渡邉医院

生食付ALTAを用いてALTA療法を施行した局所麻酔薬アレルギー患者の1例(第69回日本大腸肛門病学会)

 新しい渡邉医院のページに「学会・論文」というカテゴリーがあります。そこにこれまで学会で発表した内容や論文を順次紹介しています。
 今回は、局所麻酔薬にアレルギーがある患者さんに対して、第3度の内痔核の治療を局所麻酔をすることなく、生食付ジオンを用いて四段階注射法での痔核硬化療法を行った内容を紹介します。
 局所麻酔薬アレルギーの患者さんに対してQOLを改善するために外科的な治療を行わなければならないことがあります。局所麻酔をせずに生食付ジオンで治療をすることができることを紹介します。
 ジオンには無痛化剤付ジオンと生食付ジオンの二つがあります。無痛化剤付ジオンはキシロカインという局所麻酔薬が入っているのに対して、生食付ジオンは局所麻酔薬は入っていません。今回はこの生食付ジオンを使っての治療です。
 発表原稿がわかりやすいので、最初に発表原稿を、その後に抄録を紹介します。

 局所麻酔薬アレルギーの発生頻度はまれで、薬剤による副作用のうち約0.6%とされています。現在、使用されている局所麻酔薬はリドカインなどのアミド型が主流となり、プロカインなどのエステル型に比べアレルギーの発生頻度は低下しているとされています。局所麻酔アレルギーのある患者が来院した場合、しかも、観血的な治療が必要とした場合、患者のQOLを高めるために何らかの方法で治療しなければなりません。
 さて、今回、局所麻酔アレルギーのある患者に対して、無麻酔下に生食付硫酸アルミニウムタンニン酸水溶液を用いて四段階注射法を施行した1例を報告します。
 症例は64歳女性。身長148cm、体重54kg。主訴は排便時の内痔核の脱出と出血です。既往歴は特記することはなく、他院にて局所麻酔薬(ジブカイン、ブビバカイン、リドカイン、プロカイン)に対してのアレルギーを指摘されています。
 入院時の肛門所見は、肛門の3時7時11時の方向にGoligher分類のⅢ度の内痔核を認めました。
 ALTA療法は無麻酔下に筒型肛門鏡を用いて四段階注射法を遵守して痔核硬化療法を施行しました。体位は当院では左側臥位で行っています。
 ALTA療法はヒルシュマン型肛門鏡を用いて施行しました。
 初回ALTA療法を施行した際の内痔核の部位とALTAの投与量は図に示すように、それぞれの内痔核に対して3カ所とも13mlのALTAを局注し、総量は38mlでした。投与時間は13分でした。
 ALTA療法施行時の副作用として血圧低下と除脈を認めましたが、いずれも昇圧剤等の投与をすることなく保存的に軽快しました。その他の副作用は経過を通じて認めませんでした。またALTA療法施行時及び施行後の痛みは認めませんでした。
 血圧及び脈拍の変動は、ALTA療法施行直後から血圧低下及び徐脈が発現し、終了後から回復傾向となり、施行後1時間後には軽快しました。
 初回施行から約6か月後に再発を認め、再度ALTA療法施行しました。ALTA投与量は、3カ所とも12ml、総量36mlのALTAを局注しました。投与時間も初回と変わらず13分でした。再度施行した際は、初回投与時と異なり、血圧低下や除脈等の副作用は認めませんでした。その後約1年、現在まで再発は認めていません。
 まとめです。
 Goligher分類の第Ⅲ度以上の内痔核に対して根治的治療を行うには観血的治療が必要になります。局所麻酔アレルギーの患者に対してもQOLを高めるためには観血的治療が必要です。本来は局所麻酔下では無痛化剤付ALTAをそれ以外の麻酔の場合は生食液付ALTAを用いることが原則です。
 局所麻酔アレルギーのある患者に対しても四段階注射法 を厳守することで、無麻酔下に生食液付ALTAでも治療が可能 であり、局所麻酔アレルギーの患者のQOLを高めるため、 Goligher分類の第Ⅲ度以上の内痔核治療の一つの方法となると考えます。
 また、2回目のALTA療法施行時において、ALTAの投与量、投与時間は初回と同様でしたが、血圧低下や除脈は起きず、これらの副作用に心因性の影響も係る可能性が示唆されました。

抄録も紹介しておきます。
抄録
【はじめに】局所麻酔アレルギーのある患者に対して無麻酔下で、生食液付硫酸アルミニウムタンニン酸水溶液(以下ALTA)を用いて四段階注射法(以下ALTA療法)で治療した一例を報告する。【症例】症例は64歳女性、体重54kg、身長148cm。排便時の内痔核の脱出と出血を主訴に当院を受診。他院にてジブカイン、ブビバカイン、リドカイン、プロカインに対しての局所麻酔アレルギーと診断されている。血液一般検査では異常所見は認めなかった。【治療】無麻酔で生食液付ALTAを用いてALTA療法を行うことについて十分にインフォームドコンセントを行い治療にあたった。血管確保後3カ所の内痔核に対して総量38ml3時と11時の内痔核に対して第1段階3ml、第2段階4ml、第3段階2ml、第4段階4ml、総量13ml7時の内痔核は3ml3ml2ml4ml、総量12ml)を局注した。投与時間は13分であった。ALTA療法施行時の痛みはなく、施行中に一時血圧低下や除脈を認めたが、保存的に軽快した。術後も痛みは認めなかった。術後約6か月後に再発を認め、再度ALTA療法を施行した。その際ALTA投与量(36ml)、投与時間(13分)に差を認めなかったが、血圧低下や徐脈は認めなかった。再投与後6か月経過するも排便時の出血や内痔核の脱出は認めていない。【まとめ】Goligher分類の第Ⅲ度以上の内痔核に対して根治的治療を行うには観血的治療が必要になる。局所麻酔アレルギーの患者に対してもQOLを高めるためには観血的治療が必要である。今回、無麻酔下で生食液付ALTAを用いることで治療することができた。本来は局所麻酔下では無痛化剤付ALTAをそれ以外の麻酔の場合は生食液付ALTAを用いることが原則であるが、今回のように局所麻酔アレルギーのある患者に対しても四段階注射法を厳守することで、無麻酔下に生食液付ALTAでも治療が可能であり、患者のQOLを高めることができ、局所麻酔アレルギーの患者の治療の一つの方法となると考える。また、2回目のALTA療法施行時はALTAの投与量、投与時間に初回と同様であったが、血圧低下や除脈は起きず、これらの副作用に心因性の影響も係る可能性が示唆された。