渡邉医院

短鎖脂肪酸と腸内フローラ

 今回は、第31回教育セミナーの中で興味深く、そして面白かった便秘に関しての講演に関して前回に引き続いてお話ししたいと思います。

 今回は、前回お話しできなかった。「短鎖脂肪酸」と「胆汁酸」便秘に関してお話ししたいと思います。

 私たちの腸の中には、100兆個以上もの細菌が棲んでいるそうです。100兆個、なかなか想像できない数ですね。でもこれらの細菌が、私たち体全身の健康に深く関係しています。 私たちの腸内にはその100兆個の腸内細菌が菌種ごとに集まって群生する様子が、お花畑(フローラ)に例えられて、腸内フローラ(腸内細菌叢)と呼ばれています。

腸内フローラの状態をよくするためには、腸内にいる善玉菌を増やして悪玉菌を減らす必要があります。善玉菌と悪玉菌は常に腸内で勢力争いをしています。そして善玉菌を増やすのに役に立つのが「短鎖脂肪酸です」です。

 「短鎖脂肪酸」は腸内環境、便通、過敏性腸症候群など優れた効用をもたらすことが研究で分かってきたそうです。

 短鎖脂肪酸とは、腸内細菌が水溶性食物繊維を発行分解して作る、酪酸、プロピオン酸、酢酸などの有機酸のことです。特に酪酸は腸上皮細胞の最も重要なエネルギー源であり、抗炎症作用など優れた生理効果を発揮するそうです。
 短鎖脂肪酸は臭いや味、吸収性などから食べたり飲んだりして摂ることが困難物質です。
ですから、腸内細菌に短鎖脂肪酸を作ってもらう必要があります。ですから、その原料となる水溶性食物繊維をしっかり摂る必要があります。言っていれば、短鎖脂肪酸を創るために腸内細菌の餌になる水溶性食物繊維が必要になるということです。

 さて、生成された短鎖脂肪酸のほとんどは大腸粘膜組織から吸収されます。吸収された短鎖脂肪酸は、上皮細胞の増殖や粘液の分泌、水やミネラルの吸収のためのエネルギー源として利用されます。一部は血流に乗って全身に運ばれ、肝臓や筋肉、腎臓などの組織でエネルギー源や脂肪を合成する材料として利用されるそうです。

これ以外にも短鎖脂肪酸には、腸内を弱酸性の環境にすることで悪玉菌の増殖を抑制します。さらに大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進します。便秘などを解消してくれますね。また、腸の粘膜が病原体などの侵入を防ぐ腸管バリア機能を担います。短鎖脂肪酸は、特に酪酸やプロピオン酸は腸粘膜を維持してヒトの免疫反応を制御してくれます。

 このように、短鎖脂肪酸を増やすことは大腸の環境を良くして便秘なども解消してくれます。

 食物繊維としては日本人成人では10g/1000kcalが目安とされています。2000kcalですと1日20gが必要と言うことになります。食物繊維を摂るにはブルーベリーやキウイが良いそうで、ベリー系のフルーツが多く摂れるとのことです。食物戦としては海藻類、キノコ類、ベリー系の果物が良いということになります。

 さて、もう一つの胆汁酸についてお話しします。

 さて、便秘に対して下剤を処方します。下剤の種類には以下のようなものがあります。

良く使われ、皆さんが知っておられるのが、塩類下剤の酸化マグネシウムや、刺激性下剤のセンナやアロエ、ダイオウです。

 酸化マグネシウムは随分古い薬で、シーボルトが日本に持ち込んだとのことです。ただ、酸化マグネシウムだけでは十分に緩下剤としての作用を起こしません。酸化マグネシウムと胃酸との反応式をしまします。

 MgO+2HCl=MgCl2+H2O

と酸がなければ効果が減弱してしまいます。ですから胃切除後であったり、制酸薬を内服している方は酸化マグネシウムの効き目が減弱します。

 刺激性下剤はやはり内服し続けることによって習慣性になったり、センナを飲み続けると、大腸の粘膜に色素が沈着し、黒くなる大腸メラノーシスになることがあります。

 このセンナやアロエなどは、紀元前より使用されていたようです。アレキサンダー大王も便秘で使用していたそうです。

 最近、新しい下剤も出てきました。それは「グーフィス」という下剤です。

 胆汁酸トランスポーター阻害剤で、胆汁酸の再吸収にかかわるトランスポーターを阻害することで、大腸に流入する胆汁の両を増加させ、水分分泌とと大腸蠕動運動の促進の2つの作用で自然な排便を促すというものです。

 前回、「完全排泄」と「不完全排泄」と言うことをお話ししたともいます。このグーフィスと言う下剤は、「完全排泄」を目指す下剤です。 

 胆汁酸を直腸内に注入すると、直腸が動き始めるといったこともわかったそうです。

 このように、下剤には新しい作用の下剤が出てきています。やはりその中から自分にあった下剤を選び、治していく必要がありますね。