渡邉医院

ジオンによる四段階注射法による痔核硬化療法(ALTA療法)の副作用について

 ジオンによる四段階注射法による痔核硬化療法(ALTA療法)という治療方法がでて、内痔核の治療方法は劇的に変わりました。
 今まで手術が必要だった内痔核も、内痔核の性状によってはALTA療法でも治すことができるようになりました。痔核根治術という方法で内痔核を手術で治す場合はどうしても傷ができます。傷の痛みや排便時に傷を擦るときの痛み。そしてどうしても術後の出血などを起こすことがあります。ALTA療法は手術と違い、傷もできず、痛みなく治すことができます。
 でも、すべての内痔核がこのALTA療法で治るわけではありません。オールマイティな万能な痔核根治術と違い、ALTA療法で治療できる内痔核は限定されます。適応を間違えてALTA療法を行うことで、内痔核が治らないばかりでなく、痛みなどの症状がでることがあります。ALTA療法を行うには、しっかりとした内痔核の診断と適応の有無を判断する必要があります。適応を見極め、適切にALTA療法を行うことで、とても楽に内痔核を治していくことができます。
 ただ、適切にALTA療法を行っていても、やはり副作用はでます。今回は、このALTA療法の副作用についてお話します。
 ALTA療法の多い副作用は、血圧低下、除脈、発熱です。
 まずは血圧低下ですが、渡邉医院では現在のところ1.3%の患者さんに血圧低下を認めています。
血圧低下が起きる最も多いのがALTA療法を行っている最中で14例です。ALTA療法を終わった直後にも4例の方が血圧低下を起こしています。ALTA療法が終わって病室に戻られて安静にしている時にも3例の方が血圧低下を起こしています。また、ALTA療法後にトイレに行かれた時にも6人の方が血圧低下を起こしています。ただ、2時間以降に血圧低下を起こした方はいません。次は除脈、脈拍が遅くなる副作用です。
除脈は1.0%の患者さんに起きています。除脈も血圧低下と同じようにALTA療法を行っているときに起きるのが最も多く14例です。また、ALTA療法が終わってトイレに行かれる時にも5人のかたが静脈になっています。除脈も血圧低下と同じように、2時間以降は起きていません。

このように、ALTA療法を行う時に、血圧低下や除脈が起きることがあります。ただ、いずれの副作用もALTA療法特有の副作用とは考えていません。
 肛門の診察をする際に、指で肛門や直腸を触診している時や、肛門鏡を肛門に挿入して診察しているときにも、血圧低下や除脈を起こすことがあります。
 このように血圧低下や除脈は、直腸を刺激することによる神経の反射によっておきるのだと思います。
 渡邉医院ではこのようなALTA療法を行うこ時にとっている対策としては、
①血圧低下や除脈が起きたときに血圧をあげる薬剤や除脈を治す薬剤をすぐに投与できるように血管確保といって点滴をしています。ただ、これまで、血圧低下や除脈を起こしても薬剤を投与しなければならないようなことはありませんでした。
②血圧低下や除脈がすぐにわかるように、自動血圧計やパルオキシメーターを装着して、常時脈拍数や血圧を観察しています。
③副作用が起きたときにすぐに対応できるように、複数のスタッフでALTA療法を行っています。
④ALTA療法が終わった後は、車椅子で病室に戻ってもらいます。また、血圧低下や除脈が起きている2時間までは1回の病室で安静にしていただき、点滴も2時間は行っています。
⑤トイレに行く際は看護職員と一緒に行っていただいています。
⑥ALTA療法施行後、3時間たって医師の診察をうけてから自分の病室に戻ってもらっています。
このような対応を渡邉医院ではしています。次に発熱です。
渡邉医院では4.4%の人が38度以上の発熱をしています。
発熱の時期ですが、ALTA療法を行った次の日と、10日目に多いです。特に10日目に発熱することが多いです。ALTA療法を行ってすぐに熱がでると、直ぐに「これはALTA療法のための発熱だ。」と思ってもらえますが、10日ごろに発熱すると、「どうしたんだろう?何の熱だろう?」と思われると思います。ALTA療法を行って、風もひいていない、のども痛くないのに、昨日までなんともなかったのに急に38度以上の熱が出た場合は、まずはALTA療法の影響と考えてください。なにもしなくても1~2日で熱は下がりますが、原因がわかっていれば、熱を下げた方が楽なので、解熱剤を内服してもらっています。
 このように一過性の発熱は問題ないのですが、なかなか熱が下がらない持続性の発熱の場合は膿瘍の形成なども考えられますので、診察をする必要があります。
 ほかにもALTA療法をおこなった部分の潰瘍形成などもありますが、重篤な副作用はありません。保存的に治療することで、治っていきます。
 でもこのような副作用があることを知っている、知らないでは全然違います。ALTA療法を受けられた後、なにか具合の悪いこと、心配なことがあればすぐに医師に相談することが大事です。
 ALTA療法は痛みがなく、楽に治すことができます。でも、ALTA療法による副作用もあります。
内痔核の診断をしっかり行い、ALTA療法で治る内痔核がどうかを見極めることがまずは一番大切です。そして正く四段階注射法でジオンを内痔核に注射していくこと。そして副作用が出た場合には、適切に対応していくことがとても大事になります。