。また、出血の仕方が拭いた時に着く程度の出血なのか、またはポタポタ落ちるような出血なのか。出血が下痢状に頻回に出血するのか。下着に血が付いている。などなど出血だけでもいろんな状態があります。
排便時に痛くなく出血する場合は、内痔核(いぼ痔)のことが多いです。出血の程度はさまざまで、排便後拭いた時に血が付いたり、ポタポタ血が落ちたり、場合によってはシャーっと音がして出血したりします。でも痛みは伴いません。
これに対して排便時に痛みが伴う場合は、裂肛(切れ痔)のことが多いです。出血に関しては、これも傷のつき具合でいろいろな程度がありますが、裂肛の場合は、痛みが伴います。
また、下着に血が付いている場合は、血栓性外痔核が破けて出血したり、痔瘻などが原因で、痔瘻では出血と膿が下着についていることがあります。また内痔核が脱出したままになっている場合も、出血や粘液で下着が汚れる場合があります。
さらに、肛門に皮膚炎があって、これが原因で下着に血が付くこともあります。
出血で、下痢状の出血が頻回に出たり、血の塊が頻回に出る時は、直腸や大腸の病気で出血している可能性もあります。この場合は、大腸内視鏡検査など、大腸の検査が必要だと思います。
出血が今回が初めてなのか、以前からあって、出血が頻回になったり、出血の量が増えてきたのかも治療の選択に重要です。
2)痛みについて。
痛みでは、排便時に痛みがあったり、排便後に痛みがしばらく持続する場合は裂肛のことが多いです。
排便に関係なく常に痛みがある場合は、血栓性外痔核や肛門周囲膿瘍の可能性が高いです。また内痔核に血栓が詰まって脱出したままになった状態になった陥頓痔核などがあります。血栓性外痔核は血栓が詰まって腫れて痛むのですが、時間と共に腫れが引き、痛みは徐々に軽減してきます。これに対して肛門周囲膿瘍は、炎症が広がり膿が広がっていくので、痛みはどんどん強くなっていきます。
陥頓痔核では、痛みが出る前に、痛みなく排便時に内痔核が脱出して押し込むなどの内痔核の症状があり、そこに血栓が詰まって、痛くなります。
この様に、痛みの状態、痛みの経過でも肛門の病気が推察できます。
3)その他の症状
その他に、内痔核では、排便後に便が残ったような違和感があり、頑張りたくなったり、肛門に痛みはないが、何か挟まったような違和感があるなどの症状がでます。
また痔瘻では、肛門から膿が出る、下着に膿が付いているなどの症状が出ます。
肛門の皮膚炎では肛門が痒くなる。いつもジクジクした感じ痔がするなどの不快感があります。
この様に、患者さんの症状を聞くだけでもある程度の肛門の病気が診断され、病気を絞ることが出来ます。
また、これまでに肛門の病気になったことがあるか?また、肛門の手術をしたことがあるかなども、治療に関して大切な点だと思います。
最後になりますが、今一番気になる症状をしっかり医師に伝えることが大事だと思います。
次回は視診についてお話しします。