京都も緊急事態宣言が解除されました。少しづつ人の流れが出てきているようです。休業していたお店も少しづつですが、営業を再開しているようです。
まだまだ新型コロナウイルスの感染が収束したわけではないので、皆さんの不安や、心配な中での今まで通りの生活に向けて少しずつ戻していくのかと思います。まだまだ第2波、第3波に向けてしっかり備えていかなければならないと思います。今回の新型コロナウイルスの感染拡大で明らかになった医療や公衆衛生などの体勢の不備や弱点を第2波が来るまでに十分に強化していかなければいけないと思います。
またこれまで進めてきた保健所の縮小や病院の統廃合などの医療制度改革が本当に正しかったのか、これから同じように進めていったらいいのか、もう一度立ち止まり検証しなければならないと思います。
さて、今回はジオンによる痔核硬化療法、ALTA療法について質問がありました。その質問に回答していこうと思います。
ジオンの成分
まず、ジオンの成分です。ジオンは硫酸アルミニュウムカリウム・タンニン酸水溶液です。
硫酸アルミニュウムカリウムは明礬のことで、茄子のお漬物の色をきれいにするために使ったり、お芋を煮るときに煮崩れしないようにするために使ったりするときに使う明礬です。
痔核硬化療法は内痔核にこのジオンを局注して、炎症を起こさせて硬化、退縮させていく治療法です。ジオンではこの炎症を起こさせる作用があるのが明礬です。でも明礬だけだと激しく炎症を起こして局注した部分の組織を壊して深く潰瘍などを作ってしまうので、タンニン酸がじっくりジワジワ効く様に調整する役割があります。
またタンニン酸は血管を収縮させる作用があるので、出血を抑える作用もあります。この二つの薬が上手く作用して内痔核を治していきます。
四段階注射法
痔核硬化療法の方法も大切です。ALTA療法は四段階注射法という方法で内痔核に注射していきます。内痔核の4か所に注射をしていく方法です。
第1段階は内痔核の上極一番奥の方に注射します。次に内痔核の深い部分に注射します。これが第2段階です。さらに針を抜きながら浅い部分に注射をしていきます。これが第3段階です。最後に歯状線付近の内痔核の下極に注射をします。これが第4段階です。
この四段階注射法をしっかり守って痔核硬化療法をすることが大切です。
ジオンの注射の量
注射の量もそれぞれの段階で決まっています。第1段階は3ml、そして第2段階は内痔核の大きさによって2~4mlを、そして第3段階は第2段階の半分量。そして最後の第4段階は4mlのジオンを注射していきます。
この四段階での注射ですが、内痔核が出え来ないようにするのに大切なのが第1段階と第4段階です。したがってこの第1段階と第4段階の注射の量は内痔核の大きさに関わらず、大きくても小さくても、内痔核が出てこないようにするのが目的ですので量が決まっています。
第1段階の量が不十分な場合は、再発する際に奥の方から内痔核が出てくるようなタイプで再発します。また第4段階が不十分な場合は、外側が出てくるようなタイプで再発してきます。いずれの段階も内痔核が出てこないようにするためにとても大切な段階です。
第2段階、第3段階は内痔核の大きさで量が決まります。私は少し多めに注射をしています。注射した後、しっかりマッサージをして、ジオンの薬液を内痔核全体に広がるようにするのですが、多い量は、このマッサージの時に出てきてくれます。ですからこのジオンを局注した後のマッサージは大切な操作だと考えています。
ALTA療法は万能の治療法ではありません。
最後にすべての内痔核をこのジオンによるALTA療法では治すことはできません。万能な治療方法ではないということです。
肛門上皮の部分の腫脹が強い外痔核成分が多い内痔核はジオンが効きにくかったり、再発しやすかったりします。またジオンは内痔核を治す治療方法なので、内痔核が原因での皮垂を治すことはできません。
一番の適応は、外痔核成分が少なく、内痔核ができる粘膜部分の腫脹が強い内痔核がよい適応です。
症状でいうとあまり出血せず、痛みが出る内痔核は前者のタイプの内痔核である可能性が高く、無効であったり、再発の可能性が高いです。
反対に痛みはなく、出血が多いタイプは後者のタイプの内痔核である可能性が高く、ジオンによるALTA療法の適応となります。
ALTA療法は痛みなく、傷を作ることなく内痔核を治す治療方法でとてもいい治療法です。しっかりと適応を診断して、四段階注射法を守って行うことでよい効果を得ることができます。