渡邉医院

第76回日本大腸肛門病学会に参加して。「裂肛・肛門狭窄の診断と治療」その2

 前回は、裂肛・肛門狭窄の診断と治療のシンポジウムに参加して、まずは「肛門狭窄」の定義や診察の際の課題に関してお話ししました。

 その最後に、裂肛は、まずは基本的には排便の調整と軟膏などでの保存的治療で軽快していき、手術に移行する割合は少ないことをお話ししました。

 今回は、どのタイミングで手術に移行するのか、その時にどのような手術を選んだらいいのかについてお話ししたいと思います。

 裂肛に対して裂肛根治術を行うタイミングは、とても難しい問題です。先ほども書きましたが、まずは排便の調整、便秘であれば便秘を治していく、反対に下痢であれば下痢を治していく。このことが最も大切な治療です。そしてどうしても痛みによって、内肛門括約筋の緊張が強くなっていくので、この緊張をとるように軟膏を使ってもらう。ここが一番大切なところです。

 さて手術ですが、診察した際に明らかに慢性の裂肛、皮垂や肛門ポリープがあって、裂肛というよりは潰瘍を形成したような裂肛に対しては直ぐに裂肛に踏み切るといいと思います。このような状態で受診される患者さんは、やはり痛みが強いなどの症状もあり、初診時の時にすでに手術を決心されて受診される方が多いです。このように初診時に明らかに手術が必要な患者さんは、直ぐに手術を決めていただき、手術をすることで、痛みがスッと楽になります。
 肛門の手術は、手術後痛みが強いと思っている患者さんが多いですが、裂肛の手術は、今ある痛みを取り除くことが目的です。ですから、痛みが強いほど、術後の最初の便が楽に出るようになります。

 手術に移行したらいいのか迷う場合は、排便の調整をして、軟膏等でいったん痛みが改善され症状が取れる場合です。でも切れたり治ったりを繰り返しているという患者さんです。

 受診されたときは、痛みがあってとても辛い状態ですが、排便の調整と外用薬で痛みが楽になる場合があります。でもしばらくしてまた痛みが出て受診される。これを何回も繰り返される場合です。こんな場合、患者さんも「排便の調整と外用薬でまた楽になるかなあ?」と思われますし、私も「もう少し排便の調整と外用薬で様子を見てみようかなあ。」と思ってしまいます。そういったことを繰り返しているうちに、ズルズルと月日が経ってしまうことがあります。この場合、どのタイミングで「手術をしてしっかり治しましょう。」というかです。とても悩ましいです。
 でも、何回か受診を繰り返されているうちに、やはりだんだん肛門の緊張が強くなってきます。そして良くなったり悪くなったりの間隔が短くなってくる場合があります。そんな時は、まずは私の方から、「何回も繰り返していますし、少し肛門の緊張が強くなってきているようです。そろそろ思い切って手術をして、もとの肛門の状態に戻しませんか?リセットしてみてはどうですか?」と声を掛けます。そうすると患者さんも「私もそう思います。手術してスッキリします。」とおっしゃることが多いです。このタイミングで手術を決めることが多いと思います。
 やはり、患者さんが「もう治してしまおう。」と思った時が手術のタイミングだと思います。そして、そろそろ手術で治した方がいいのではといった、後押しをすることが私の勤めかなあと思います。

 手術に関してですが、渡邉医院では側方皮下内肛門括約筋切開御術を中心に行っています。裂肛を繰り返すことで、肛門が硬く瘢痕化して、括約筋を切開するだけでは十分に肛門の緊張が取り除けないと判断した場合はSSGsliding skin graft)を行っています。

 さて、裂肛の手術の基本を私はこう考えています。

 裂肛は言ってみれば、排便の時に肛門の上皮に傷がついた怪我です。ですから本来ならば自然に治っていかなければなりません。ですからその傷、裂肛が治り難くしている原因を取り除けば、裂肛は治っていくと考えています。

 例えば、裂肛の部分がどんな状態か。裂肛の周囲が硬くなく、まだまだ瘢痕になっていない場合は、裂肛の部分はそのままで、括約筋を切開して緊張をとるだけでいいと思います。これに対して、裂肛の周囲の部分が硬く瘢痕化していて、深い潰瘍状になっている場合は、その硬くなった瘢痕部分を切除して裂肛そのものの傷を柔らかく治りやすくしてから括約筋の緊張をとることが必要だと思います。また、裂肛によってできた肛門ポリープや皮垂がある場合は、これらも裂肛の治り鵜を悪くするので切除します。また括約筋の緊張をとるだけではどうしても肛門の広がりが悪い場合はSSGを行います。
 このように裂肛の治りを悪くしているものを取り除くことが裂肛の手術の基本だと思っています。