渡邉医院

内痔核に対して結紮切除術(LE)施行後の疼痛に関しての、短期入院と長期入院とでの比較検討較検討。(第59回日本大腸肛門病学会)

 内痔核に対して結紮切除術を施行する際に、術後の出血とともに、術後の疼痛管理が重要になってきます。患者さんにとって術後の出血や痛みは手術をうける際の不安の原因にもなります。また日帰り手術を行う際には、医師の目の届かないところでの術後管理が必要になってきます。このような状況のなか、入院での手術が適切なのか、日帰り手術が可能なのかについての判断が重要となってきます。、今回紹介する発表は、この判断の一つの目安として術後の疼痛に着目して、結紮切除術(LE)施行後の疼痛について短期入院と長期入院との間で、消炎鎮痛剤の内服状況や患者アンケートを比較することで検討しました。

発表内容

 内痔核に対して結紮切除術を施行する際に、術後の出血とともに、術後の疼痛管理が重要です。患者側の立場でもこれらのことは手術をうける際や術後の不安の原因にもなります。また日帰り手術が行われる様になり、医師の目の届かないところでの術後管理が必要になってきました。このような状況のなか、入院での手術が適切なのか、日帰り手術が可能なのかについての判断が必要となってきます。そこで、今回我々は、この判断の一つの目安として術後の疼痛に着目して、結紮切除術(LE)施行後の疼痛について短期入院と長期入院との間で、消炎鎮痛剤の内服状況や患者アンケートを比較することで検討しました。
 
対象は、平成155月から平成163月までにLEを施行した101例、男性49例、女性52例、平均年令54.2才で、短期入院は6日間以内、長期入院は7日間以上としました。
 
方法は1)短期入院と長期入院との間で、内痔核の切除個数で治癒までに投与した消炎鎮痛剤の総投与数を比較、2)切除個数間で治癒までに投与した消炎鎮痛剤の総投与数を短期入院と長期入院とでそれぞれ比較、3)患者アンケートで、術後疼痛、排便時の疼痛、排便時痛の消失期間について切除個数間で比較しました。アンケートは最大の痛みを100%として感じた痛みを%で回答していただきました。
 
まず消炎鎮痛剤の総投与数の比較ですが、1箇所、2箇所では有意差は認めませんでしたが、3箇所以上切除で有意に短期入院での消炎鎮痛剤の投与数が多かった。
 
短期入院において、切除個数間で比較すると、切除個数が増えるにしたがって投与数は増え、1箇所切除と比較して、3箇所切除で有意に投与数が多かった。
 
長期入院においても短期入院と同じ傾向があり、1箇所切除と比較して、3箇所以上切除で有意に投与数が多かった。
 消炎鎮痛剤の総投与数では、切除個数が増えると消炎鎮痛剤の投与数が増える傾向にあり、1箇所切除と比較して、3箇所切除で有意に投与数が多かった。また短期入院と長期入院との比較では、3箇所以上切除で有意に短期入院で投与数が多かった。このことから、3箇所以上切除が必要な場合は特に十分に疼痛を緩和する対策が必要であると考えます。
 
治癒までの期間については、短期入院と長期入院では有意差は認めませんでした。切除個数では、切除個数が増えるほど治癒までの期間が長い傾向があり、1箇所切除と比較して3箇所以上切除で有意に治癒までの期間が長かった。
 
治癒までの期間を短期入院と長期入院との間で切除個数で比較すると、短期入院の2箇所切除を除いては、切除個数が増えるにしたがって治癒までの期間が長くなる傾向が有るものの、短期入院と長期入院との間で有意差は認めなかった。
 
治癒期間に関しては当初術後の疼痛が強いほど治癒までの期間が長いのではないか、また、3箇所以上切除では消炎鎮痛剤の投与数が多い短期入院の方が長期入院より、治癒までの期間が長いのではないかと予想していましたが。切除個数に関しては、切除個数が増えるほど治癒までの期間が長い傾向はあり、1箇所切除と比較して、3箇所以上切除で有意に治癒までの期間が長く予想通りでしたが、3箇所以上切除で短期入院と長期入院との間には、治癒までの期間に有意差は認めませんでした。このことは短期入院では疼痛に対しての不安もあり、疼痛以外にもこの不安を取り除くために消炎鎮痛剤の量が増え、このことが逆に疼痛を十分に取り除く事ができ、その結果、治癒までの期間に有意差がでなかったのではないかと考えています。
 
