渡邉医院

内痔核に対して輪ゴム結紮法は万能な治療方法か?

輪ゴム結紮法はどんな内痔核(いぼ痔)でも治すことができる万能の治療方法でしょうか?
その答えは「違う!」です。
輪ゴム結紮法による治療は、万能ではありません。適応を間違えて輪ゴム結紮法を行うと、内痔核が治らないばかりか、輪ゴムをかけた外側の部分が腫れあがり、痛みが強くなったり、輪ゴムが脱落した後に潰瘍を形成して、そこが裂肛(切れ痔)様になって、排便時の痛みがあったり、その痛みが原因で、肛門の緊張がつよくなり、慢性の裂肛となり、裂肛に対しての手術等が必要になってきます。
 輪ゴム結紮法の適応となる内痔核は限定されています。治療しなければならない内痔核が輪ゴム結紮による治療が最適なのかをしっかり診断しなければなりません。
 まず、輪ゴム結紮法の適応となる肛門の病気は内痔核です。
 肛門の外側から約2~3㎝ほど皮膚の部分があります。この部分を肛門上皮と言います。その奥が直腸です。内痔核はこの約2~3㎝奥の直腸になった部分にできます。この内痔核の程度は四段階に分かれています。
 まずは、排便時に出血したり違和感はあるものの、排便時に内痔核が脱出してこない(出てこない)程度の内痔核を第Ⅰ度の内痔核です。
 次に排便時に脱出してくるが、自然に戻る程度の内痔核を第Ⅱ度の内痔核といいます。
 さらに悪化すると、排便時に脱出して、自然には戻らず押し込まなければならない程度の内痔核を第Ⅲ度の内痔核。
 一番具合が悪いのが第Ⅳ度の内痔核で、常に内痔核が脱出していて押し込むことができない程度の内痔核です。
 内痔核だけですと、この間痛みはありません。内痔核以外のことが加わると痛みが出てきます。例えば裂肛(切れ痔)が合併したり、血栓(血豆)が詰まったりすると痛みが出てきます。
 輪ゴム結紮の適応は第Ⅱ度以上の内痔核になります。排便時に内痔核が外に出てくるという症状があって初めて輪ゴム結紮の適応になります。でも先ほどお話したように、第Ⅱ度以上の内痔核すべてが輪ゴム結紮で治るわけではありません。
 内痔核と言っても様々な性状を持っています。直腸の粘膜の部分だけにできる内痔核。肛門上皮の部分にできる痔核を外痔核と言いますが、内痔核だけでなく、肛門上皮の部分の腫脹がある外痔核を伴った内痔核。その外痔核部分が少ないものもあれば、外痔核部分が大きい内痔核もあります。
 ただただ第Ⅱ度以上の内痔核といっても患者さん一人一人、内痔核の性状は全く違います。
 輪ゴム結紮法の適応となるのは、粘膜の部分主張が主な内痔核です。肛門上皮の部分、外痔核部分が多い内痔核に対しては、適応となりません。もし、こういった内痔核に輪ゴム結紮法を行うと、肛門上皮の部分に輪ゴムがかかり、輪ゴムをかけた瞬間から強い痛みが出てきます。それでも痛みを我慢して治る場合もありますが、場合によっては、輪ゴムをかけた外側が腫れあがったり、輪ゴムが脱落(取れる)した際に、肛門上皮に潰瘍ができ、深い裂肛(切れ痔)様になり、排便時の痛みが続き、そのことが原因で、肛門の緊張が強くなって、裂肛の手術を行わなければならなくなることもあります。
 ですから、輪ゴム結紮法を行う場合は、本当に患者さんの内痔核が輪ゴム結紮の適応となるかどうかをしっかりと診断し、判断しなければなりません。したがって、内痔核の状態、性状の的確に見極める診断が必要です。
 安易に輪ゴム結紮法を行うと様々なトラブルを招く可能性があります。また、輪ゴム結紮法も内痔核の根元に輪ゴムをかけるので、輪ゴムが脱落した際に、内痔核の根部の動脈からの出血がおき、出血を止める止血術が必要となる可能性もあります。
 輪ゴム結紮法の適応をしっかり見極め、適切に輪ゴム結紮法を行う必要があります。
 輪ゴム結紮法について紹介していますので、そちらも参考にしてください。