渡邉医院

内痔核に対して結紮切除術施行後の術後及び排便時の疼痛に関してーアンケート結果よりー(第64回日本大腸肛門病学会)

 今回は、「内痔核に対して結紮切除術施行後の術後及び排便時の疼痛に関してーアンケート結果よりー」という内容の学会発表を紹介します。
 肛門の手術を受ける患者さんにとってさまざまな不安があると思います。手術はどうするんだろうか?手術中は痛いんだろうか?手術をしてしっかり治るのかな?手術の後はちゃんと便が出るのだろうか?などなど、数えればいくつもの不安が出てくると思います。そのような中で、不安の中で最も大きなものの一つが手術後の痛みだと思います。
 渡邉医院を受診された患者さんで、内痔核に対して手術の必要な方に術後の痛みについてお話しするときは、次のようにお話しています。
 1)傷はどんな傷でも擦ると痛いですよね。肛門の手術の後も一緒です。手術をしたからと言って、1日中痛いわけではありません。普段は痛くなく、傷を擦るとき、排便するときに痛みがあります。でも、この排便時の痛みも手術して7~10日過ぎると96.5%の人が急にスッと痛みが取れます。
 2)手術後、排便時の痛みは手術した傷の数、内痔核を切除した数に関係します。1か所の手術の方は2か所、3か所の手術が必要な方と比べて痛みは楽です。2か所と3か所の方の間では、痛みに差がありません。1か所か2か所以上かで痛みに差が出ます。
 このようなことをお話ししています。その根拠となったのが、手術を受けた患者さんのアンケートです。渡邉医院では、手術した患者さん皆さんにアンケートを取っています。このアンケートをもとに、これから手術する患者さんに必要な情報を提供しています。
 今回は内痔核のに対して痔核根治術を行った患者さんに、手術後の痛みについてのアンケートをとった結果を報告した発表内容を紹介します。
 

発表内容

 内痔核に対して結紮切除術を施行する際に患者さんが一番不安に感じるのは、手術後の痛みや排便時の痛みです。
 今回、内痔核に対して結紮切除術を施行した後の術後の痛みと、排便時の痛みに関してのアンケートをおこない、その結果を集計したので報告します。
 平成1312月から平成213月までに内痔核に対して結紮切除術を施行して、術後及び排便時の痛みに関してアンケートに答えていただいた1011例、男性481例、女性530例を対象としました。
 方法は、術後及び排便時の疼痛を最小0から最大10までの11段階で評価しました。
 1)内痔核の切除個数、2)年齢別、3)男女別について比較検討しました。
 年齢はA群30歳未満からF群70歳以上まで6群に分類しました。
 人数分布ですが、男女とも50~60歳代にピークを認めました。女性では男性と比較して30歳代がやや多い傾向がありました。
 術後の疼痛ですが、男性では平均1箇所が3.22箇所が4.23箇所以上が4.8と切除個数は増えるにしたがって痛みは強くなる傾向がありました。
 女性でも1箇所が2.82箇所が4.13箇所以上が4.8と同様の傾向を認めました。
 術後の疼痛に関して年齢別では、1箇所切除では男女とも各群間にあまり差は認めませんでした。
 切除が2箇所以上になると年齢とともに術後の疼痛が軽度になっていく傾向がありました。
 排便時の疼痛ですが、男性では平均1箇所が3.62箇所が4.93箇所以上が5.9と術後の疼痛と同様に切除個数が増えるとともに痛みが強くなる傾向がありました。
 女性でも1箇所が3.12箇所が4.73箇所以上が5.3と同様の傾向を認めました。
 年齢による排便時の疼痛に関しても術後と同様に、1箇所切除では男女ともに各群間に差は認めませんでした。
 切除が2箇所以上になると男女とも年齢とともに排便時の疼痛が軽度になる傾向を認めました。
 この術後の疼痛と排便時の疼痛の年齢による変化と、以前発表した年齢別の最大肛門静止圧の変化とを重ねてみますと、術後の疼痛では年齢による疼痛の変化と最大肛門静止圧の変化は同様の傾向を認めました。
 また、排便時の疼痛でも同様に年齢による疼痛の変化と最大肛門静止圧の変化は同様の傾向を示しました。
 このことから術後及び排便時の疼痛の強さと最大肛門静止圧との間には関連があるのではないかと思います。
 まとめです。
 11箇所切除では比較的術後及び排便時の疼痛は軽度で、年齢による差も認めませんでした。
 2)術後及び排便時の疼痛は切除個数が増えるにしたがって強くなりました。
 32箇所以上切除では、術後及び排便時の疼痛は年齢とともに軽度になる傾向を認めました。この疼痛の変化は最大肛門静止圧が年齢とともに低下していくのと同じ傾向であり、術後及び排便時の疼痛と最大肛門静止圧との間には関連性があると考えます。
 このことから、術後及び排便時の疼痛を緩和し、患者さんの不安を軽減するためにも、最大肛門静止圧に影響をおよぼす、内肛門括約筋が術後に過度な緊張を起こさないようにすることが大事ではないかと考えます。

抄録を紹介します。

抄録

 内痔核に対して結紮切除術を施行後の術後及び排便時の疼痛に関してアンケート調査をしたので報告する。
【対象】H13年12月からH21年3月までに内痔核に対して結紮切除術を施行し、術後及び排便時の疼痛に関してアンケートに回答した1011例(男性481例、女性530例)を対象とした。
【方法】術後及び排便時の疼痛の程度を最小0から最大10の11段階で評価し、内痔核の切除個数、年齢別に比較検討した。年齢は30歳未満A群、30歳代B群、40歳代C群、50歳代D群、60歳代E群、70歳以上F群と分類した。
【結果】①術後疼痛:男性ではA群は1箇所切除4.3、2箇所切除6.7、3箇所以上切除5.3、以下同様にB群2.9、4.7、6.1、C群3.5、3.4、5.5、D群3.6、3.9、4.7、E群2.5、3.2、3.9、F群2.4、3.4、3.2であった。女性ではA群3.2、5.6、5.1、B群3.4、4.6、5.9、C群2.7、4.3、5.3、D群2.6、3.9、4.0、E群2.5、3.3、4.3、F群2.3、3.0、4.4であった。②排便後疼痛:同様に男性ではA群4.6、8.1、8.1、B群4.3、5.2、6.7、C群3.7、3.9、6.2、D群3.2、4.5、6.0、E群2.9、4.0、5.4、F群2.9、3.7、3.2であった。女性はA群4.1、6.7、6.4、B群3.5、5.2、6.4、C群2.8、4.2、5.6、D群3.0、4.3、5.0、E群2.9、3.5、4.5、F群2.2、4.1、4.1であった。術後疼痛は各群男女とも切除個数が増えると疼痛が強くなり、各群間の比較では男女とも年齢とともに痛みが軽度になる傾向があり、有意差を認めるものもあった。排便後疼痛も術後疼痛と同様の結果であった。術後疼痛では女性では1箇所切除では各群間に有意差を認めず、また排便後疼痛では男性で1箇所切除では各群間に有意差は認めなかった。
【まとめ】1箇所切除では比較的術後及び排便時の疼痛が軽度であった。術後疼痛及び排便後疼痛は切除個数が増えるにしたがって強くなり、年齢とともに軽度となった。これは、最大肛門静止圧が年齢とともに低下していくのと同じ傾向を認めた。