渡邉医院

2021年 渡邉医院手術統計ー2020年との比較も含めてー

 2022年の仕事始めは昨日の5日からでした。初日は思ったほどではありませんでしたが、新患の患者さんが多く、それでも130分頃まで外来がかかりました。今週は予定の手術はおこなわず、予定手術は来週火曜日の11日からです。手術がないので、気分的には楽です。でも手術が必要な患者さんも来られ、診療が始まるのを待たれていたのかなあと思います。
 さて、年末年始、落ち着いていた新型コロナウイルスの感染拡大でしたが、オミクロン株の影響もあるのか、5日から各地で急激に感染者が増えてきています。第5波までの状況とはかなり違ってきているとは思います。約80%の方がワクチンを2回接種されています。カクテル抗体療法や内服薬も承認され、医療機関でも処方できるようになってきました。これまでとは違い、未来に希望が見えてきています。もうひと頑張りかなあと思います。ここでもう一度初心に戻り、やはり私たち一人ひとりがこれまで通りに基本的な感染予防対策をこれからもしっかりと取り組んでいくことが大切だと思います。マスク、手洗い、うがい等、しっかり取り込んでいきましょう。
 また、基礎疾患のある患者さんは、これまで通りに定期的に診察を受け、体調を整えていくことも大切です。しっかりと、かかりつけの医師の診察は受けましょうね。

 さて、2020年、1年が終わりました。去年1年間の手術統計と手術の傾向を、去年同様にお話したいと思います。

手術総件数

 去年は、内痔核など基本的な肛門疾患に対しての手術件数は740件でした。男性は350件(47.3%)、女性は390件(52.7%)と、やや女性が多い傾向でした。2020年は男性が52%、女性が48%と男性が多く、2021年は女性がやや増えました。男女差はさほど大きくなく、この傾向は例年通りです。

疾患別手術件数と男女差

  疾患別の手術件数を男女でみてみると、

 男性では、内痔核166件(47.4%)、痔瘻63件(18.0%)、裂肛20件(5.7%)、血栓性外痔核3件(0.9%)、肛門周囲膿瘍85件(24.3%)、皮垂(スキンタグ)13件(3.7%)、直腸脱0件(0%)でした。

男性では、2020年と比較してみると、男性では各疾患においてあまり変化がなく、同じ程度でした。

 女性は、内痔核176件(45.1%)、痔瘻9件(2.3%)、裂肛40件(10.3%)、血栓性外痔核13件(3.3%)、肛門周囲膿瘍17件(4.4%)、皮垂(スキンタグ)127件(32.6%)、直腸脱8件(2.0%)でした。

 女性では、2020年と比較してみると、内痔核が2020年は41.5%であったのが、2021年では45.1%とやや増加傾向があります。また、直腸脱は2020年が4.5%であったのに対して、2021年は2.0%と減少しています。

 内痔核は男女ともほぼ同じ割合でした。痔瘻と肛門周囲膿瘍はやはり男性に多く、男性が痔瘻63件(18.0%)に対して女性は9件(2.3% )肛門周囲膿瘍も男性85件(24.3%)に対して女性17件(4.4%)でした。

裂肛に関しては、男性20件(5.7%)、女性40件(10.3%)で女性に多い傾向がありました。

 男女差に大きな違いが出たのが皮垂(スキンタグ)です。男性が13件(3.7%)に対して女性が127件(32.6%)と女性に多い傾向があります。
 また直腸脱の手術そのものが少ないのですが、男性は去年は0件(0%)に対して女性は8件(2.0%)でした。やはり直腸脱は高齢者の女性に多くみられます。

 血栓性外痔核に対しては、基本的にほとんどが保存的に治療しています。手術になった患者さんは血栓が大きかったり、痛みが強い患者さんに対して血栓摘出術を行っています。男性は3件(0.9%)、女性が13件(3.3%)でやや女性に多くみられました。妊娠中に血栓ができて痛みが強い患者さんに対して血栓摘出術を行うことも今年も数件ありました。

