渡邉医院

頑張っても便が出ないのは、肛門に何かできているから?

 渡邉医院は今週の火曜日、15日から仕事はじめ。1年が始まりました。どんな1年になるのか、どちらかといえば不安が多き1年の始まりとなりました。

 今年は良い年だったと思えるように頑張りたいと思います。それには新型コロナウイルスの感染拡大の収束への光が見えることが大事だと思います。私たち一人一人が出来るの日常の感染対策が一番大事ではないかと思います。

 さて今日は、排便に関して少し患者さんからの相談内容を紹介しながらお話したいと思います。

 時々このような訴えをされる患者さんがいます。「そこまで便が来ているのに、いくら頑張っても出ません。肛門に何かできていて、それが肛門を塞いでいるように感じます。」とか、「頑張って便を出そうとすると、出ることは出るが細い便しかでない。肛門に何かできているから頑張って便を出したときに便が細いのでしょうか?」という訴えです。

 いずれも、肛門に何か悪いものができていて、それが原因で便が出なかったり、便が細くなるのではないかという訴えです。

 便が思うように出ない。頑張っても出ない。頑張って出しても細い便しか出ない。このような症状があると、やはり肛門に何かできていて、それが邪魔して便が出なかったり、細くなってしまうのではないかと考えるのは当然だと思います。

 でもこういった症状が出るときは、まずは肛門に何かできているというよりは、排便の状態、便が硬くて出せないことが多いです。

 以前どのように便が出るのかをお話したことがあります。

 便がどのように出るかですが、直腸と肛門は便を出すところです。ですから直腸には便があってはいけないところです。
 時々、直腸は便を溜めておく所と思っている方がいますが違います。直腸は通常は空っぽになています。便は直腸より奥のS状結腸にあります。朝、食事をとり、胃の中に何かものが入ると大蠕動と言って一気に腸管が動き出します。
 S状結腸に合った便はこの蠕動運動で空っぽの直腸に運ばれてきます。なにも無い空っぽの直腸に便が来ると、「便がしたいなあ。」という便意になります。そうすると脳が自分の医師とは関係なく肛門の括約筋を緩めて便を出しやすくしてくれます。直腸にきた便の性状が柔らかくて形のある便であれば、腹圧をかけると便が排出されます。
 例えば直腸に便が無い時に、肛門の括約筋が100で締まっていたとしましょう。直腸に便が送り込まれて直腸に便が来たら脳が命令して括約筋を50まで緩めたとしましょう。そうすると、直腸にきた便が柔らかくて形のある便であれば50以上の腹圧をかけることで排出されます。直腸の便がスッキリ出ると、また括約筋は100で締まります。こういった具合に排便します。

 さて、直腸にきた便が硬い便だとします。そうすると、いくら肛門の括約筋が緩んでいたとしても頑張っても便は出なくなってしまいます。さらに頑張りが強いと肛門の静脈叢が鬱血して、肛門全体が腫れたような感じになってしまいます。
 また頑張れば頑張るほど便は細くなっていってしまいます。頑張れば太い便が出そうですが、創ではありません。反対に細くなっていってしまいます。また柔らかくても出しにくいことがあります。この場合も頑張れば頑張るほど細くて出しにくくもなります。

 このように、肛門に何かできていなくても直腸にきた便の硬さで頑張っても出ない、なにか肛門にできているような感覚になってしまいます。

 このことは肛門が悪いのではなく、直腸にきた便が硬かったりして出しにくくなっているだけです。

 ですから緩下剤などを飲んで柔らかく、形のある便にして排便を調整することでスムーズに出るようになります。

 また、硬くなってしまった便を柔らかくしてくれる薬はありません。緩下剤は、硬くなった便を柔らかくする薬ではありません。硬くならないように柔らかくする薬です。一端硬くなって出なくなった場合は、硬くなった便を指などで崩して浣腸して出さなければなりません。
 よく、便が詰まったので浣腸したが、浣腸の液しかでなくて、便は出ませんと言う患者さんがいます。その通りです。硬い便のまま浣腸しても出ません。硬くなった便を柔らかくしてから浣腸しないと出ません。硬くなった便はコンクリートと一緒で水をかけても柔らかくなりません。

 常に緩下剤を内服して硬くならないように柔らかくて形のある便になるようにしながら便秘を治す必要があります。

 そこまで便が来ているのに便が出ない。何か肛門にできているような感じがする方は、まずは緩下剤を内服して具合よく出るようにすることが大事です。
 また頑張って出すと便が細くなるという方は、頑張らなくても便が出るように排便を調整することが大事です。頑張らなくても便が出た時の方が意外と太い便が出ます。

 排便の具合で気になることがあれば相談してみて下さいね。