渡邉医院

とても痛い嵌頓痔核!

 先日、十日えびす大祭に京都ゑびす神社に行ってきました。初めて行ったのですが、夜の10時前だったのですがたくさんの方がお参りに訪れていました。

 商売繁昌、五穀豊穣、除災招福などを願い参拝する祭典だそうです。肛門科が商売繁昌。少し微妙な感じですが、でも経営が安定して、職員や家族の生活を守り、豊かにするためには、やはり商売繁昌が必要。お尻の具合の悪い多くの患者さんをしっかり治すという思いで、お参りしました。

 本殿にお参りして、福娘さんから福笹を受け取り、となりで吉兆で鈴と俵を笹に飾ってもらいました。
 福笹は生命力の強さや、真直ぐに伸びる姿が、繁栄や商売繁昌結びつくとされて縁起物だそうです。笹に付けてもらった鈴は、魔よけと神様を呼ぶという意味が、そして俵は豊作の縁起物、商売繁昌。
 今年は渡邉医院も商売繁昌、お尻の具合の悪い患者さんを大勢しっかり治していきたいと思います。
 さて、渡邉医院は6日から仕事始めでしたが、肛門が痛くて受診された患者さんが大勢受診されました。前回の「後医は名医」でお話したように肛門周囲膿瘍で受診された患者さんや、内痔核に血栓が詰まって脱出したままになり、痛みが強くとても辛い嵌頓痔核の患者さんも受診されました。年始から、とても辛い状態の患者さんが大勢いらっしゃいました。

 今日は嵌頓痔核に関して少しお話したいと思います。

嵌頓痔核

 内痔核は内痔核だけですと肛門の外に脱出したままになっても痛みはありません。排便時に出血しても痛みなく出血します。これは内痔核が出来る場所が直腸の粘膜のところにできる静脈瘤だからです。肛門上皮と言って皮膚でできた部分は痛みを感じますが、直腸粘膜は痛みがありません。そんな痛みを感じる神経が無いところにできるのが内痔核です。ですから内痔核だけでは痛みはありません。
 でもそんな内痔核に血栓が詰まって脱出したままになると話は違ってきます。大抵の場合は、内痔核に血栓が詰まるだけでなく、外痔核部分にも血栓が詰まります。こうなると強い痛みが伴ってきます。また、内痔核が脱出したままになってしまうので、肛門の括約筋で脱出した内痔核の首が絞められたようになってしまい、血液の流れが悪くなって血流障害を起こしてしまいます。場合によっては脱出したままになった内痔核や粘膜部分が壊死に至ることもあります。こうなると本当に痛くて痛くて寝てもいられません。

嵌頓痔核の治療

 では、嵌頓痔核を診たときにどうするかです。

 まずは、脱出したままにしておくと、血流障害を起こして壊死に至ることもあるので、痛みが伴いますが、肛門の中に脱出した嵌頓痔核を戻すことをします。戻すことが出来ると、ある程度痛みが軽減します。さてその後です。やはり、これまで排便した際に内痔核が脱出して押し込む程度の内痔核。第Ⅲ度以上の内痔核がもともとあって、そこに血栓が詰まって嵌頓痔核になることが多いので、やはり内痔核に対して根治的な治療をする必要があります。ではその根治的な治療をする時期はいつかです。

待機的な治療

 一つは消炎鎮痛剤の座薬などを使いながら、ある程度症状をとり、待機的治療をする方法です。初演鎮痛剤の座薬を使うことで血栓が詰まってできた腫れはとることが出来ます。そうすると痛みは徐々に楽になってきます。また血栓も時間はかかっても溶けて体に再度吸収されていきます。そうして、嵌頓痔核になる前の内痔核の状態に戻っていきます。その時点で治療方法を決めます。例えば痔核根治術をする必要がある内痔核か?またはジオンという痔核硬化剤を使って四段階注射法での痔核硬化療法で治る内痔核なのかを判断して、最も良い方法で治療をしていきます。

一気的な治療

 ただ嵌頓痔核はとても痛い状態です。直ぐに痔核根治術をして治すこともあります。

 嵌頓痔核になった場合は本当に痛く、仕事どころではありません。消炎鎮痛剤の座薬で待機的に治療をしてもある期間痛みのために仕事が十分にできないことがあります。そんな時は思い切って直ぐに痔核根治術を行って、一気にスッキリ治してしまうのもいいと思います。
 血栓が詰まって腫れて、そして脱出したままになっていることが痛みの原因です。痔核根治術を行い、血栓が詰まった外痔核や内痔核を切除することで、常にある痛みをとることが出来ます。ただ手術をするので排便時の痛みはあります。でも嵌頓痔核の時のような常時痛い、そんな痛みはスッととれ、痛みから解放され楽になります。痔核根治術をした後は治っていくだけです。

嵌頓痔核の状態、社会的な状況で治療を選択

 嵌頓痔核になった場合は、その時の内痔核の状態や、痛みの具合。また直ぐに治せる時間が有るか無いか。仕事を休むことが出来るか。などいろんな要素を考慮して治療方法を決めていく必要があると思います。
 でも痛いときは早く治してしまうのが、私は一番いいと思います。

 さて、十日ゑびすのはなしから、痛い話になってしまいましたが、なにか肛門の具合で気になる症状がある場合は、早めに受診することがいいと思います。肛門の病気は知らないうちに、自覚症状がなくいきなり悪くはなりません。嵌頓痔核になってしまった場合も、それまでに何らかの内痔核の症状があると思います。やはり肛門の病気も早期発見早期治療だと思います。さらに肛門の病気にならないように排便の調整をして、スッキリ具合よく便が出るようにすることが大切かなと思います。

 笑う門には福来る。いつも笑って過ごせるようにしたいものです。お尻の具合の悪いときは早くスッキリ治して、「笑う門には福来る」、1年楽しく過ごしましょう。