桜も大分花が開いてきました。今週末には満開になるかなあという勢いです。
自宅近くの桜もきれいに咲いてきました。今年もゆっくり花見はできないかなあと思いますが、妻と二人で、ぷらっと桜の花を見に行きたいなあと思います。
さて、3月21日に第4回日本臨床肛門病学会学術集会が開催されました。今年もwebのみの開催でした。先生方と生の議論が出来ないのが寂しいですし、学会後の懇親会などでの話題提供もとても勉強になるのですが、webだけの学会だとそういったこともなく残念です。
でも、やはり学会は学会!とても勉強になります。またいろんな先生の発表を聞くことで、とても良い刺激を受けます。
今回のテーマは「複雑痔瘻(坐骨直腸窩痔瘻)の手術」でした。
痔瘻は患者さん一人一人すべて違います。ですから、患者さんの痔瘻の原発口、原発巣がどこなのか?そして二次口までの瘻管がどのように伸びているのかを、しっかり診断する必要があります。特に複雑痔瘻の場合は肛門の6時(後方)にできるのですが、その部分はかなり奥深い部分に瘻管が進み、肛門の左右に瘻管が広がっていくパターンが多いです。また二次口が複数ある場合もあり、原発口、原発巣からどのように瘻管が進んでいるのか?どのように枝分かれしていくのかを見極めなければなりません。
その診断に、大きな病院や肛門専門の病院ではMRIや超音波検査などを用いて瘻管の深さや走行を画像で診断し、それをもとに手術を進めていく施設もあります。ただ、そういった画像診断ができない医療機関の方が多いです。そういった場合は、やはり一番頼りになるのが指診です。
肛門指診でどこに原発口があるのか、また、瘻管がどのように進んでいるのかを触診で診断していきます。その触診の方法として双指診があります。
示指を肛門内に入れ、原発口を触知します。そして肛門の外側から親指をあて、示指と親指とで瘻管の走行を診断していきます。二本の指で硬く触れる瘻管をみていくわけです。また左右に広がる瘻管も触診で硬い索状物として触知することが出来ます。また、渡邉医院では肛門周囲の局所麻酔で手術をしていますが、その局所麻酔をする際の針の刺さり具合、刺した時の抵抗、硬さでも瘻管の走行がわかります。やはり瘻管の部分や炎症を起こした部分は麻酔の針を刺す際に硬く感じます。時々側方に痔瘻だと思っていたら、麻酔の際にその針の刺さり具合で、後方から側方へと瘻管が伸びる瘻管とわかる場合もあります。
このようにMRIや超音波検査が無くても痔瘻の瘻管の走行を診断することが出来ます。
また最終的には、手術の際に丁寧に瘻管を剥離していく際に瘻管の走行は解ります。
複雑痔瘻は、深い部分を瘻管が進んでいきます。しっかりとその走行を見極め、一番大切なところは、原発口、原発巣を的確に処理するところにあります。
6時(後方)の方向に原発口があり、左右のいずれか、または両方に瘻管が広がっていく複雑痔瘻の場合は、瘻管を含めて原発口まですべて開放創にすると、かなり大きな傷が出来てしまします。そのような場合はいろいろ工夫が必要となってきます。
複雑痔瘻の原発口、原発巣は6時の後方にあります。ですから、まずは6時の部分から原発巣、原発口を処理して開放創にする。
そして後方から側方に伸びる瘻管に対しては、瘻管内を掻把して不良肉芽を十分に取り除くだけで留めたり、二次口から6時の部分まで瘻管をくり抜いていく方法であったり、一端すべてを開放創にして、後方だけ開放創にして十分なドレナージをおき、側方のいったん開放創となった創は縫合して閉鎖するなどの方法があります。
傷が大きくなると、やはり治癒までの期間が長くなります。必要な傷はしっかり形よく残し、それ以外は縫合したり瘻管だけをくり抜いたり、掻把するだけにして、できるだけ傷を小さくすることによって治癒までの期間を短縮することが出来ます。その方法の選択にやはり経験が必要になってくると思います。
また、痔瘻の手術に関してお話する際に、いつもお話しているのが痔瘻の手術のジレンマ「機能温存と根治性」という相反する課題をどうするかにあります。
やはりそこに痔瘻の手術の難しさがあると思います。