 2020年度と比較すると女性の内痔核がやや増加、直腸脱がやや減以外は特に大きな差はありませんでした。やはり毎年同じような件数が各疾患で手術されているようです。

 次に、疾患別にみてみたいと思います。

内痔核

  内痔核に対しての手術は痔核根治術、ジオンによる四段階注射法による痔核硬化療法(ALTA療法)、輪ゴム結紮法があります。

 男性では、総数166件中、痔核根治術44件(26.5%)、ALTA療法114件(68.7%)、輪ゴム結紮法8件(4.8%)であるのに対して女性では、総数176件中、痔核根治術109件(61.9%)、ALTA療法39件(22.2%)輪ゴム結紮法28件(15.9%)という結果でした。

 

 この傾向も例年通りで、痔核根治術は女性に多く、ALTA療法は男性に多い傾向にあります。また輪ゴム結紮法も女性に多い傾向にあります。これはやはり男性と女性の内痔核の性状の違いにあります。男性では静脈瘤型の内痔核が多く、ALTA療法の適応になる内痔核が多く、女性の場合は皮垂(スキンタグ)を伴った内痔核や肛門上皮部分の腫脹が多い内痔核、そして輪ゴム結紮が多いのは粘膜脱型の内痔核が多い傾向があるためだと思います。
 2020年と比較してみると、男性では痔核根治術は2020年で28.8%であったのに対して2021年は26.5%とさらに減少しています。これに対してALTA療法は2020年が63.8%であるのに対して、2021年は68.7%と増加しています。情勢の場合は、痔核根治術では2020年が67.1%であったのに対して、2021年は61.9%と情勢でもやや痔核根治術が減少傾向です。これに対してALTA療法では2020年が18.1%であったのに対して、2021年は22.2%と増加傾向にあります。

痔瘻

 痔瘻(72件)に関しては、男性63件(87.5%)、女性9件(12.5%)と男性に多く認めました。肛門周囲膿瘍も同様に102件中、男性は85件(83.3%)、女性は17例(16.7%)と男性に多い傾向があります。このことからも痔瘻や肛門周囲膿瘍はどちらかというと男性の病気と言えます。

裂肛・皮垂(スキンタグ)・直腸脱

 裂肛は60件のうち、男性が20件(33.3%)に対して女性40件(66.7%)、皮垂(スキンタグ)は140件のうち、男性13件(9.3%)に対して女性127件(90.7%)と圧倒的に女性に多かったです。これは、裂肛が女性に多いこと、そして手術になる内痔核が男性に比べて多きことと関連があると思います。内痔核が手術になる要因の一つに内痔核によってできる皮垂(スキンタグ)があり、女性の内痔核にはヒスイを伴う内痔核が多く、ジオンによるALTA療法の適応外になる患者さんが女性に多いことにも関連すると思います。また直腸脱は手術件数そのものが少ないですが、去年は男性の直腸脱の手術はなく、女性8件のみでした。いずれも高齢者の女性の方でした。このように裂肛、皮垂、直腸脱は例年通りに女性に多かったです。

血栓性外痔核

 血栓性外痔核は、基本的には手術をせずに消炎鎮痛剤の座薬や軟膏での保存的治療になります。血栓が大きかったり、痛みが強い場合には手術を行います。したがって、血栓性外痔核は16件、そのうち男性は3例(18.9%)、女性は13件(81.1%)と女性の方が多い傾向にあります。この理由として、妊娠中に血栓が詰まって痛みが強い方がいます。妊娠中はどうしてもお腹の中の赤ちゃんへの影響があり、消炎鎮痛剤の座薬を使いうことができません。ですから、痛みをとるために手術を選択することになります。ただ、局所麻酔での手術であることや、術後の出血の可能性が極めて少ないこと。又、血栓を取り除くことで、痛みはスッと楽になります。こういったこともあり、女性に多かったのだと思います。 

2021年も手術の傾向は例年通りでしたが、皮垂の切除件数が増えてきている傾向があります。やはり、肛門に何かできていることが、痛みや出血が無くても気になるのでしょう。

2021年の手術統計と傾向についてお話しました。毎年同じように、各疾患が分布しているようです。特にこの疾患が増えたといった傾向はみられませんでした。
今回の統計が、皆さんに何かお役にたてばいいなあと思います。