渡邉医院

手術に関しての窓口負担の計算の仕方。実際の点数を示して。

 前回は、外来と入院の窓口負担額の計算の方法を実際の点数を示してお話しました。今回は肛門の手術の点数などを紹介したいと思います。

 今回お話する手術の点数は日本全国皆同じで、どの医療機関を受診しても同じ点数です。病院や診療所等、医療機関の規模が違っても手術に関わる点数は同じ点数です。時々病院では手術の点数が高いと勘違いしている患者さんもいますが、そんなことは有りません。病院でも診療所でも、どんな医療機関を受診しても全国一律同じ点数です。このことはとても大事なことです。

 肛門科の医療機関の中には、自費診療をされている医療機関があります。この場合はこの保険点数は適応されず、その自費診療をされている医療機関それぞれで違ってきます。今回お話するのは保険診療をしている医療機関でのことです。

 今回は肛門の病気で多い、内痔核、外痔核、痔瘻、肛門周囲膿瘍、裂肛などについてその点数を紹介します。また、時々生命保険屋さんから、「手術の番号を聞いてきてくださいと言われた。」という患者さんがいます。手術は「K」という番号で全ての手術に番号が付いています。この番号も一緒に紹介します。

 まずは内痔核、外痔核に対しての手術です。痔核硬化療法も手術に入ります。そして痔核硬化療法にはパオスクレーという痔核硬化剤とジオンという痔核硬化剤で行う四段階注射法での痔核硬化療法の二つがあります。

内痔核や外痔核に関する点数はこの五つです。

 例えば、痔核根治術の窓口負担は3割負担で5190点×10円×30%=15570円となります。

 ただ、これは痔核根治術だけの点数なので、これに麻酔薬の点数や痛み止めなどの内服薬の点数、そして入院でしたら入院基本料の776点を足すことになります。

 ちなみに渡邉医院では1%塩酸プロカインの局所麻酔で手術をします。術後消炎鎮痛剤の座薬を2個使います。これらの麻酔剤と消炎鎮痛剤を足すと65点になります。

 また、ジオンによる痔核硬化療法(四段階注射法)ではジオンの薬剤費が追加になります。ジオン1V455点、2V910点となります。ですからジオン2Vを使って四段階注射法で痔核硬化療法をすると、

 (4010点+910点)×10円×30%=14760円となります。これも麻酔料などのほかの点数は入っていません。

 次は痔瘻です。

 痔瘻には単純な痔瘻と複雑な痔瘻との二つに分かれています。

となります。これも内痔核と同様に計算すると窓口負担分がわかります。

 次は裂肛です。

 裂肛には、裂肛又は肛門潰瘍根治術と裂肛などが原因で肛門狭窄を起こすことがあり、肛門狭窄形成術の二つがあります。

となります。

 また肛門の病気には肛門ポリープや尖圭コンジロームなどがあります。これらはK747 1250点です。

 また肛門の近くにも粉瘤が出来ることがあります。粉瘤を摘出する場合は、粉瘤の大きさで点数が違ってきますが、長径が3㎝未満の粉瘤の場合は1280点になります。

 高齢の女性に多いのですが、直腸脱と言って直腸の粘膜が出てくる病気があります、これに対して直腸脱手術をしますが、それはK742 1・イ)で8410点になります。

 このように手術にはそれぞれKの番号が付き点数が決められています。

 では一つだけ具体例をしましますね。

 12日の入院で痔核根治術をした場合を例に挙げます。

①入院2日間:776点×2日間=1552
②痔核根治術:5190
③麻酔などの薬剤費:65
④消炎鎮痛剤、抗生剤、胃薬などの内服薬:108
⑤術後1日目の術後の創処置:52
⑥術後1日目の消炎鎮痛剤の座薬:4

 これらを全て足すと、6971点になります。3割負担ですと、
6971点×10円×30%=20913円。四捨五入で20910円となります。ですから手術代、入院費等を合わせて、退院時に窓口で支払う窓口負担金の合計は20910円になります。入院費1552点と痔核根治術5190点のみを足すと1552点+5190点=6742点。6742点×10円×30%=20226円です。すべてを合計したときの窓口負担金とほぼ同じです。ですから大まかな入院して手術をする際の必要な窓口負担の金額は776点の入院基本料×入院日数に手術点数を足したものと考えてもらったらいいと思います。

 こんな感じで計算していきます。参考になればと思います。