渡邉医院

ALTA療法施行後1日目に患者さんにするお話。

 今回はALTA療法を行った次の日、退院の時にお話しする内容を紹介します。

ALTA療法でどのように治っていくのか

 まずは、内痔核に対して四段階注射法で痔核硬化療法をしたことをお話します。四段階でジオンを局注していく意味をお話しています。
 痔核硬化療法は「硬化」と書くので、出てくる内痔核がそのままの大きさで硬くなって、排便時に出血したり出てこなくなると思っている方がいます。でもそうではありません。ジオンの注射の効果で、徐々に内痔核が小さくなっていき、最終的には硬さもなく元の状態に戻っていきます。ジオンの内容ですが、硫酸アルミニュウムカリウム(明礬のことです。)とタンニン酸が含まれています。ジオンを注射して炎症を起こさせて内痔核を小さくしていくのですが、この炎症を起こさせるのが硫酸アルミニウムカリウムすなはち明礬です。
 でも明礬だけを濃い濃度で沢山注射すると、注射した部位が激しく炎症を起こし、潰瘍を形成したりしていきます。この炎症をじわじわゆっくり効かせていくのがタンニン酸の役割です。この明礬とタンニン酸とが上手く合わさって具合よく治っていきます。
 またタンニン酸は血管を収縮させる役割があります。したがってタンニン酸の効果で出血が治まってくれます。こういったように明礬とタンニン酸の二つが合わさって内痔核を治していきます。ALTA療法の効果は比較的早く、たいていの場合はALTA療法を行った次の日から排便時に内痔核は出てく無くなり、出血も治まります。

ALTA療法施行後の経過と通院

 ただここで重要なことは、排便時に出血しなくなったり、内痔核が出てこなくなったからといって治ってしまったわけではありません。ただただ嫌な症状が治まっただけにすぎません。肛門鏡で観察するとまだ内痔核は存在します。
 そこで退院後の受診ですが、まずは7~10日後に受診してもらっています。退院してから7~10日間の間の具合を教えてもらいます。例えば退院した後、排便しても出血も内痔核の脱出もなくなったとか、排便時に内痔核は出てくるが随分小さくなったとか状態を教えてもらいます。そしてこの時に出血もなく内痔核が出てこなくなっていて、とても具合良くなっていたとしても、手術で治すのをALTA療法で治す。ジオンを注射した部分では痛みが無くても激しい反応が起きています。
 次は1か月後に受診してもらいます。この間に出血や痛み、それ以外にも気になる症状があり大丈夫かなあと不安を感じるときはすぐに受診していただくようにしています。例えば、明礬による炎症が強ければ痛みが出てきてもおかしくありません。またALTA療法を行ったあと、2週間までに38度台の発熱があることがあります。
 渡邉医院では役4%の患者さんに発熱があります。発熱の時期としてはALTA療法を行って12日目の直ぐの場合と7~10日後にでることがあります。渡邉医院では7~10日目に発熱する方が多いです。ALTA療法を行ってすぐに熱が出ると、「この熱は注射にせいだ。」と思ってもらえますが、7~10日後に熱が出ると「どうしたんだろう?」と思ってしまいます。なんの症状もなく突然熱が出た場合はALTA療法による熱であることを説明して、退院時に渡す解熱消炎鎮痛剤を内服してもらうようにお話しています。
 そしてこの1か月間の間、出血もなく、内痔核も出てこなくなり、症状がなければとりあえず治療は終了とします。ただ、この時点でもジオンを注射した部分は周りと異なり、硬さがあったりします。ですから治療を終了した後でも、出血や痛みなど何か気になる症状が出たときは受診していただくようにお話します。

 このようにALTA療法を行った際に痛みがなく、患者さんにとっては楽ですが、排便時に出血しなかったり、内痔核が出てこなくなったからといって治ったわけではありません。
 そのことをしっかり患者さんにお話して、出血や痛み、そして何か大丈夫かなあと心配な症状があった時はすぐに受診してもらうようにお話してから退院してもらっています。

次回は退院後7~10日後に受診された時に患者さんに説明する内容をお話します。