10月も今秋を残すのみとなりました。渡邉医院の玄関前のハナミズキも、ここ数日で一気に色づいてきました。秋ですね。
25日の日曜日、何ヶ月ぶりでしょうか、北野天満宮の天神市が再開されました。まだまだ新型コロナウイルスの感染は収束していませんが徐々に感染予防策をとりながら、少しづつ以前の生活に戻っていくのでしょう。
私たちにできることは何かをしっかり考えながら、今の時を過ごしていきたいと思います。
さて、今回は痔瘻の瘻管の走行に関してお話したいと思います。
痔瘻を根治するには、感染を起こした原発巣、原発口をしっかり処理する必要があります。また瘻管も摘出することが大切になります。
痔瘻に対して痔瘻根治術を行う時、二次口、そして瘻管の走行、そして原発口しっかり確認し、診断することが大切です。
さて、二次口は見た目ではっきりとわかります。肛門の外側に膿が出る瘻管の出口を認めます。ニキビの様であったり、硬い盛り上がりがあったりします。場合によっては明らかな二次口が無くても硬いしこりのようなものを触ることが出来ます。
これに対して、原発口はなかなか解り難いこともあります。肛門指診で丁寧に診察すると、少し硬くなって、へこみのようなものを触ると感じます。また原発口付近を圧迫すると、二次口から膿が出てくることもあります。
肛門鏡で観察しても、はっきりした原発口を確認することはあまりできません。原発口や原発巣の炎症が強い場合やしっかりとした瘻管が出来ている場合などは肛門鏡で原発口を確認することが出来ます。なかなか肛門鏡で原発口を確認することは難しいです。ですから、原発口は肛門鏡での視診よりも触診のほうが原発口を確認することが出来ます。
また二次口から原発口に進む瘻管を硬いしこりとして触ることが出来ます。原発口を確認する際に、二次口からこの瘻管の硬さを頼りに確認していきます。
このように、痔瘻の原発口や瘻管の走行を確認するには、二次口からの瘻管の硬さを触ることで診断したり、また、原発口を触診で診断するといったように視診よりも触診に頼ることが多いと思います。
肛門疾患に特化した大きな病院などでは、痔瘻の診断に肛門部の超音波検査やMRIやCT検査で原発口や瘻管の走行を調べる医療機関があります。
でも、渡邉医院の様に小さな診療所ではそういった画像診断ができません。ですから、自分の持つ触診視診などでの診断の感覚を研ぎ澄ます必要があります。
さて、原発口を確認する際に気を付けていることがあります。それは二次口の場所です。
痔瘻で一番多く発生する部位は肛門の後ろ、時計でいうと6時の方向です。ですから二次口が6時の方向にあれば、まず間違いなく原発口も6時にあります。
しかし、二次口が左右の側方にあったり、前方にある場合は注意が必要です。
というのも、側方や前方に二次口がある場合、真直ぐに側方や前方に原発口がある、例えば、時計の1時の方向に二次口があった場合、原発口も1時の方向にあるといった具合に二次口から肛門に対して真直ぐに瘻管が進む場合ばかりではないということです。
一番痔瘻になりやすい6時の原発口の場合、6時の方向に真直ぐ瘻管が伸びるだけでなく、後方から深い部分を通って側方から前方へと瘻管が伸びていく場合が少なくありまあせん。例えば先ほど例にあげた1時の方向にあった場合、原発口が1時ではなく、6時の方向からぐるっと前方に回って1時に二次口があるといった場合があるからです。
この瘻管の進み方の法則をGoodsallの法則と言います。
Goodsallの法則は「肛門の前方と後方に分けると痔瘻の二次口が前方にあるものは直線的に肛門に向かうが、後方に二次口のあるものは肛門正中線に向かって曲がった経路をとる。」というものです。この法則を頭に入れながら二次口から原発口を確認していく必要があります。
また瘻管を最後に確認して確定するのはやはり手術の時です。
術前に原発口や瘻管の走行を診断して手術に入ります。
渡邉医院では局所麻酔で手術をするのですが、肛門全周に局所麻酔をしていきます。その際に、麻酔の注射針の刺さり具合で痔瘻の瘻管の走行がわかります。瘻管の部分はやはり麻酔の針を刺す際に硬さを感じます。例えば1時に二次口、同じく1時に原発口がある場合は、1時の部分の麻酔をするときのみ瘻管の硬さを感じます。それが、6時の原発口で1時に瘻管が伸びるタイプの痔瘻の場合は、1時から6時の方向に麻酔の針を刺す場合に硬さを感じることが出来ます。
また完全に麻酔がかかった後、ゾンデと言って針金のような道具があります。ゾンデを二次口から挿入すると、瘻管の走行がわかります。
1時が原発口で二次口も1時の場合は、ゾンデを二次口から挿入すると、1時の原発口に向かってゾンデが真直ぐに入っていきます。
それに対して、6時が原発口で、二次口が1時の場合は、二次口からゾンデを挿入すると、真直ぐ1時の方向にゾンデは進まず、後方の6時の方向にゾンデは進んでいきます。このように術前に触診などで診断して、最終的には麻酔をしている際や麻酔が終わった後にしっかり原発口と瘻管の走行を確認します。
このようにして痔瘻を診断して手術をすすめていきます。痔瘻の手術で大切なのは、原発口の確認と二次口へと進む瘻管の走行です。