渡邉医院

当院におけるDay Surgery の検討(第53回日本大腸肛門病学会)

 今回は「当院におけるDay Surgeryの検討」についての発表内容を紹介します。
 Day Surgeryとは日帰り手術のことです。この発表は今から19年前の発表です。この時期は時代はDay Surgery、日帰り手術が始まりかけたころの発表です。
 現在、渡邉医院では基本は1泊2日以上の入院での手術を勧めています。患者さんの置かれた社会的な状況など、例えば小さなお子さんがいる、介護しなければならない方がいる。またご本人に障害があって、入院より自宅での生活が便利など、患者さんの状況にあわせて日帰り手術を行っています。
 ただ、痔核根治術、痔瘻根治術、裂肛根治術など、術後の出血や痛みなどを考えると、最低でも1泊2日の入院での治療が患者さん自身も楽だと考えています。事実、日帰り手術を行った患者さんへのアンケートの結果では、「1泊でも入院した方が、やっぱり安心だ。」という結果が多かったです。
 どうしても現状の社会状況をみると短期入院、もしくは日帰り手術を患者さんは望まれます。でもやはり手術後の出血や痛み、術後の管理などを考えると1泊以上の入院での加療が望ましいと考えています。

 抄録を紹介します。

 抄録

 当院におけるDay Surgery について、特に内痔核と痔瘻について検討したので報告する。
[対象]H81月〜H102月までに施行した痔核根治術は730例、うち外来手術266例(36.4%)、痔瘻根治術は176例、うち外来手術73例(41.5%)であり、これらについて入院手術例と比較検討した。またこの期間中に408名に術中術後の疼痛の程度、排便時痛の消失期間についてアンケートをとりこれを集計した。当院での外来手術後の管理は、術後3時間当院で観察後帰宅、以後術後3日間は連日通院、次は約7日目と10日目に受診、以後週1回の割合で通院加療している。
[結果]
 外来で痔核根治術を施行した266例中1個所施行したものは160例(60.2%)、2個所は97例(36.5%)、3個所は9例(3.3%)であり、入院ではそれぞれ104例(22.4%)、170例(36.6%)、190例(41%)であった。
 外来で痔瘻根治術を施行した73例中6時の痔瘻は43例(59%)であるのに対して入院では39例(37.9%)であった。術後の出血については外来での痔核根治術では、早期出血5例(1.9%)、晩期出血1例(0.4%)。入院ではそれぞれ3例(0.6%)、5例(1.1%)であった。早期出血はドレナージ創からの出血で、全例術後3時間以内であった。晩期出血は術後710日目であった。痔瘻根治術では、出血については早期出血のみで、外来、入院それぞれ3例(4.1%)、4例(3.9%)であった。再発は外来手術で1例認めただけだった。
 当院から患者自宅までの距離について検討すると、内痔核では2個所以内では車で約30分以内が全体の83.1%を占め、3個所の場合は全例が約10分以内であった。痔瘻に関しても約30分以内が全体の90.4%を占めた。ただ内痔核1個所と痔瘻に関しては、1時間以上の場所でも外来手術を施行した症例があるが、いずれも交通の便がいい場所に集中していた。
 最後にアンケートの集計結果は、術前自分の考えていた痛みを100%として実際の痛みを相対的に%で答えてもらったところ、麻酔、術中、術後の痛みの平均はそれぞれ48.9%、31.5%、44.3%であった。また排便時痛の消失期間の平均は4.9日で、術後10日目までで全体の98.9%が痛みが軽快していた。
[まとめ]1)早期出血は全例3時間以内であり、術後3時間は病院での観察が必要である。2)患者自宅までの距離は30分以内がよいが、2個所までなら1時間以上でも可能と考える。3)麻酔・術中・術後の痛みや、術後排便時痛の消失期間などを適切に患者に伝え、手術についての過度の不安をとる必要がある。術後の創部の処置が、患者本人だけで簡単にできるよう工夫が必要である。以上のことをもとに、さらにDay Surgery の範囲を広げていけると考える。