今回は、輪ゴム結紮法という内痔核に対して行う手術方法を紹介します。
輪ゴム結紮法は内痔核(いぼ痔)に対して行う治療方法です。
内痔核の根元に輪ゴムをかけて内痔核にいく血液の流れを断って、内痔核を腐らせて取り除く(壊死脱落)手術方法です。
肛門鏡を使って内痔核をよく観察しながら内痔核の根元に輪ゴムをかけていきます。麻酔をしなくても行うことができることが多く、入院ではなく外来での手術となります。肛門鏡を入れ、輪ゴムをかけるだけの手術です。輪ゴム1個だけかけただけではすぐに取れてしまっては困るので、通常1か所の内痔核に2個の輪ゴムを掛けます。それでもほんの数分で終わります。内痔核は痛みの感じない部分にできる病気なので、内痔核にうまく輪ゴムをかけると、痛みなく治療することができます。また、傷ができませんので、当日から普段通りの生活ができ、入浴も可能です。
ただ、輪ゴム結紮で治療可能かどうかの診断、適応を診間違ったり、適切に輪ゴムをかけなければ、内痔核が治らないばかりか、輪ゴムをかけた瞬間から強い痛みが出て、輪ゴムをかけた肛門の外側が腫れてしまうことがあります。
輪ゴム結紮法は内痔核を治す治療方法です。内痔核がどうかを診断する必要があります。
内痔核は肛門の出口から約2~3cm奥の粘膜の部分にできる静脈の瘤、静脈瘤です。この部分は粘膜ですので、痛みは感じません。内痔核の症状には、排便時に出血する。排便時に内痔核が肛門の外に出てくる(脱出する)。また肛門に違和感を感じるなどの症状があります。
内痔核の症状によって内痔核の病気の程度が、第1度から第4度の4つに分けられています。
第1度:排便時に出血する。なにか挟まったような違和感がある。
第2度:排便時に出血する。排便時に内痔核が肛門の外に出てくる(脱出)が自然に戻る。
第3度:排便時に出血する。排便時に内痔核が肛門の外に出てくる(脱出)が自然に戻らず、
指で押し込む。
第4度:常に内痔核が肛門の外に出ていて押し込むことができない。
の四段階に分けられています。ただ、内痔核だけですと、この間痛みはありません。
輪ゴム結紮法はこの内痔核の第2度以上の内痔核に対して行います。
ただ、すべての内痔核が輪ゴム結紮法の適応になりません。内痔核の性状で輪ゴム結紮法の適応が決まります。適応の条件としては、
1)輪ゴム結紮器のドラムといって輪ゴムをかける輪っかの中に内痔核が入る程度の大きさでなければできません。
2)内痔核は粘膜の部分にできますが、この粘膜の部分の脱出が主な内痔核が適応になります。
肛門上皮といって、肛門の出口から約2~3cmまでに皮膚の部分があります。この部分が腫れてくる肛門の病気を外痔核といいます。この肛門上皮の部分の腫れが強いタイプの内痔核は適応になりません。肛門上皮、皮膚の部分に輪ゴムがかかると、輪ゴムをかけた瞬間から強い痛みがでてきます。
また輪ゴムをかけた外側が腫れてしまうことがあります。
このように輪ゴム結紮で治すことができる内痔核は限定されます。輪ゴム結紮法は万能ではありません。
しっかり内痔核の性状を診断して、輪ゴム結紮法で痛みなく十分に治すことができるかどうか判断することが一番大切です。
また輪ゴム結紮法も内痔核の根元に輪ゴムをかけるので、内痔核が壊死脱落するときに、内痔核に流れる動脈から、動脈性の出血を起こして止血処置が必要な場合もあります。渡邉医院では今のところそういった出血はまだ経験していません。その理由の一つには内痔核の大きさがあるのかなとも考えています。ただ、そういった出血が起きた場合は必ず連絡してもらい、止血処置が必要かどうか診察する必要があります。
輪ゴム結紮法は適応をしっかり見極め、適切に輪ゴムを掛けることで脱出してくる内痔核を治すことができます。痛みもなく、通常の生活を送りながら治せます。こういった手術方法も内痔核の治療の一つにあります。
内痔核でお悩みの方は一度診察を受けられ、どういった方法で治すことができる内痔核かを診断して治療を進めていっていただければと思います。