皆さんこんにちは。渡邉医院の渡邉です。12月に入って寒い日が続きますね。
今日、久しぶりに外に出ると、そこはもう冬の景色。でも新鮮な空気を胸いっぱい吸い込んで、リフレッシュしました。
というのも、自家血幹移植をして間がないので、結構気を付けていたのですが、11月25日に39℃の熱発。診察を受けると新型コロナウイルスに感染していました。とてもショックでした。
移植間もないので、重症化しないかと思いながら、自宅の部屋に篭り、隔離状態で療養しました。熱は3日間程度で下がりましたが、咳と鼻水が続くため、まったく部屋を出ずに過ごしました。たまたま部屋の隣にもトイレがあったので、(一家に2か所のトイレが必要と考えているので。)妻との同線は交わることなく、今日(発症後12日間)まで全く妻の顔を見ることなく過ごしました。
悪性リンパ腫の治療の時と比べて比較できないほどベッド上での療養になりました。今日外に出てみると、体力は激減していました。ゼロもしくはマイナスからのスタートです。チョット気合を入れていかなければと思っています。
さて、今日は「便秘フォーラム」にWEBで参加しました。その時の内容を少し紹介しようと思います。
今回のテーマは「便秘を紐解く」といった演題名での講演でした。
まず最初に話されたのが、「慢性便秘を治療する意義」です。慢性便秘の患者さんは「10年生存率を12%下げる。」ということでした。慢性便秘も機能性消化器疾患の一つですが、過敏性大腸炎などの他の機能性消化器疾患の中で、唯一生存率を下げるのが、慢性便秘ということでした。そして、生存率を上げるためにも慢性便秘の治療が必要であるということでした。
生存率を下げる理由の一つとして、慢性便秘の患者さんには、心筋梗塞、脳梗塞や静脈血栓などの心血管系のイベント、病気の発生頻度が上がるというものでした。
どうしても便秘の際、いきみが強くなります。強くいきむことで血圧が一気に30-70mmHg上昇するそうです。特に高齢者に多いとのことでした。この血圧の上昇、下降と似ているのがヒートショック、入浴時の血圧の上昇、下降です。したがって、慢性便秘の患者さんは、排便時に強くいきむ。このことによって血圧が上昇して心血管イベントが起きるというものです。
ただこれだけが理由ではなく、二つ目として便秘と腎臓病との関係です。
便秘は慢性腎臓病への移行を高くするということです。そして便秘がひどくなればなるほど、慢性腎臓病への移行率が高くなる、しいては末期慢性腎臓病に移行する率も上げるということでした。
この二つの理由の共通した原因が、便秘による尿毒素とのことでした。
私たちは卵や赤身肉などに含まれるコリンは、摂取すると腸内細菌によってトリメチルアミン(TMA)になります。TMAは腸管から吸収され肝臓でトリメチルアミンーN-オキシド(TMAO)になります。このTMAOの血中の濃度が高くなることで腎障害や心血管イベントが高まるそうです。
したがって、慢性便秘によってTMAの吸収が多くなりこのことによってTMAOの血中濃度が高くなる。したがって毒素貯留をなくすことが大事で、やはり慢性便秘の治療が必要となります。
このように、慢性便秘の治療は生命予後の改善を目指すのが目的となります。ただ、生命予後を改善と言われてもピンとこないと思います。もっと身近なところでは、慢性便秘の治療は日々の生産性の向上ということがあります。
慢性便秘の患者さんは、欠勤や労働生産性の低下など、仕事のパフォーマンスが下がったり、日々の活動性も低下するということです。これらを改善するためにも慢性便秘の治療が必要とのことでした。
さて、「便秘を治す。」とはどうゆうことか?演者によると「十分な量の便を完全に、そして迅速に排泄する。」ということです。これには便の性状を良くする必要がありますが、排便時の姿勢も大切ということです。以前にお話しした、「洋式便器と和式便器、どちらがいいの。」でもお話ししたように排便しやすい姿勢も大事になるとのことです。
最後に今回も胆汁酸の重要性をお話しされました。
具合よく便が出るには、「十分な水分」、「蠕動運動」、「便意」の三つを挙げられました。
この三つに胆汁酸は重要な役割を果たしています。胆汁酸の合成は加齢とともに減少します。このことも高齢者に便秘が多い理由の一つとなります。
便秘の人と、そうでない人の回腸末端を観察すると、やはり便秘の患者さんに胆汁が少ない傾向がありました。また便秘の方は胆汁酸の再吸収が多いのか、血中の胆汁酸濃度が高い傾向があるとのことでした。
こういったことから、慢性便秘に対して胆汁酸の再吸収を抑える下剤、エロビキシバットを使うことによって便秘を治療できる可能性があるとお話しされました。
今回の便秘フォーラムの内容はこんな感じでした。