前回は痔瘻に対して痔瘻根治術を行う難しさについてお話しました。今回はそういった難しさを前提に、痔瘻根治術をした後、スッキリ治らない原因についてお話したいと思います。
原発巣、原発口の処理が不十分
まずスッキリ治りきらない一つの原因に、原発巣、原発口がしっかり処理して取り除けていない場合があります。原発口や原発巣が十分に取り除かれていなければ、途中まで傷は治っていきますが最後まで治りきらずに、また同じように痔瘻になってしまいます。
ではどうして原発巣や原発口を取り除けなかったのかです。まずは、瘻管の走行、二次口と原発口の位置関係が十分に確認できなかったところにあると思います。
肛門の後ろ側、時計でいう6時の方向に二次口がある場合は、原発口は6時の方向にあります。ただ。6時以外に二次口がある場合、例えば時計でいう3時や1時といった場所に二次口がある場合、原発口が3時や1時にあり、真直ぐな痔瘻の場合もあれば、6時の方向から肛門の周囲を回って、3時や1時の方向に瘻管が伸びている場合があります。こういった場合、瘻管の走行を確認せず、3時の二次口の原発口は3時だと思い手術をすると、原発巣や原発口が取り除くことが出来ずに治っていきません。
また6時に原発口があり、同じく6時に二次口がある、一見して6時の方向の真直ぐな痔瘻だと思っていたら、6時の原発口から少し深い部分に瘻管が進み、そこから二次口へと伸びている場合があります。この場合、深くすすんだ瘻管や原発巣を取り残してしまうと、これもまた傷は治っていきません。このように原発口、原発巣そしてそこから二次口へと延びる瘻管の走行をしっかり確認して手術をすすめていかなければなりません。
術後、治り難い傷になる
もう一つは、原発口や原発巣は十分に処理でき取り除いたにもかかわらずスッキリ治らないときです。
これは手術をしてできた傷に形などに原因がある場合です。痔瘻の瘻管は皮膚よりも深い部分を通っています。瘻管を摘出すると皮膚よりも深い傷になります。手術でできた傷の形がいいと、傷の深い部分から徐々に肉が盛り上がり、そして最後に皮膚が出来て治っていきます。これが傷の形や大きさによっては、傷の深い部分から徐々に盛り上がってくる前に表面の皮膚の部分が塞がってしまうことがあります。傷が盛り上がる前に皮膚に部分が塞がってしまうと、やはり治らなくなって再度痔瘻になってしまいます。
この場合は、術後傷の治りを見ていく際に、どうしても治りを悪くしている部分があれば、患者さんにその旨ををお話して、理解していただいて、治り良い傷に手なおししていかなければなりません。
このように痔瘻根治術をした後、治らなくなってしまう原因は原発口や原発巣の処理が不十分であったこと、また、術後に治り難い傷になってしまったことが原因に挙げられます。
前者は、痔瘻の診察をする際に原発口と二次口へと延びる瘻管がどのような走行化を確認すること。また手術の際にもう一度瘻管の走行を確認しながら手術をすすめること、特に二次口が6時以外にある場合は慎重に瘻管の走行を確認していくことが必要です。当初の診断と異なる場合があります。
また後者の場合は、1回の手術でスッキリ治したいですが、術後の傷の治り具合を診ながら、どうしても治りを悪くするような傷になっていくのであれは早めにその傷を修正していくことが大切だと思います。
その時はもう一度患者さんに侵襲を加えることになります。患者さんには今の傷の具合がどうなのか、どうしてスッキリ治っていかないのか、その原因などをしっかりお話して、理解をしていただいてもう一度傷を整えていく必要があります。スッキリ治っていかない原因をしっかり患者さんにお話して、理解していただく。こういったところから信頼関係が生まれてくるのだと思います。