アンケートの結果ですが、は、術後の疼痛に関しては、切除個数が増えると痛みが強い傾向にあり、1箇所切除と比較して、3箇所以上切除で有意に痛みが強かった。
 
排便時の疼痛に関しても同様に、切除個数が増えると痛みが強くなる傾向があり、1箇所切除と比較して、3箇所以上切除で有意に痛みが強かった。
 
排便時痛の消失期間は、切除個数が増えるにつれて長くなる傾向はありますが、統計学的には有意差を認めませんでした。
 
アンケートの結果から、術後の疼痛や排便時痛は、切除個数が増えるほど痛みが強くなる傾向があり、1箇所切除と比較して、3箇所以上切除で有意に痛みが強く、排便時痛の消失期間には有意差は認めませんでした。このことから術後1週間の痛みを、特に3箇所以上切除が必要とする場合は、しっかり緩和する必要があると考えます。
 
以上より、長期入院では術後の手術の痛みが軽減してからの退院であることや、入院中は術後の経過に関しての正しい情報が直ぐに得ることができ、これが安心につながるのに対して、短期入院では術後の疼痛がまだある時点での退院になり、退院後は術後の経過に関する情報が直ぐに得ることができず、不安につながる。このことも消炎鎮痛剤の投与数の差につながった一因と考えています。このことからも、短期入院の場合は退院後も入院での加療と同じような環境を提供する必要があると考えます。  
 そこで、3箇所以上切除の場合は、可能であれば1週間程度の入院加療が、術後の疼痛や不安を取り除く意味で、患者にとって有益であると考えます。また日帰り手術や短期入院の場合には、特に3箇所以上切除の場合、術後の疼痛や不安を十分に取り除き入院での加療と同じような環境を提供する必要があると思います。また術後の疼痛管理については、先取り鎮痛などで早めに十分な鎮痛を行い、消炎鎮痛剤に関しては、副作用については十分注意が必要ですが、疼痛に対しては我慢せず、しかりと内服してもらうよう指導していくことも重要だと考えます。

抄録を紹介します。

抄録

内痔核に対して結紮切除術(LE)施行後の疼痛を、短期入院と長期入院とで比較検討した。
【対象】H155月〜H163月までにLEを施行した101例(男性49例、女性52例、平均年令54.2才)を対象とし、短期入院は6日間以内(31例)、長期入院は7日間以上(70例)とした。
【方法】①内痔核の切除個数(1箇所、2箇所、3箇所以上)で治癒までの消炎鎮痛剤の総投与数を短期入院と長期入院とで比較。また、切除個数間で治癒までの消炎鎮痛剤の総投与数を比較。
なお、治癒期間は診療終了までの期間とし、短期、長期入院において各群間で治癒期間に有意差は認めなかった。②患者アンケートで術後疼痛、排便時痛、排便時痛の消失期間について切除個数間で比較。(最大の疼痛を100%とし、%で回答。)【結果】消炎鎮痛剤の総投与量は、短期入院では、1箇所2箇所3箇所切除の順に27.7±9.8錠、28.3±12.0錠、37.2±6.9錠。長期入院では23.1±8.5錠、27.4±14.5錠、29.3±9.5錠であり、治癒までの消炎鎮痛剤の総投与数は3箇所以上切除群で有意に短期入院で多かった。(p=0.0079)。また、消炎鎮痛剤の総投与数は、1箇所切除群と3箇所切除群との間に有意差を認め、3箇所で多かった。②患者アンケートでは、術後疼痛は1箇所2箇所3箇所切除の順に32.8±28.7%、44.3±25.9%、53.3±28.0%。排便時痛は32.8±18.1%、46.4±27.1%、55.5±30.9%。排便時痛の消失期間は4.8±3.6日、5.4±3.2日、6.0±3.0日であり、術後疼痛は1箇所切除群と3箇所切除群で有意差を認め(p=0.0132)、3箇所で痛みが強く、排便時痛も1箇所切除群と3箇所切除群間に有意差を認め(p=0.0054)、3箇所で痛みが強かった。排便時痛の消失期間は各群間に有意差はなかった。
【まとめ】以上より消炎鎮痛剤の総投与数やアンケート結果から、12箇所切除の場合は、術後疼痛は比較的軽度であり、短期入院や日帰り手術も可能と考える。一方、3箇所以上切除が必要な症例では、術後疼痛を考えると、7日間程度の入院治療が患者にとって有益と思われ、短期入院で行う場合には十分な疼痛緩和が必要であると考える。