渡邉医院

妊娠中に痔になりやすい要因

 3月も約2週間が過ぎました。本来なら、卒業式や新年度に向けての歓送迎会など、別れや新しい旅立ちへの心ウキウキする季節です。でも今年は、新型コロナウイルスの感染の拡大で様々な行事などが中止や延期になっています。今日は春の選抜高校野球の中止が決定されました。

 とても寂しく、心痛い3月になってしまいました。こういった状況のなか、どうしても「心を壊していくウイルス」が人々を蝕み、その「ウイルス」が人々の中へと広がっていく。そんな危険な状況が今あるのだと思います。私たちは冷静になって、正しい判断をしていかなければなりません。そのためにも、皆が心ひとつになって新型コロナウイルスに対抗していかなければなりません。

 さて今回は、妊婦さんが痔に、特に内痔核や血栓性外痔核がどうしてなりやすくなってしまうかについてお話したいと思います。

妊娠中は痔静脈叢の血流が悪くなる。

 妊娠して段々お腹の中の赤ちゃんが大きくなってくると、大きくなった子宮が腸骨静脈や下大静脈を圧迫していくようになります。内痔核は肛門の歯状線直腸の直腸粘膜にある痔静脈叢の血液の流れが悪くなって静脈瘤となったものです。痔静脈叢の静脈は科大動脈を通って肝臓に行きます。この下大静脈が大きくなった子宮で圧迫されることによって血液の流れが悪くなり、鬱血して内痔核ができやすくなるのだと考えます。

妊娠中は黄体ホルモンの分泌が続き便秘になりやすい。

 また妊娠中は女性ホルモンの中の黄体ホルモンの分泌が増えている状態が続いています。黄体ホルモンが分泌し続けることで、赤ちゃんがお母さんの子宮の中で育ちやすい環境を整えてくれます。でも、黄体ホルモンは大腸の蠕動運動が悪くなり便秘になる可能性が高まっていきます。また、妊娠中にお腹の赤ちゃんが大きくなって大腸などが圧迫されるという物理的要因もあり便秘になりやすくなってしまいます。こういった便秘が原因で、どうしても排便時に怒責して頑張っている時間が長くなることで、内痔核が出来たり、悪化していく原因になってしまいます。
 こういったことから、妊娠中どうしても便の出が悪くなって便秘傾向になったら緩下剤を内服して、柔らかく頑張らなくてもスムーズに便が出るようにすることが大事です。
 妊娠中も酸化マグネシウムは内服してもお腹の赤ちゃんには影響はありません。心配せずに内服して便の調子を良くしていきましょう。

妊娠中は血栓ができやすい。

 また、妊娠中に血栓性外痔核が出来ることがあります。これは血栓性外痔核が出来る要因が内痔核ができる要因と同じであることにありますが、さらにどうしても妊娠中は血栓ができやすくなってしまいます。
 それは、妊娠中は血液凝固能の亢進といって、血液が固まりやすくなったり過度に凝固したりしてしまう状態です。また線溶能の低下といって一端固まった血液が再度溶ける能力が低下することです。また血小板活性化といって血小板がくっ付きやすくなって血栓ができやすくなります。
 このように妊娠中は血栓が出来やす状態にあります。そういった状態の中で便秘で頑張ることがあったり、また重たいものを持ったりなど、お腹に腹圧がかかった時に血栓性外痔核になったり、場合によっては内痔核に血栓が詰まる嵌頓痔核になったりする場合があります。

 こういった妊娠中に特有な内痔核や血栓性外痔核のできやすい要因があります。

 ただ、妊娠中は何も治療できないわけではありません。

妊娠中も様々な治療ができる。手術も可能。

 例えば、便秘であれば酸化マグネシウムを内服して柔らかく具合よく便が出るように調整することが出来ます。また血栓性外痔核になって痛みがとても強い場合は局所麻酔下に血栓を摘出する手術が出来ます。また内痔核の状態が悪く、例えば内痔核に血栓が詰まって嵌頓痔核になった場合でも、同じく局所麻酔下に痔核根治術も可能です。またそこまで症状が強くなくても、出血が多いときなどはパオスクレーという痔核硬化剤での痔核硬化療法で止血することも可能です。

妊娠中も迷わず肛門科を受診して下さいね!

 妊娠中に肛門の具合が悪くなった時は、何も治療できないわけではありません。悩んでいないで、迷わず肛門科を受診してみて下さいね!