渡邉医院

妊娠中の血栓性外痔核、手術する?しない?

 緊急事態宣言の中のゴールデンウィーク。去年と引き続いて2年続けての自粛の中での休日でした。皆さんはどうお過ごしでしたか?私は自宅でのんびり過ごしていました。運動不足なので、近くの川べりを焼く1時間半程度歩いたりしました。また、久しぶりに診療所の中庭や玄関前の通り庭の草むしりや掃除もしてみました。1時間半程度歩くより、1時間程度の庭掃除の方が筋肉痛になりました。いつも使わない筋肉を使ったのでしょう。でも草むしりや庭掃除。やってみると楽しいものです。庭もきれいになりますし。そんなことで、今年のゴールデンウィークも自宅と診療所、そして散歩の連休でした。

 さて、この連休中も診療所の方に電話がかかり、急患の診察をしました。

 やはり、「痛み」を主訴とする患者さんが多く、肛門周囲膿瘍の方や、血栓性外痔核の患者さんが受診されました。肛門周囲膿瘍はもうその日のうちに局所麻酔をして切開排膿を行いました。血栓性外痔核のお一人は妊婦さん。出産がもう直ぐだったのですが、血栓が詰まって腫れが強く、痛みも強いため、その日に局所麻酔下に血栓を摘出しました。もう一人は男性の方。この方は、強い痛みはないとのことで、消炎鎮痛剤の座薬と軟膏で保存的に治療することにしました。

 血栓性外痔核の場合、患者さんとしては、今ある痛みを早く取って欲しいという思いで受診されます。血栓性外痔核は痛みはありますが、基本は時間とともに腫れが引き、痛みが取れ、血栓は自然に溶けて治っていきます。すから、今ある痛みを取るために消炎鎮痛剤の座薬と軟膏で保存的に治療します。このことを患者さんにお話しして、痛みが強く、やはり今ある痛みを早く取り除きたいと希望される患者さんは、受診したその日に手術をして血栓を取り除きます。血栓を取ることで常時の痛みは楽になります。ただ、やはり傷ができるので、排便時の痛みは1週間程度あります。

 さて、妊娠中ですが、できれば手術は避けた方がいいのかなと思いますが、妊娠後期になりますと、消炎鎮痛剤がお腹の赤ちゃんに悪い影響を与えてしまいます。ですから、消炎鎮痛剤が使えないので、血栓性外痔核の状態では手術をすることがあります。
 血栓性外痔核の場合、比較的大きな血栓が詰まった方が痛みは少ない印象です。
 血栓性外痔核の痛みは血栓が詰まっただけではおきません。血栓が詰まったことで腫れがでて、この腫れの程度で痛みに差が出ます。比較的大きな血栓が単独で詰まった場合は、血栓は大きくてもあまり腫れてきません。この場合は痛みがわりと軽いので、妊娠していない場合は消炎鎮痛剤の座薬を使うと腫れが引き、痛みは楽になります。血栓を早く溶かす薬はないので、血栓は自然に溶けて吸収して治るのを待ちます。
 血栓性外痔核で消炎鎮痛剤の座薬を使ったり、軟膏を使ったりするのは、血栓を早く溶かすのではなく、血栓が詰まったために腫れた、その腫れを早く治める、そして痛みを取り除くのが目的です。
 さて、一つの血栓は小さくても小さな血栓が多数詰まると腫れが強くなるようです。
 このような場合は、痛みの程度が強い場合は局所麻酔をして血栓を摘出します。ですから、妊婦さんの場合は、痛みを取るために消炎鎮痛剤が使えないため、痛みが強い場合は局所麻酔をして血栓を取ることがあります。手術をすることで、腫れがなくなりますので、常時痛かった痛みは取れます。ただ、肛門に傷ができるので、排便時の痛みはどうしてもあります。このように妊婦さんの場合でも血栓性外痔核の状態や痛みの具合では、局所麻酔をして血栓を取ることがあります。

 妊娠中の患者さんを診察する際、その血栓性外痔核が、今は痛みがあるが、軟膏やヘモナーゼなどの内服薬、そして一番よくなるのが入浴ですが、手術をせずに保存的に治療でも早く痛みが取れる状態なのか、反対にやはり手術をした方が早く痛みが取れる血栓性外痔核なのかを判断してその旨を患者さんにお話しします。そして、患者さんにどうするかを決めてもらっています。

「痛みがあるので、手術をしたい。」という方も、「やはり麻酔や手術などのお腹の赤ちゃんの影響が心配なので、保存的に治療します。」という方もどちらも正しいと思います。

 やはり自分が一番安心できる方法で血栓性外痔核は治療したらいいと思います。その日に手術をしなくても、やはり痛みが続くなどでやっぱり手術しようと思ったら、その時に手術をするでも全然かまわないと思います。