渡邉医院

第119回近畿肛門疾患懇談会「ALTA療法」特にALTA併用療法の記載に関して

 今日は、WEBで第119回近畿肛門疾患懇談会が開催され、参加しました。

 今回の主題は「ALTA療法」です。

 ALTA療法とは、ジオンという痔核硬化剤を使って四段階注射法という方法でおこなう痔核硬化療法のことをいいます。

 内痔核に対しての治療法ですが、以前は痔核根治術という手術で治していた内痔核をジオンという痔核硬化剤を使って痔核硬化療法で治す方法です。ALTA療法のALTAは、硫酸アルミニウムタンニン水溶液の欧文一般名のAluminum Potassium Sulfate HydrateTannic AcidのAluminumuの「AL」とTannic Acidの「TA」を取ってALTAとしています。

 ALTA療法の一番の売りは、手術と違って傷をつけることなく、内痔核にALTAを局注することで手術と同様に、排便時に内痔核の脱出や出血が治るという治療方法です。ただ、全ての内痔核がこのALTA療法で治るわけではなく、しっかりと適応を診断しなければ治るばかりか悪くなることもあります。適応をしっかり診断することで、痛みなく治療ができ、患者さんにとってはとても有益な治療法です。適応を判断していく中で一番問題となるのが、外痔核部分の腫脹が強い内痔核に対してどうするかです。どうしても外痔核部分の腫脹が強いと、ALTA療法の効き目が悪く、再発する可能性が強く成ります。

 渡邉医院では、外痔核成分が多い内痔核に対しては痔核根治術を、そして内痔核成分が主体のALTA療法が有効な内痔核に対して、ALTA療法の最大の利点を生かしてALTA療法をしています。ただ、この外痔核成分を切除して内痔核部分にALTAを局注するというALTA併用療法がおこなわれてきています。その際に、その併用療法の定義が学会としてしっかり決まっていないため、併用療法を発表される先生方の独自の定義で発表されていたため、それぞれの併用療法との間で、ちゃんとした比較ができない状況にありました。

 今回は学会として、併用療法に関してしっかり定義を明示されました。少し専門的になりますが、その定義を紹介します。

 内痔核が数か所あり、それぞれを治療する際に、結紮切除術(LE:Ligation&Excision)する内痔核とALTA療法(A)を行う内痔核がそれぞれ違う場合は、LE+Aと記載。

 ①外痔核切除(E:Excision)が先行する場合は、E・Aと記載
 ②ALTA療法が先行する場合は、A・Eと記載。

 ①E1:外痔核の切除が肛門縁より外
 ②E2:外痔核の切除が歯状線に及ばないもの
 ③E3:外痔核の切除・剥離が歯状線を超えるもの(歯状線まで含む)

とそれぞれ記載することになりました。

 このようにしっかり記載のルールができると、それぞれの手術間での比較がしっかりできるようになります。今後この記載によって報告され、ALTA併用療法の再発の比較等ができるようになり、治療方法のさらなる改善が進んでいくと思います。