渡邉医院

抗がん剤「オンコビン」と便秘を考える

 私は現在、悪性リンパ腫に対して抗がん剤による化学療法5クール予定中4クール目を入院して行っています。4クール目もこれまで同様に順調に、強い副作用もなく進んでいます。今回の4クール目も週明けの月曜日にリツキサンの投与を行い終了となります。

 さて、抗がん剤投与で副作用といろいろ辛いことはあると思いますが、やはり便秘はその中でも上位を占めるのではないでしょうか?

 私はこれまでたまに出なくて硬い便が出ることはありますが、慢性の便秘ではありません。ですから慢性便秘の患者さんがどんなふうに辛いのかを身をもって体験したことはありません。ただ、今回抗がん剤投与、特にオンコビン(ビンクリスチン)の投与を受けているのですが、便は出てはいるのですがスッキリ出ないといった状況です。やはり便秘と言う副作用があるため、前もってマグミット(酸化マグネシウム)を処方していただき飲んではいるのですが、いつものような快便ではありません。

 感じとしては、食事を摂ると、まずは腸が張ってきます。パンパンになるような感じがします。そしてなんとなく便意を感じ始めます。便が出るのかなあと思ってトイレに行ってもすぐに出ません。気持ちとしては、「もうそこに来ているのなら、早く出てよ!」と言った感じです。しばらく待っていると便意が来て、ぐっと腹圧をかけてみても最初は出ない。またしばらく待ってを3回ぐらいした後、やっと出てきます。本当に「そこにいるなら早く出てきてよ!」と言った感じです。しかも便が硬いわけではありません。柔らかいけど出にくい。スッキリ出たわけではないので、またしばらく待っていては出す。そんな感じになっています。日頃渡邉医院に受診されている慢性便秘の患者さんもこんな感じなのでしょうか?そうであれば便は出ていても辛い。もっとスッキリ1回で出て欲しいと思います。

 さて私の場合は抗がん剤、オンコビンによる副作用による排便障害です。便は出ていますがこれはもう排便障害と診断していいと思います。現在マグミットで治療中といったところです。

 オンコビンがどうして便秘を引き起こすかです。

 オンコビンは「ツルニチニチソウ」と言う植物に含まれる成分から生成された抗がん剤です。

 オンコビンは自律神経に障害を起こします。自律神経は腸管の蠕動運動を支配する神経です。この自律神経が障害を受けることによって蠕動運動が悪くなり便秘になります。また蠕動運動が鈍くなることでガスも溜まってお腹も張ってきます。このことがさらに便秘を助長していきます。

 また抗がん剤投与で食欲がなくなり食事や水分の摂取量が少なくなってしまいます。このことも便秘の原因になります。

 またそもそも抗がん剤投与以前に、病気になったことへのストレス、入院することによっての環境の変化など精神的なストレスも便秘には大きく影響をしていると思います。

 さてここで今一度便秘に関しておさらいしてみたいと思います。

 慢性の便秘は大きく3つに分類されます。

 やはりいずれの慢性便秘に対しても、具合よく便が出るためにはこれまでもお話ししてきたように、便の中に程よく水分が含まれ、便の量を増やすために食物繊維を摂るそして大腸が具合よく動くようにする。この三つがそろうようにしなければなりません。このことに関してはこれまでのブログなどを参考にしていただければと思います。

 やはり、抗がん剤による便秘、これをすれば良くなるといった特効薬は在りません。屋はロ位日頃から便の調子を良くするように心がけたり、緩下剤を内服したりして、通常時の便秘を治し、排便の調整をしておくことがやはり大事になってきます。そして抗がん剤投与を受ける際はまずは酸化マグネシウムなど塩類下剤から初めて、それだけではどうしても出ない場合は大腸刺激性下剤、ラキソベロンなどを追加していくのがいいと思います。

 抗がん剤での治療。これだけでも大変です。それに加えて頑固な便秘が加わるとさらにしんどくなります。便秘に関してはしっかり緩下剤を内服してスッキリ出るようにしておきたいものです。 

 最後にオンコビンの投与を受けているものからアドバイスです。
 ①便はやはり柔らかい方がいい。緩下剤を処方してもらって少し柔らかめにして、そこまで来た便を楽に出す。
   ②便がしたいなあと思ったら、迷わずトイレに行く。トイレに行ってもすぐに出てこず、しばらくのんびり便座に座って   いる。
 ③少し出たから、もういいやと言わずに、もうしばらく便座に座って便意が出てこないか待ってみる。

 こんな感じで、入院して治療をしているので慌てること、時間を気にすることはありません。スッキリ便を出してしまいましょうね。